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ツーリングソングの御紹介

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https://itunes.apple.com/jp/podcast/lubaiku/id337452546

 インターネットラジオに「旅バイク」という番組があって、マメに更新をチェックしては主に通勤しながら聴いている。オートバイツーリングに関する情報番組の態なのだけれど、番組を作っているのはRATさん(トライアンフとは関係がないらしい)という、特にスポンサーや情報提供源があるわけではない三十代半ばの男性なので、扱っているのは個人の主観や経験談が殆どだ。

 時々、ん?と思うような意見の相違があったり、偏見が見え隠れする放送内容だったりする事もあるけれど、それが逆に面白い。あくまで個人の感想であるという前提のもとで展開する率直な批評は、毒舌キャラを演じているわけではないとわかっているからこそ、聞いていて嫌味がなく胸がすく思いだ。番組の構成が、古き良き日のAM深夜ラジオを模しているのも、僕の世代にとっては楽しんで聴ける要因の一つかもしれない。フリートークあり、情報コーナーあり、お便りコーナーあり、リスナー参加型企画ありと盛りだくさんで、しかも配信料はタダだ。定期配信ではないので、何の予告もなく更新が半年以上、滞ったりするのが玉に瑕だけれど、ぜひこれからも無理のないペースで続けて欲しいと願っている。今度こそ放送終了かとハラハラすることさえなければ、滑舌の悪さや単語の読み間違いなど逆に楽しむ材料のうちだ。

 その旅バイクの長寿コーナーの一つに、ツーリングソングの紹介がある。要するにリスナーからのリクエストで曲を紹介する時間だ。ただ、実際に流すとJASRACから高い請求書が回ってくるので、いかにも本放送(なんてものはないのだ)では流したかのように編集してあるのも面白い。
 ツーリングソングというのは、ありていに言えばツーリングをしながら聴く音楽のことだ。これが車に乗りながらならドライビングミュージックになる。オートバイに乗りながら音楽を聴く習慣がなかった僕としては、あまりピンとこなかった。眠気を追い払ったり寒さを堪えるために、ヘルメットの内側で勝手な作り歌をがなったりする、アレのことかと思った。もっとも、実際に聴きながらでなくても、ツーリングに似合う曲だったり、ツーリングに出かけたくなる曲でもいいそうだ。それなら心当たりがある。

 レーサーレプリカを駆る走り屋気取りだった若かりし頃、僕のテーマソングはアイアンメイデンの"Aces High"だった。限定解除のために試験場通いをしていた間は、常に泉谷しげるの"春夏秋冬"のサビが脳内でリフレインしていた。♩今日ですべてが報われる、今日ですべてが・・・を繰り返して、最終的に報われるまでに18回も落ちた。ハイロウズの"日曜日よりの使者"もいい。HONDAのCMのバックでかかっていた曲で、そのせいかオートバイライフそのもののように刷り込まれてしまった。
 最近は、もっぱらこの曲だ。僕の愛車であるTiger900の、4気筒の滑らかさとも2気筒のパンチ力とも違う、3気筒独特の荒々しさからは、この楽器のもつ力強さ伸びやかさに通じるものを感じる。低速時の砂の混じったようなエンジンフィールが、弓と弦がゆっくりと擦れあうときのザラついた旋律に似ている。かつて、Tiger Explorerに乗っていたブロガーが、Tigerをして「滑らかで疲れないけれどメリハリがない。まるでホンダのカブを大きくしたようだ」と評したことがあった。彼はその点が気に入らずに国産のリッタースポーツへ乗り換えてしまったけれど、カブに大排気量車のトルクがないように、この楽器にもヴァイオリンでは出せない低音の深みがある。大らかで優しく、時に猛々しい。Tigerだけに「インドの虎狩り」を連想する。トライアンフの関係者に宮沢賢治の読者がいたとは思えないし逆もまた然りだけれど、耳を聾するパワーと癒しを両面に備えているところなんか、そっくりだと思うのだ。

 阿蘇の雄大な自然の中、ワインディングを楽しみながらこの曲をハミングするとき、この上ない自由を感じる。それでは聴いていただきましょう。The PianoGuysで"The Cello Song - (Bach is back with 7 more cellos) - "です。どうぞ!






 ちなみに、旅バイクのメインパーソナリティである男性のRATという名前は、キャンパーネームなのだそうだ。これはパソコン通信やインターネットでいうところのハンドルネームのようなもので、キャンプ場ではこの名前で呼び合うのだ通例なのだそう(初耳だ)。違うのは名付け親が自分ではないところで、番組ではメールをくれたリスナーが希望すれば、その場でテキトーにキャンパーネームを付けてくれる。
 僕はかつて、ケビン・コスナー主演の『ダンス・ウィズ・ウルブズ』という映画が大ヒットしていた頃に、アメリカインディアンの末裔を自称するアメリカ人男性から、「ガラスに爪をたてながら眠る牛」という、非常にありがたくないインディアンネームを頂戴したことがある。RATさんの命名はかなりいい加減なので、もしやその二の舞になるかもしれないとは思いつつ、いつかキャンパーネームを付けて貰える日がくることを願っている。
 

by tigersteamer | 2013-11-21 02:35 | ツーリング | Comments(0)