看板娘

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使った金額1,000円未満
評価(星4つ)
 日記を遡ると、初めてママドックを訪れたのは2008年の9月7日とある。ひと昔のような気がするけれど、あれからまだ5年も経っていない。ずいぶん長い時間が過ぎた気がするのは、5年では収まり切らないくらい色んなことがあったからだ。その間には、疎遠になった友人もいるし、新たな出会いもあった。どんなに会いたくても、もう二度と叶わない人もいる。

 当時の僕は、地元のミニコミ紙に寄稿するのが目的で、旨いホットドッグを探して県内を走り回っていた。口コミやインターネットの情報をたよりに行き着いたのは、志賀島にあるピンク色のホットドッグワゴンだった。まだ、その場所で営業しはじめてから日が浅かったはずだ。ワゴンの正面にはMama Dogと書いてあるのに、カタカナ表記はママドッグではなく、ドック。どうでもいいようなことが気になったのだけは、しっかりと憶えている。
 この日、何を食べて、店のママさんと何の話をしたのか、思った通りの味だったのか、それとも期待外れだったのか、一切の記憶がない。ゆっくり味わうどころではなかった。なんの因果か一緒に店を訪れることになった883乗りの女性に、すっかり心を奪われていたからだ。人見知りが激しくて、滅多に一目惚れはしない質だから、自分でも驚いた。これは運命かもしれないと思いつつ、何のアクションも起こせないまま、3年ほど淡い想いを抱いて恋は終わった。彼女も今では立派な人妻だ。

 去り際に、オートバイ仲間に宣伝しておきますと伝えた。志賀島にありながら、一番の得意になるべき海水浴客を上手く取り込めていないように感じたからだ。もっとも、本気で売り上げに貢献しようとしたわけではない。その逆で、できれば隠れ家的な店として、胸の内に大事にとっておきたかった。しかし同時に、そうはならない予感もあった。事実、店の評判はオートバイ仲間の間で瞬く間に広まった。もともと福岡県有数のツーリングスポットだから、注目されるのは時間の問題だったとも言える。志賀島を根城にする常連ライダーの憩いの場として、あるいはツーリングライダーの旅の目的地として、ママドックの存在は着実に定着していった。
 ママドックの成長を助けたのは、そこに出入りする有志たちだ。僕もその一人だと言いたいところだけれど、気が向いたときに行く程度で、訪れるたびに大きくなっていくのを、ただ口をぽかんと開けて眺めていただけだ。

 そう、初めてママドックを訪れた時に、はっきり記憶に残ったことが、もう一つある。店の周りをチョコチョコ走り回っていた女の子。ママさんの一人娘で、ことなちゃんという。たしか小学校に入学する前だから、4つか5つ。幼稚園には行っていなかったはずだ。お母さんのお手伝いと、お店やさんごっこが半分ずつ。ウェイトレスの仕事にまだ慣れておらず、お釣りの計算が上手くできないようだった。ただ、看板娘としては一丁前で、照れ隠しの笑顔をふりまきながら、客と店の間を何度も行ったり来たりしていた。

 もし、ママドックと、ママドックを取り巻く環境と、そこに関わった沢山の人達が一つの物語になるとしたら、それは男勝りなママさんの苦労話ではなく、ママドックに足を踏み入れた客達のオムニバス形式でもなく、この看板娘の成長譚にしてほしい。大人たちは皆、歳をとりすぎている。オープンしてたったの5年。お話はまだ、始まったばかりだ。

4/23 追記 そうそう、初めての時の思い出をもう一つ。四枚目の画像に写っているパイプ椅子を、尻の重みで押し潰したんだった。あれから5年、椅子一脚分くらいの売り上げには貢献できたかしら。
 
店舗情報
ママドック
福岡県福岡市東区志賀島(大字)2013

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by tigersteamer | 2013-04-21 02:56 | ツーリング飯 | Comments(0)

虎蒸気あらため河蒸気。オートバイとは無縁の生活を3年送りました。そろそろ復帰します。


by 河蒸気