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Ninja H2R 〜 カワサキの遣り口

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 2014年9月、カワサキ Ninja H2Rのニュースは世界中のオートバイファンを驚愕せしめた。スーパチャージャー搭載、鋼管トレリスフレームに抱えられた998ccの直列4気筒エンジンは、オートバイ史初の300馬力を捻り出す。

 カワサキが時として、そういうことをやりたがるメーカーであることは知っている。ただ、走り屋気取りだった若かりし頃ならいざしらず、太鼓腹を抱えた中年となった現在の僕にとって、最高出力300馬力や最高時速320kmといった要素は韓流アイドルや最新のコスメ情報と同列だ。乾いた感想しかもたらさない。視力、筋力、反射神経の衰えが著しく、さらに腰痛持ちでもあり、長時間にわたる前傾姿勢に耐えられないからだ。
 とはいえ、逆の意味で関心がないわけではない。ツッコミたくてしかたがないのは、あの人型決戦兵器を彷彿とさせる凶悪な面構えと、鬼のツノのように突き出た2枚のウイングだ。実にハッタリが効いている。オートバイにウイングをつけてダウンフォースを得ようという試みは、効果は別として昔からあった。しかし、H2Rのそれはどう見てもデザインの一部であって、まともに機能するとは思えないのだ。

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 僕がそこまで懐疑的になるのは、20年以上前に2週間だけ所有していたレーサーレプリカ、ZXR250についていたアレを否応なく思い出させるからだ。具体的な数値は提示せず、「強力なダウンフォースを生み出す」と文言だけで効果があるかのように思わせる手管もそっくりだ。
 数年前には、フラッグシップモデルであるレーサーZX-10Rとエヴァンゲリオンのコラボレーションが話題になっている。今にしてみれば、H2Rの特異な形状を違和感なく溶け込ませる為の布石と考えられなくもない。ひょっとして、オートバイ離れの進んだ若者にウケそうなデザインを、ロボットアニメ的なギミックとして盛り込んだだけなのではないか。そういえば、かつて僕のハートを鷲掴みにしたアレは、アンチカワサキ派によって名付けられた「掃除機のホース」などという蔑みの他に、ガンダムに登場する敵役のモビルスーツ、ザクの口元についているダクトに喩えられることがあった。決して皮肉ではなく、男カワサキはこういった男の子心を刺激する遣り口が得意なのだ。

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by TigerSteamer | 2015-03-29 17:46 | オートバイ

Ninja H2R 〜 ウイングの秘密

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「羽をつけたら絶対目立つと思うんすよ。先輩、どっかから社外パーツが出てないっすかね」
 そう言い出したのはT君だ。チームのマスコット的なキャラクターで、ど派手なドレスアップを施したTZR250に乗っていた。僕より2つ歳下の大学1年生、県外にある大きな寺の跡取りだった。坊主の息子はお経さえ唱えられればいいという大らかな教育方針のもと、天真爛漫に育った彼の口からは、ときどき周りが対処に困るような発言が飛び出した。
「そもそも、なんでバイクには羽が付いてないんですかね」

 なにせ20年以上昔の話だ。その時なんと返答したのか、残念ながら憶えてはいない。「空を飛ばないからだろ」とかなんとか、今の僕なら答えるだろう。
「ほら、F-1マシンには付いてるじゃないですか、ダウンフォースを稼ぐために。なんでバイクにはアレがないんですかね」
 羽というのはスポイラーのことか。ようやく合点がいった。そう言われればそうだ。待てよ、ウイング付きのオートバイってなかったっけ。あったような気がする。確実なのは仮面ライダーV3のハリケーンだけれど、あれは空想の産物だし空を飛ぶための羽だったような・・・。

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 当時の愛車、VFR400Rのアッパーカウルとサイドカウルの繋ぎ目あたりから、短いウイングが真横に突き出している姿をイメージしてみた。なんと言うか、実にかっこわるい。それにコケたら確実に折れるだろう。周りのパーツまで巻き込んで派手に逝きそうだ。考えるだけで恐ろしい。修理代が幾らかかるか知れない。

 当時の僕は大学生だった。年がら年中金がなかったのは、真面目に勉学に勤しんでいる苦学生だったからではない。昼間はオートバイ、夕方からは部活動、そして夜は麻雀に精を出す不良学生だった。仕送りとアルバイト代のほとんどは、ガソリン代と修理代、麻雀の負け分の清算に消えていった。
 同じ大学のオートバイ好きを集めて、レーシングチームを結成していた。革ツナギの上に揃いのトレーナーを着て、講義はそっちのけで峠に通い、鈴鹿の4時間耐久レースに憧れ、バリマシの俺ハで赤ゼッケンを取ることが目標で、ノリックとバリバリ伝説にかぶれていた。

「アホやな、おまえ」
 それまで黙って耳を傾けていたS君が、ほとほと度しがたいといった顔つきで言った。
「なんでバイクにはウイングがついてないか、そらつけても無駄やからや。ちょっと考えたらわかることやんけ。どこのメーカーもやってないってことは、やっても意味がないってことや」
 頷けるような頷けないような。しかし確かに道理ではある。
「直線だけやったらええけど、問題はコーナーや。バイクを寝かせているときは、イン側とアウト側では全然違う風が流れてんねんで。要するに下から上へ押し戻す力と、上から下へねじ伏せる力のバランスがとれとんねん。そんなとこにウイングなんかつけてみ、気流が乱れてコーナリングが不安定になるだけやで」
 突き放すように言い切ると、どうだ参ったかと言わんばかりに小鼻をうごめかせた。

 身振り手振りを交えながら講釈を垂れる彼は、理系の大学で流体力学を学ぶ学生などではない。僕らと同じど田舎のFランク大学生だ。誰も反論できなかったのは、もっともらしい理屈に納得したからではなく、説を覆すほどの知識を持ち合わせていないせいだ。加えて、僕らのチームでは唯一の限定解除ライダーであり、彼の駆るSRX-6が近隣の峠では最速と目されていたからでもある。既に一滑一留(いちスベいちダブ)のチーム最年長で、僕に輪をかけて金がなく、看護婦フェチのAVマニアで素人童貞で、口ばかり達者な捻くれ者だったけれど、コーナーを攻めている時のキチガイじみた速さだけは誰もが認めていた。他県ナンバーのRX-7を崖の下に追い落とした逸話が、十割増しでまことしやかに囁かれていた。外の世界ではまったく通用しないけれど、少なくとも僕らの間では、オートバイを速く走らせることができる者が一番偉かったのだ。

 その場には他にNSR250RのN君と、RGV250Γのガンちゃんもいたはずだけれど、彼らがなんと言ったかは記憶にない。その後もひとしきり議論は続いて、しりつぼみ気味に途切れた。算数が苦手という理由で私立文系を選んだバカ学生達には、どんなに頭を捻ったところで納得のいく答など見つからなかった。「どこのメーカーもやっていないということは、やっても意味がないということだ」という穿った理屈だけが、なにやら金言のごとく刷り込まれた。
 ちなみにその数日後、TZR250のシングルシートカウルには、できそこないの鳥居のような形をしたリアウイングが取り付けられていた。得意満面のT君を前に、誰もが「そっちかよ」とつっこんだ。アルミで作った羽は確かに目立ったけれど、走っている最中に根元からもげて、どこかに飛んでいったっきり2度と見つからなかった。
 

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by TigerSteamer | 2015-03-15 00:00 | オートバイ

TIGER800 〜 息子さんは反抗期

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 駐車場に仲よく並んだ新旧タイガー。年の差は20歳ほどか、兄弟というよりは親子のようだ。形も大きさも違う2台の前で、じっと耳を澄ませると・・・

「800、なんだその態度は」
「・・・・・・」
「人と話をするときは相手の目を見ろ」
「・・・・・・」
「おい、聞いてるのか」
「・・・うるせーよ、ジジイ」
「おまえ、親に向かって何て事を・・・」
「産んでくれなんて言ってねえだろ。勝手に作っといて、保護者ヅラすんじゃねえよ」

 そんな微笑ましい会話が聞こえてきそう。
 

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by TigerSteamer | 2015-02-09 23:19 | オートバイ

ZXR250 〜 男カワサキ

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 「男カワサキ」という言葉がある。国内のオートバイメーカー4社の中でも、骨太で我が道を行くイメージが強いカワサキのキャッチフレーズだ。かつて最速を誇ったGPZ900RやZZR1100を思い浮かべる人もいるだろうし、ゼファーやZRXなどに代表される無骨なネイキッドモデル、あるいはそこから遡ってZ1やZ750RS、マッハシリーズに想いを馳せる人もいるだろう。オートバイだけに捉われず、ライフスタイル全般にイメージを重ねることもあるかもしれない。
 「男カワサキ」は好意的に用いられるとは限らない。この言葉が大嫌いだと言う人もいる。カワサキが嫌いなのではなくて、男性的な権威主義のイメージが嫌なのだそうだ。「男」に固定のイメージがあるということは、暗に背中合わせで「女とはかくあるべし」という前時代的な思想を突き付けることでもある。また、ナルシズムの臭いを嗅ぎ取って、逆に男らしくない、女々しさの象徴だと唾棄する人もいる。

 このように、「男カワサキ」から受けるイメージは人それぞれだ。僕の場合は、真っ先にZXR250を思い浮かべる。かつて2週間だけ所有していたレーサーレプリカだ。クラブマンでオートバイに乗り始め、金がなくて手放したVT250スパーダを経て、このZXRで本格的な峠デビューを飾った。僕の無謀な運転が元で、あっという間に鉄屑になったけれども。
 クロスミッションに倒立フォーク、クラス中でも抜きん出て高い回転数、ラムエアが実装されたのもこのオートバイが最初だ。盛り込まれた最新技術の中でも、一際目立ったのがK-CAS(Kawasaki Cool Air System)と呼ばれるカワサキ独自の冷却システムだった。カウル前方から走行風を取り込み、燃料タンクを貫通したダクトを経て、エンジンのシリンダーヘッドを直接冷却する。そうすることによって、エンジンの熱ダレを防いで出力を安定させる。そういう設定だった。シンプルでわかりやすい原理を誰もが信じていたし、僕も疑っていなかった。

 スズキのファンがスズ菌感染者と呼ばれるように、カワサキには信者と呼ばれる熱烈な支持者がいる。その盲信ぶりときたら、構造的欠陥すら美点として肯定してしまう程だ。そんな彼ら、オイル漏れすら入っている証拠だと言い切るカワサキ信者達にとっても、K-CASは微妙な存在であるらしい。今そのことに触れると、ある者は虚空に視線を迷わせながら、あれは思ったほどの効果はなかったらしいね・・・などと消え入りそうな声で呟いたり、またある者は堂々とふんぞりかえって、常用域では無用の長物なだけで、機能し始めるのは200キロを超えたあたりから、などと居直ったりする。まるで、効果が感じられないのはお前がヘタレだからだと言わんばかりだけれど、250ccのオートバイにそんなスピードが出せるはずもない。

 さしたる根拠もないけれど、あえてここに断言しよう。K-CASにそんな効果はない。実感できたと言い張るそれはプラシーボ効果であり、篤い信仰の賜物だ。レーサーレプリカの開発では後発組にあたるカワサキが、他社に負けないセールスポイントをと、なにか凄そうに見えるギミックを取って付けただけの代物だ。
 僕にとって「男カワサキ」の男とは、K-CASに見るハッタリと子供だましだ。ペラペラの虚栄心でもあり、勢いだけの取るに足らない矜持でもある。その先には、博徒たちが凌ぎを削る鉄火場の光景があるかもしれない。そういう意味では、非常に男らしいと言えなくはないけれど、そこに高倉健や鶴田浩二の姿はない。
 誤解して欲しくないのは、カワサキのオートバイが嫌いではないということだ。むしろ人間味があって好ましい。4大メーカーの中で最も愛すべき存在だと思う。「男カワサキ」のネガティブなイメージもすべて引っくるめて、男なんてカワイイものなのだ。

 ちなみに僕の周りでは、◯-CAS(◯には各人の頭文字が入る)と称してズボンのチャックを全開にする遊びが流行った。実に男カワサキ的な、どうでもいいエピソードだ。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-19 16:00 | オートバイ

CBR1000RR 〜 オヤジにつける薬

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 おやじライダースクラブの最長老は、六十半ばの岩石のようなオヤジだ。数年前にVmax1200で自損事故を起こし、肩甲骨を真っ二つに割る大怪我を負った。オートバイの方は無傷に近いコンディションだったけれど、身体の完治を前に手放してしまった。ここしばらくはオートバイを所有していない。降りると明言したわけではないけれど、周りの誰もがもう乗らないのだと思っていた。
 重度の糖尿病を患っているから、おそらく視力の低下も理由の一つなのだろう。徹底した食事療法で、なんとか病気は押さえ込んだものの、体力の衰えは如何ともしがたいのだと思う。

 ひさしぶりに会った岩石オヤジは、寄る年波に洗われて一回り小さくなっていた。しかし、ズッシリとした質量は健在で、岩肌には艶が戻り、硬度はむしろ上がっているような気がした。彼は上機嫌で、ニコニコ笑いながら話しかけてきた。

「虎くん、ワシなあ」

「はあ」

「春頃にはまとまった金ができるけん、また買おうと思っとーとよ」

「買うて、何をですか」

「シービーよシービー、アールのついとる千シーシーくらいあるとば」

「・・・体は大丈夫なんですか。それに前傾キツイですよ、あれ」

「そげんスピードは出さんちゃよかばってん、うちの若いモンに言わせてみたかったい。『また年甲斐もなくそげなもん買うてからー』って」

 岩石オヤジは豪放磊落に笑って去っていった。てっきり腰痛の種にしかならないと思っていたけれど、前傾姿勢にはそういう薬効もあるらしい。
 

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by TigerSteamer | 2014-12-11 05:57 | オートバイ

NM4 〜 あの頃の未来

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 半月ほど前、バイク7の駐車場にて。
 ヤマハのマジェスティが発表されたのは、僕が大学3年か4年の時だったと思う。ニューモデルのカタログが載ったオートバイ雑誌を握りしめて、「金田のバイクみたいなのがでた!」とオートバイ仲間宅に駆け込み、「でっかい原チャやん」と笑われたことがあった。ビッグスクーターとしては既にホンダのフュージョンが出回っていたけれど、当時は純然たるオヤジの乗り物(オートバイとすら思われていなかった)と認識されていて、若者は見向きもしなかった。アニメの世界から飛び出したようなオートバイ(必ずしも共感が得られるとは限らないけれど)、マジェスティは僕にとって、それほど斬新なカタチだった。
 グラビアページを舐めるように眺めながら、頭の中で縦にしたり横にしたり、思うがままに走らせた。耳にこだましていたのはシングルの鼓動ではなく、火花を散らしながら回転する甲高いモーター音だった。近い将来、このスタイルがオートバイのスタンダードになるのではないかと、胸を熱くした憶えがある。

 結果として、必ずしもそうはならなかったわけだけれど、あの頃の未来はまさしく僕の目の前にある。スクリーン両脇に配置されているのは小物入れであって、ミサイルランチャーや高出力レーザーではないこと、動力を未だ化石燃料に頼っていることは予想外だけれども。
 

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by TigerSteamer | 2014-11-26 12:23 | オートバイ

Ducati Scrambler 〜 買わない男

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 Facebookのタイムラインに流れてきたトピックを読んでからというもの、コレのことで頭がいっぱいだ。さらに言うなら、バイク歴二十数年にして、ドゥカティに食指が動くのも初めてだ。寝ても覚めてもスクランブラーの事ばかり考えている。ここまで重症なのは、トライアンフのスピードトリプル900に憧れて限定解除をした22歳の夏以来ではなかろうか。ふと気がつくと、リヤを滑らせながらダートを駆け抜ける自分を想像したり、月々の支払いを考慮に入れつつ、現実的にやりくりする算段を始めていたりする。このままいくと、大きな過ちを犯してしまいそうで恐ろしい。

 こういう時は、ひとまず距離をおいて、第三者視点でクールダウンを図るに限る。自分の求めるものを冷静に分析し、対象と比較してギャップを見出す。理想と現実を見極め、公約数から方程式の答を洗い出す。そうして無駄をそぎ落とした結果・・・








 ここまでスリム化に成功した。僕の求めるものはコレで間違いない。早まらなくて本当によかった。
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by TigerSteamer | 2014-10-05 06:10 | オートバイ

R100RT 〜 絵になる二人

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 アウローラの前庭に、僕のタイガー以外のオートバイが停まっているのを見たのは初めてだった。ドイツ製の古いオートバイとサイドカーは、おしゃれな佇まいのお店とあいまって、ちょっと悔しくなるくらい絵になっていた。

 BMW R100RTのスクリーンは、元になったR100RSのものよりも高さがあり、角度も切り立っている。市販車では初であり、ただでさえ疲れ知らずと評価の高いRSのフェアリングを、さらにツーリングユーザー向けに高めてある。この、後に大型クルーザーと呼ばれるスタイルは、代償として犠牲にしている要素が大きすぎるような気がして、少なくとも今までの僕はあまり好まなかった。オートバイとは基本的に風に抗い、または切り裂いて走るものだというステロタイプがあって、完全にシャットアウトするということ自体が無粋だと考えていたせいもある。ところが、背景を普段目にしている市街地から雄大な緑に溢れた郊外に挿し替えてみると、まるで違和感がなく溶け込んでいて、無粋どころか優美にさえ思えるから不思議だ。それがドイツの風土に培われた独特の意匠なのかもしれない。

 ライダーは熟年の御夫婦だった。ご主人がR100RTで奥様は側車なのかと思いきや、大柄な車体の陰にすっぽり隠れるようにして、ピカピカのW650が寄り添っているのを見つけた。この小柄で細身のモダンクラシックは、重厚なR100RTとは対照的に、いかにもトコトコと小気味よく走りそうだ。2台が連れ立てば、おそらく前を行くのは御主人に違いない。しかし、後をついて走りながら、常にペースを抑えているのは奥さんのような気がする。ひょっとしたら、舵取りを担っているのもそうだったりして。

 秋口の穏やかな午後を描いた風景画のなかで、哀れタイガーはもはや、テレピン油の染みのようにしか見えなかった。並べて駐車しようかとも思ったけれど、2台の仲の良さに水をさすのも気が引けて、少し離れたところに停めた。
 
場所
アウローラ
日田市夜明中町2297-3

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by TigerSteamer | 2014-09-29 23:51 | オートバイ

R nineT 〜 穴あきパンツの履き心地

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 ショートツーリングの帰りにモトラッドへ寄り、新発売のR nineTに試乗させてもらった。ずいぶん前から注目していた一台だ。痺れるくらいカッコいい。

 とはいえ、レビューめいたことは苦手だ。前にも痛感したことがあるけれど、他に比較対象を持たないのだから、気の利いたコメントひとつ出てこない。いざ乗ってみると感慨を抱くポイントは決まっている。まずは安定感。僕のタイガーよりも足付きの悪いオートバイなんてそうはないから、なおのことギャップが際立つ。同じオートバイとは思えない。ついでクラッチの軽さが嬉しくて、意味もなくスコスコしてみる。走り出すと出足の鋭さに仰け反り、グイグイ押し出すトルクに恐怖を覚え、回転の滑らかさに目を見張り、ブレーキの効きの良さに驚愕し、信号待ちのたびエンジンの鼓動と振動に感じ入る。ちゃんと右に振られることに気付いてニヤリとする。

 そうして、ひとしきり感動して再びタイガーに跨り、まるで正反対で褒めるところのない性能に溜息をつく。特に切り返しの重さとブレーキの効きの悪さときたら、どこかが壊れているとしか思えない。ただし、ストレスはない。腰もつっぱらないし、お腹が窮屈でもない。まんべんなくヤレた車体に、しみじみと居心地の良さを覚えながら、二十年落ちの愛車の良さを再確認する。これを乗り潰したら次はR nineTだな、とは思う。

 ビンテージジーンズを愛でるのとは違う。陰干ししながら大切に履き続けるのでもない。例えるなら擦り切れるほど履き古した心地よさだ。
 

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by TigerSteamer | 2014-09-12 17:58 | オートバイ

GB250クラブマン 〜 初めてのオートバイ

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 iPhoneを使い始めてから4年になる。オートバイと同じく、携帯電話も一機種を長く使い続けないたちで、とっかえひっかえを繰り返してきた。しかし、最近は新しい物好きもなりをひそめ、だいぶ落ち着いてきたように思う。変化についていき辛くなったのもある。3GSから4Sに乗り換えてちょうど2年になるけれど、特に不具合も生じていないし、機能に不満もない。当分の間は使うつもりでいた。その4Sを昨年末、ふとした拍子に壊してしまった。

 壊したと言っても、画面にヒビが入った程度だ。タッチパネルに不具合が生じたわけでなし、ただ見にくいだけで、外観を気にしなければ使い続けることは可能だった。僕も当初はそのつもりでいたのだけれど、壊れた携帯電話を修理せずに使うということは、思った以上に自分の評価を下げることに繋がるらしい。
 最初のうちは、こいつを胸ポケットに入れていたおかげで助かったんだ・・・などと、しみじみ語っては笑いをとっていたものの、さも驚いたかのように「壊れてても平気なの?」とか、呆れ果てた口ぶりで「まだ修理してないのか」とか、なにやら人間としての重大な欠落であるかのように言われ続けて、すっかりメゲてしまった。

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 ところが直すとなると、結構な額の修理代を払わなければならない。購入時に勧められた保険に入っていれば、安く済ませることもできたらしいが、もはや後の祭りだ。
 まあ、不運を嘆いていても仕方ない。2年に1度の解約月でもあるわけで、いっそ手放そうかとも思ったのだけれど、スマートフォンというのは大変に便利な代物で、今さら持たない生活には戻れそうにない。ならばということで、これを機に5Sへグレードアップしたわけだ。

 手続きはアッと言う間だったし、その場で現物が手に入ったし、手数料は翌月の電話料金に上乗せして引き落としだったしで、あれこれ考える前にやっておけばよかったと後悔するほどの手軽さだった。
 しかし、いざ持ち帰ってから思いがけず面倒くさい問題が生じた。iTunesやApp Storeで買い物をしようとすると、秘密の質問による認証を求められるのだ。今までとは違う端末からのアクセスなので、パスワード以外の本人確認が必要になるらしい。しかし、なにぶん数年前なので、答をなんと設定したものやら、さっぱり記憶にない。2年前に3GSから4Sへ変更した時にも同じ手間があったはずなのだけれど、それすら覚えがない。

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 質問がシンプルなので、回答もシンプルなはずだ。上の候補は小学校のクラスメートが2人、高校の同級生が1人の3択、下はシビックで間違いなかろう。ところが3通りの組み合わせを試しても、全てエラーになる。どれだけ頭を捻っても、それ以外の解答は思いつかない。
 まてよ・・・どこにも自動車なんて書いてない。ただ単に車と言うなら自動二輪も含まれる。初めてのオートバイならクラブマンだ。先輩から譲り受けたホンダの単気筒250cc、自賠責保険とヘルメット代こみで10万円だった。走行距離は5000km、二十年以上前の当時としても破格の安さだ。

 自動二輪の免許証を取得して以来、両手に余る数のオートバイを乗り継いできた。その内の数台については、このブログでも紹介したことがある。それぞれに思い入れがあるのだけれど、最初に手に入れたクラブマンだけは、まったくと言っていいほど良い思い出がない。乗り始めて3日目あたりで、止まっている砂利トラに追突し、フロント周りを大破させてしまったからだ。自業自得のヨソ見運転だった。
 ライトは割れて明後日の方向を向き、ウインカーは根元からもげ、ハンドルはオートレーサーのように曲がり、とどめにトリプルツリーの角度が変わっていた。ブレーキをかけるとエキパイとタイヤが接触する、危険極まりないオートバイになってしまった。
 それでも、修理代を惜しんで半年程は乗っていただろうか。壊れたパーツは針金とガムテープで補修し、ライトはサランラップでグルグル巻きにして出来るだけ夜は乗らないように心がけ、ブレーキをかけない乗り方を徹底した。結局は、あまりに周囲の評判が悪いのと、いくら気をつけても転倒を避けるのは不可能だと気付いて捨ててしまった。若気の至りとはいえ、情けなくて泣けてくる。

 とまあ、モラルの欠如した若者の話は程々にしておこう。そして結局のところ、正解はクラブマンでもなかった。長いこと悩んだ果てに思い出した。前回も同じように苦心惨憺した挙句、シンプル極まりない回答に設定し直したのだった。
 正解は「いない」と「ない」だ。

 俺のバカ。ヒネくれ方が幼稚すぎる。どうにも思考回路に成長の跡が見られない。我ながら、情けなくて泣けてくる。
 

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by TigerSteamer | 2014-01-17 04:09 | オートバイ