R100RS 〜 君にはまだ早すぎる

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 醜い嫉妬心であることは承知の上だ。なんて器の小さい男だと嘲笑いたければそうするといい。
 乗りたければ何にだって乗ればいい。君が選ぼうとしている、そのオートバイが初心者の手に余るなんてことはない。メンテナンスに手間がかかるという事はあるだろうけれど、クラシックのカテゴリーに含まれる程ではない。きっと従順で、滑らかで、乗り手に優しいオートバイなんだろう。ただし、自分の物にするには資格が必要だ。だから、もう少し回り道をしてからでも遅くはない。まだ早い。君が乗っていいオートバイではないのだ。

 過剰なイメージを植え付けてしまったオートバイがある。もちろん勝手な思い込みだ。誰にでも心当たりくらいあるだろう。僕の場合なら、これとCB750four、SRX-6だ。
 BMWのR100RSは、社会に出て初めて勤めた会社の同僚が乗っていたオートバイだ。同僚とは言っても二回り以上は年上だった。なかなかに馬の合う人物で(そもそも、僕と馬の合う人というのが珍しい)、彼に惹かれるあたりに自分のダメさ加減の所以があるのだと知りつつ、どこへ行くにも金魚の糞のようについて回った。
 元々は喫茶店チェーンのオーナーだった彼が、ギャンブルで身を持ち崩し、奥さんに逃げられ、しがない会社の平社員になるに至った経緯には(当時がバブル経済の真っ只中であったことを加味しても)にわかには信じ難いエピソードが沢山あるのだけれど、そんな絵に描いたようなダメ人間であるところを含めて師匠と呼んでいた。教えてもらったのは酒の飲み方と麻雀とラーメンの食べ方だ。仕事に関してはからっきし、どちらかと言えば反面教師にすることの方が多かった。彼はもっぱらソロツアラーで、一緒にオートバイでどこへ行ったという事はない。ただ、自宅マンションの駐輪スペースでカバーを被っているのを見せてもらったことがある。
 そして今また、僕の先を行く孤高のソロツアラーにして、畏敬と羨望と失望の意を込めて「仙人」と呼ぶ人物(この人については、また次の機会に書く)の愛車でもある。

 つまりは、そのオートバイは十年くらい経ってから僕が乗る予定のオートバイなのだ。勘違いして欲しくないけれど、ダメ人間御用達という意味ではない。BMWの持つ一種のステータスシンボルとも違う。酸いと甘いを噛み分けるように、数多のオートバイを乗り継いできた人が最後に辿り着く、終着点のようなものなのだ。
 前にも同じようなことを書いた。あれについては正式に謝罪しよう。すまなかった。僕はまったく偏屈でケツの穴の小さい男だ。だから君も、スタート地点から過程をすっとばしてゴールにコマを進めるような真似はやめよう。何より自分のためにならない。若い時には若い時に乗る用のオートバイがあるじゃないか。

 どうしても、どうしても欲しいと言うのなら、一つ案がある。名義上は君が所有していることにしておいて、実際に乗るのは僕というのはどうだろう。君は僕のタイガーに乗ればいい。さしあたって所有欲は満たされるだろう。タイガーは大切な相棒だし、R100RSは僕にとってもまだ早いけれど、断腸の思いで譲ろう。仕方ないじゃない他に方法がないんだから。
 

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by tigersteamer | 2013-10-01 15:39 | オートバイ | Comments(0)
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