2023年 06月 13日
カレーうどん丼は異様な料理である
「ひと山、ふた山、み山越え・・・」炭坑節のメロディを心中で口ずさみながら、はやる気持ちを抑えていた僕に冷や水をぶっかけたのは、壁にかかっていたボードに描かれたカレーうどん丼の断面図と、実物のビジュアルとの間にある決定的な違いでした。図では底の深い植木鉢のような丼だったのに、実際には見込みの傾斜が緩やかなラーメン鉢が出てきたのです。それまで僕がイメージしていたのは、福岡が世界に誇る産業遺産、志免町鉱業所の大地に雄々しく屹立する縦坑櫓と、そこから真下に穿たれた全長430mの竪穴でした。漆黒の闇に閉ざされた竪穴の、誰も見たことがない壁面とそこに刻まれた地層を画像に収めようと、右手にスプーン、左手にスマホを持って構えていましたが、こんなに底が浅くては画像映えしないことこの上ない。
国道201号線を行橋市から田川市へ向かって走ると、山間部を抜けた辺りで左手から強い圧迫感を感じ始めます。聳り立つという表現にふさわしい急峻な傾斜が、道路のすぐ側から天に向かって続いている。それが筑豊のシンボルである香春岳です。しかし、仰ぎ見る者はすぐに、自分の感じているものが圧迫感だけではない、一種の違和感であることに気付きます。そこに当然のようにあるべきものがない。まるでえぐり取られたかのように稜線が途切れているのです。
「香春岳は異様な山である。決して高い山ではないが、そのあたえる印象が異様なのだ」(五木寛之著『青春の門 筑豊編』より)
牡蠣色の地肌が残酷な感じで露出した、膿んで崩れた大地のおできのような印象を受けるカレーうどん丼の浅ましく食べ散らかされた有様は、石灰岩採取の為に頂を削り取られ、半分ほどの高さになった一ノ岳の見るも無惨な姿に酷似しており、それでいてなぜかこちらの気持に強く突き刺さってくるような奇怪な魅力がありました。
2023年 06月 11日
レベルの低い人と食べ物の出会い
5分待つ間にパッケージをしげしげと眺めた。キモはバターチキンカレー風うどんではなくて、バター風チキンカレーうどんであること。つまりバターは入っていないし、バターチキンカレーとうどんのコラボレーションでもない、チキンカレーうどんにバター風のなにかを加えた食べ物であるということだ。ひときわ小さい「風」の一文字が食べ物としてのレベルの低さを物語っている。かろうじてデザインの域を出ていないようにも思えるから、詐欺的手法は言い過ぎかもしれない。裏面の原材料名からバター風の所以を読み取ろうとしたが、さっぱりわからなかった。
2023年 06月 10日