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哀愁の下関ツーリング(予定)

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 新人の女の子が噂の歴女(歴史好き女子)であると知って、ことあるごとに歴史に関する話題をふるが会話が盛り上がらない。既に入社後ひと月が経過したが、いまいち距離が縮まらず、もどかしい思いをしていた。
 それどころか、我ながら押し付けがましい歴史トークが仇となって、避けられている節さえある。そんなある日、別の同僚から彼女の専門分野が幕末だと伝え聞いて、試しに龍馬伝ネタを投げてみたところ、コルク入りバットじゃねえのと疑いたくなるような快音が響いた。

 まそのまま、ひとしきりバッティングを続けたが、女性にしてはなかなかに良いスイングをしている。速球や変化球にも柔軟に対応できる上に、新撰組とか坂本龍馬あたりよりも高杉晋作が好きときた。好感度うなぎ上り。もう急接近である。 つい先日までの他人行儀はどこへやら、すっかり仲良くなった。
 そこで、ソフトな下ネタもオッケーな懐の深さを見せる彼女に、下手なモノマネを披露しながら「今夜はホテルに部屋でもとって、君と朝寝がしてみたい」と節回しを付けてがなったら、何故か顔を背けながら物凄い勢いで離れて行った。それ以来、必要最小限の言葉しかかわしていない。

 言わずもがな、高杉晋作の有名な都々逸「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」のパロディである。しかし、冷静になって考えてみれば、あっているのは「朝寝がしてみたい」の部分だけだし内容が露骨すぎる。短大を出たばかりの娘さんには難易度が高すぎたかもしれない。仮にも職場なわけだら、セクハラやパワハラととられたら大変である。すぐに詫びはしたものの、あれは渾身のギャグであって、下心があるわけではないことを理解してもらえたかどうか。

 しかも後に聞くところによれば、彼女は高杉晋作のというよりは、龍馬伝で高杉を演じた伊勢谷友介のファンだったらしい。歴女どころか幕末好きですらない。それに、伊勢谷が如何ほどのものか知らないが、高杉晋作と言えば吉田拓郎に相場が決まっている。

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 義憤に駆られるとは、こんな気持ちを言うのに違いない。当分の間は距離をおくつもりだったけれど、そういうことなら膝詰めで懇々と真実を説いてやりたい。歴史の教科書で晋作の写真を見たことがないのかと。メディアすべてにおいて言えることだが、二枚目を起用し過ぎなのだ。過剰な色男のイメージを重ねるのは、その人の人格を推し量る上で間違っている。

「二枚目でなき人の面を二枚目に、醜きものは心なりけり」

 虚しい。俺は今、無性に山陰を旅したい。
 

by tigersteamer | 2011-06-30 14:44 | ツーリング | Comments(0)