三瀬峠の向こうに・・・

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 もう走り飽きた感があるけれど、相変わらず三瀬にはよく通っている。セローで遊びに行くのに、ちょうど良い距離だからだ。僕の家からだと、他には志賀島だとか、温泉を探しに行った高良山あたりがいい。英彦山もギリギリ許容範囲だけれど、あの近辺にある美味しい食物屋を知らないので、なかなか足が向かない。ないということはなかろうから、開拓してみる価値はあると思う。

 なんの許容範囲かといえば、オフロード車にはつきものの、尻の痛みを感じずに済む範囲内にあるということだ。長時間オートバイに跨っていると、細いシートが臀部に食い込んで痛み始める。尻の幅や肉の厚さには個人差があるから一概には言えないけれど、僕の場合だと、途中で十分な休憩をとった上で、走行中の立ったり座ったりを挟みながらでも、100km程度で限界がくる。そこから先は痛みとの戦いだ。セローでロングツーリングに出かけて、日に1000キロを走破するようなツワモノもいるわけだから、あまり軟弱なことを言うと鼻で笑われそうだけれど、他人様よりケツがデカいのだから仕方がない。逆に言えば、100kmから向こうはタイガーのテリトリーであって、こないだの阿蘇ツーリングなんかは、完全にミスチョイスだ。行きの行程から拷問のようだった。
 とはいえ、僕が三瀬峠に通うのには、他にも理由がある。

 国道263号線を福岡市内から佐賀県へ向けて走ると、みるみるうちに視界の中の緑が占める割合が増えていく。5割を超えたあたりがピークで、そこが福岡と佐賀との県境、残りは空の青だ。
 徐々に信号と信号の間隔が広くなり、道路が蛇行しはじめる。ギアチェンジの回数が減り、あるいは増え、単車乗りの心がはずみはじめる。自然とアクセルも開きがちになる。
 沿道に蕎麦屋の看板が目立ちはじめる。ここいら辺から先を「蕎麦街道」と呼ぶ。もともと蕎麦を栽培していた土地ではないけれど、いつの頃からか綺麗な水を求めて蕎麦屋が集まってきた。水が綺麗だから食い物が美味い。のっぺい汁の店がオススメなのだけれど、今回は先を急ぐので素通りだ。

 やたらと「石釜」を冠した食物屋の看板が目につき始める。一般に言うイシガマは石でできたオーブンのことだ。すぐに浮かぶのはピザかパンだけれど、何故かここにはない。その代わりに、焼肉の石釜亭や、創作料理の店がある。環境が環境だけに、調理の道具も自然派志向なのだろう。
 そう納得しかけたところで、デカデカと石釜豆腐の看板が目に飛び込んでくる。

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 近くには石釜蕎麦まである。そうか、なるほど、イシガマのカマはオーブンのことではなくて鍋釜のカマ、焼くのではなくてお湯を沸かす道具なのだと考えれば納得がいく。竈に据えた石臼的な物をイメージしながら、たしかに火の通りが良さそうだと一人で合点する。
 しかし、残念ながら両方とも間違いだ。この場合の石釜は地名であって、調理の道具ではない。実際に石釜を使っている店もあるのかも知れないが、そうでなくても名前に偽りはない。たとえ石釜で煮ていなくても石釜豆腐の「よせ豆腐」は絶品だが、先を急ぐので今日は素通りだ。

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 目の前に巨大なループ橋が姿を現す。佐賀県と福岡県を結ぶ交通の要所で、細くて曲がりくねった三瀬峠の交通の便を解消するため、数年前に完成した。壮大なスケールで見る者を圧倒するが、延々と左バンクを強いられる上に景色が良いわけでもないので、走っても楽しいものではない。新道に比べると路面は悪いけれど、手前から左にそれて旧三瀬峠を越えた方がいい。しかし、今日は先を急ぐので、料金所で金を払ってここを通る。5分ほどしか短縮できないのだけれど、あえて通る。先を急ぐから、のんびりしていると間に合わないからだ。

 三瀬トンネルを抜けると、ワインディングはぐっと控え目になる。美味しいところを逃したことになるけれど、帰りにゆっくり味わえばいいのだから、別に惜しくはない。
 ラストスパートだ。緩やかなカーブを抜け、森と田園に挟まれた緑の真ん中を、そこだけ染め残したような直線の半ばに目的地はある。石窯パン工房「北山の森 ベルボアーズ」。石窯は正真正銘の石窯で、この店のパンは石でできたオーブンで焼いている。豆腐屋や蕎麦屋のように地名からきているわけではない。

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 初めて店に足を踏み入れたのは、去年の秋だった。店の前に「アップルシュトルーデル」なるものの宣伝がしてあって、興味をそそられたのだ。ただ、その時は口にすることが叶わなかった。既に売り切れていたのだ。
 パン屋で売っているのだからパンなのだろうと思って、どんなものなのか店員に尋ねてみたところ、パンではないという。パンでないならケーキか。いえ、ケーキでもありません。じゃあ、お菓子のたぐいか。いや、菓子といえば菓子ですが、お菓子でもないような・・・。
 なんとも曖昧で頼りない返事に絆された。以来、店の前を通る度に寄っていたのだけれど、いつ行っても品切れときた。
 なんでも大変な人気で、昼前には売り切れてしまうのだそうだ。

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 そして、これがそのアップルシュトルーデル。さんざん急いで昼前についたおかげで、2つだけ残っていた。味はどうぞ、機会があれば皆さんでお試しあれ。リンゴの他にもチーズにナッツ、干し果物が詰まった焼き菓子で、オーストリアの家庭の味だそうだ。(例によって、美味しそうに見えないのはカメラマンの腕のせいです)
 

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by tigersteamer | 2013-04-02 17:10 | ツーリング | Comments(0)

虎蒸気あらため河蒸気。オートバイとは無縁の生活を3年送りました。そろそろ復帰します。


by 河蒸気