皆が青春のファミコン通信

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作品名1989年のファミコン通信
作者名田原誠司
 僕の兄貴分であり、元ファミ通副編集長にしてカードヒーロー名誉師範の田原誠司氏が本を出す。ファミ通webの読み物が一冊の本になると言われてから、待てど暮らせど音沙汰がないまま早数年。もう出ないものだと諦めて、書籍化のことは尋ねまいと気を遣っていたら、いつの間にか兄貴との付き合いも疎遠になっていた。「1989年のファミコン通信」はエンターブレインから8月8日発売だ。発売日が決まり、立派な装丁ができてもなお一抹の不安を感じる。このまま大事なく書店に並ぶことを切に願う。

 もうだいぶ前から「ファミコン通信血風録」を書くべきだと強く勧めてきた。子供の頃、僕の心を鷲掴みにした(ゲームの情報誌でありながら、ゲーム本体よりも面白かった)ファミコン通信と個性豊かな編集者達が、ゲーム業界と出版界を股に掛けて大暴れする群像劇だ。
 下敷きとしてイメージしたのは椎名誠の「本の雑誌血風録」だった。いや、登場人物のキャラの立ち具合からすると、司馬遼太郎の「新撰組血風録」に近いかもしれない。本の雑誌の関係者については事前に何の知識もないけれど、土方歳三や近藤勇のキャラクターを知っているのと同じくらい、浜村通信やスタパ斉藤の名前にも親しんでいるからだ。そして、田原誠司という人物を知れば知るほど、(ファミコン通信の関係者ではない僕が言うのもなんだが)それを書くのにうってつけの人物だと感じるに至った。
 しかし兄貴にとってみれば、ファミコン通信は自分を育ててくれた愛着のある古巣であり、それをエンターテイメントの題材として書き立てることは、仁義にもとる行為だと感じているようだった。

 ウェブ掲載時の「ファミコン通信1988」は、そういう意味では「本の雑記血風録」などとは違い、物語性を排して当時のゲーム業界を淡々と書き綴った内容だった。しかし、その実直な(やや偏屈な)文章から、かえって当時の情景をイメージしやすく、そこから面白い雑誌を作ろうという編集者たちの熱意が伝わってきた。
 本の雑誌が創刊した1976年から、干支が一回りした1989年は、昭和天皇が崩御(お隠れになった、というらしい。冒頭より)した年頭から粛々とした空気の流れた年でもあり、熱にうかされたようなバブル景気の真っ只中でもあった。文字通り一つの時代が終わった年であると同時に、今に至るまで続く絶頂からの転落が始まった年でもある。
 80年代の末にゲーマーだった方も、そうでない方も、ぜひ手にとって欲しい一冊だ。ちなみに、僕の1989年は日本史の追試から始まった。その結果、僕は2年まで通った高校をクビになり、人生において長い影を落とす忸怩たる迷走期間が始まるのだけれど、それはまた別のお話。

 まだ読んでいない(8月4日現在)ので何とも言えないが、独断と偏見と身びいきで★5つにしておこうと思う。実は、印税が入ったら寿司を奢ってくれる約束になっているのだ。カウンターのお店か回るお寿司か、大トロの握りかカッパ巻きかは、皆さんのお心一つにかかっている。定価が880円で、その一割が印税として戻ってくるとすると、僕が満腹になるには100冊くらい売れる必要がある。いや、あくまで回るお寿司の場合ならだけれど。
 

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by tigersteamer | 2013-08-04 03:03 | | Comments(8)
Commented by ナゾベーム at 2013-08-07 13:39 x
 ほんとうにお待たせしました。フィクションとして書くなら『ファミコン通信血風録』もありかな、と思うようになりました。でも、セミドキュメンタリー的に書くのは性格的に無理なようです。最近になって車谷長吉を知り、私小説を書くことの罪深さに恐れ戦いています。まあ、読むほうは「おもしろければそれでいい」なんだけど。
 『1989年ファミコン通信』は、考えてみれば自叙伝です。芸能人でもないのに初の単行本が自叙伝ってなんだよ、と自分でつっこみを入れたくなります。
 出版社の紹介コピーが「いちアルバイトの目線で……」と、おれが絶対につかわない目線なんて言葉から始まっていることなどを含めて、「まあそういうことでいいんじゃないの」と思っています。
Commented by tigersteamer at 2013-08-13 01:01
お寿司、期待して待ってます!
Commented by 果奈 at 2014-01-24 23:08 x
いきなりのコメントすみません。

本当に突飛なことを聞いてしまうのですが…

田原誠司さんは、今、生きておられるのでしょうか。
実は私、田原誠司の娘なんです。。。。
いきなりで信じがたいとはおもいますが、、、

ですが10年ほど前、両親が離婚し、5年近く田原誠司と会っていないのです。


少し怖いですが、もう一度彼に会いたいです。。。


もしよければ、現在彼がどうしているのか、教えていただけませんでしょうか。

お願いします。


Commented by TigerSteamer at 2014-01-25 00:15
ハテナちゃんへ
お父さんから聞いていたハテナちゃんは、わりとエキセントリックなところのある女の子だったので(やたらと石をプレゼントしてくれるとか、逆バンジーが好きだったとか)、しっかりした文章を書くことに驚きました。いや、かなり失礼な実感です。ごめんなさい。

さて、お父さんからの伝言です。
さきほど電話しましたが、連絡をしなかったことを詫びておられました。ただ、ハテナちゃんのことを、片時も忘れたことはないそうです。会いたい気持ちは山々だけど、来週からまた検査のために入院しなくてはならないので、しばらくはそれも叶わないそうです。ただ、体調は決して悪くないようです。近い将来、体がすっかり治ったら、必ず会いに行きます・・・との事でした。
とりあえず、退院したらブログにメッセージを書くそうです。チェックしてみて下さい。
http://bekunai.hateblo.jp

コメントを読み返してみました。文才がありますね。間違いなく、お父さんの血だ。
Commented by at 2014-01-25 00:55 x
ぐりさん、連絡ありがとう。
果奈、探させてしまって、そしていろいろと、ごめん。
http://bekunai.hateblo.jp/entry/2014/01/25/004307
↑入退院を待たず、ここにすこし書きました。
ぜひ読んでください。
Commented by 果奈 at 2014-01-27 22:18 x
お返事本当にありがとうございます。
突然のコメントな上、急いで書いたので、きっと無視されてしまうと思っていたので、今、すごく驚いています。
サイト管理人様の優しさに本当に感謝いたします。ありがとうございます。

父の申す私の性格、幼少期の自分そのままで、ちゃんと覚えてくれていたのだと感じます。(いや、今の私も相当変な性格をしているのですが……笑)
そして父からの伝言、承りました。嬉しさのあまり、涙が止まりません。
そんな風に思っていてもらえたとは思っていませんた。幸せです。
今から父のブログを拝見しにまいります。

サイト管理人様、本当にありがとうございます。
P,S文才なんてありませんよ…。ですが、おほめに預かり光栄です。
Commented by TigerSteamer at 2014-01-28 21:24
いやいや、これは中学生の書く文章じゃないぞ。大したもんだ。物書きを目指すべきってアドバイスしたくなるレベルだね。

なんにせよ、連絡がついて良かった。寮生活は大変だと思うけど、めげずに頑張って。そのうちきっと、お父さんが寿司をご馳走してくれるからね。
Commented by ナゾベーム at 2014-01-29 06:16 x
今後の娘とのやりとりは、パスワードを知らないと読めないブログをおれが開設し、そこでエントリーとコメントの形で話をすることに決めました。
これはもう、ゆうひ鮨でお祝いの会を開かせてもらわないとね。
娘は小さい「ゎ」とか「ぁ」をつかわないように育ってくれていて、胸をなでおろしております。
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