タグ:ライダースクラブ ( 3 ) タグの人気記事

キャプテンへ・・・その後

b0190505_21585516.jpg


 あれから5年。
 肺ガンでもオートバイでも命を落とさなかった僕は、こないだ心筋梗塞(タバコの影響もあるのか)で生死の境を彷徨いました。ついでに、もうすぐ電子タバコ(これを禁煙と言っていいものか・・・)に切り替えて200日が経ちます。

「キャプテンへ」
http://steamer900.exblog.jp/21140078
 
[PR]
by TigerSteamer | 2016-06-06 21:50 | 雑記

ビーナス

b0190505_244564.jpg

 カフェ・ド・パリのオープンテラスで遅目の昼食をとっていたところ、水差しを手にしたマスターが、さりげなくテーブルの横に立った。
 グラスの水は減っていない。マスターは儀仗兵よろしく捧げ銃のまま往来に視線を向け、おもむろに話し始めた。僕は僕で目の前の皿しか見ていない。黙々と口と手だけを動かし続けている。向こうが一方的に口火を切り、僕が食事の合間に返答を挟む。マスターと僕の会話は、ほとんどの場合、独り言の応酬のようにして始まる。

「ところで、31日はマックスフリッツへ行くんですか」
 31日は土曜日だ。毎月恒例の朝ツーは、第何週目のかは知らないけれど、たしか日曜日のはずだから、その日ではない。
「いえ、何かあるんですか」
「モトナビカフェがあるんですよ、マックスフリッツ福岡の10周年を兼ねて。カフェ自体は隣のアールズでやるらしいですが」
 初耳だ。R's Cafeと言えば、31日は夜から内山覚さんのライブがあるはずだ。
「たしかあの子が来るんです。ほら、国井律子さん。知ってますか」
 先ごろ第一子を出産した女性ライターの顔を思い浮かべた。マックスフリッツとの付き合いが長いという話は、どこかで聞くか読むかしたことがある。
「そうなんですか。正直言うと、あんまり興味がないんです」
 モトナビカフェに興味がないのではない。僕が言ったのは、国井律子氏に代表される女性ライダー兼ライターのことだ。綺麗な女性だとは思うし、著書も何冊か読んだことがあるけれど、とりわけ女性であることとライダーであることを組み合わせると、途端に興味が薄れる。ふだん意識したことはないけれど、どこかでオートバイは男の乗り物だと思っている前時代的で偏狭な男なのかもしれない。
「私もです」
 おやっと思った。話の流れからして、ああいった感じの女性が好みなのかと思ったのだ。
「私に言わせれば、ほんの小娘です」
 いつになく饒舌だ。こんなによく喋る人だっただろうか。心なしか語尾が弾んでいるように聞こえる。いつものマスターは、眉根にシワを寄せた髭面の強面で、無口ではないにしろ多くを語らない印象があった。僕との間で交わされる会話はオートバイに関するものが主で、軽く当たり障りのない範囲に留まっていた。
「やっぱり堀ひろ子さんですよ。憧れでした。いい女だった。彼女に比べたら、国井律子はまだまだです」

b0190505_2445799.jpg
b0190505_2445750.jpg

 一瞬、その名前がイメージを結ぶのに時間がかかった。僕とマスターの間には十近い年齢の隔たりがあるし、堀ひろ子氏は僕の世代ではない。
 話がおかしな方向に逸れたな、と思った。チラリと店内に視線を移すと、フロア係の奥さんはカウンターの内側で忙しく動き回っていた。あたり前だけれど、この会話は耳に届いていないようだ。堀ひろ子さんに纏わる話は、徐々に熱を帯びながら続いた。僕は首筋にチリチリとしたものを感じながら、なんとか話の向きをオートバイ談義に修正しようと試みた。そろそろ仕事に戻さないと、奥さんの逆鱗に触れるのではないかと危ぶんだのだ。
「なんでしたっけ、堀ひろ子さんのオートバイ」
 マスターは即座に食いついた。
「ラベルダ1200LTD。私は昔、夜の首都高速で軽く競ったことがあるんです。とんでもないパワーでした。あっという間に千切られましたよ」
 長い沈黙が流れた。遠い記憶に想いを馳せているのかもしれない。マスターはやがて、ボソリと呟いた。夢を見ているような、うっとりした口ぶりだった。
「はあ、たまりませんでしたね。彼女のハングオン・・・あの腰つき・・・」
 もうダメだ。僕の手には負えない。グラスの水を一気に煽ると、ごちそうさまを言って席を立った。振り向きざまに見ると、マスターの顔は煮崩れた里芋のように間延びしていた。鼻の下がみょいーんと伸びて、のっぴきならないことになっている。

 僕も男だから、そのての話に興味がないわけではない。これが女性タレントや身近な誰かの話なら、もっと盛り上がっていたかもしれない。女性ライダーの草分けであり、レース活動や文筆業など多岐に渡って活動していた堀ひろ子氏と国井律子氏を比べるのは、やや筋違いであるような気もする。
 ただ、単純に昔の誰かと今の誰かの対比というのなら、ちょっと思い当たる節はある。

b0190505_2445817.jpg
b0190505_2445934.jpg

 佐藤真紀嬢だ。かつてエイ(は木偏に世)出版のライダースクラブ誌に携わっていた女性編集者で、サティの愛称で親しまれていた。現在は古巣を離れ、八重洲出版に移られたらしい。

 僕はライダースクラブを購読したことがないので、彼女がどういった記事を書くのかは知らない。ただ、たまに「らいでぃんぐnavi」で見る彼女は、いつも目を惹く存在だった。色気よりも元気をふりまくタイプではあるけれど、それも無節操にピチピチと弾ける感じではなかった。メインキャラクターである根元健氏や編集長である竹田津敏信氏の横にいて、相手の言葉に耳を傾けては大きなリアクションでコメントを挟む姿は、単なるアシスタントではない能動的な美しさと知性に溢れていた。彼女のしぐさや表情には、なんとなく自分の置かれている境遇を窮屈に感じているように見える瞬間があった。妙に刹那的で投げっぱなしな感じが、10分足らずの番組に生きていた。
 それに比べたら、イズタニ嬢はまだまだだと思うのだ。なにしろ若い。可愛らしすぎる。ファンを名乗る男性は増えるに違いないけれど、それは番組とは関係のない部分だ。アシスタントとしては優秀なのかもしれないけれど、刺身のつま感は拭えない。

 そんなことを考えつつ、ふと思い立ってYouTubeで彼女の出演している回の「らいでぃんぐnavi」を検索したら、モニターに映った自分の鼻の下が、見事なまでにみょいーんと伸びていた。否定はしない。たまらなかったのだ、あのスリムジーンズをカッコ良く履きこなす腰つきが。

(5/31追記) すごく綺麗な人でした。少女のような可憐さと、しっとりした大人の色気が同居した、まさに天使でした。とても一児の母には見えません。マスターの目は腐ってます。

b0190505_11561038.jpg

 

[PR]
by TigerSteamer | 2014-05-30 23:45 | オートバイ

キャプテンへ

b0190505_1201571.jpg

 趣味は何だと問われると、オートバイツーリングと食べ歩き、と答える。ただし、この2つは僕にとって、ほとんど同じものだ。たまに第3の趣味ができるけれど、早ければ3日でリストから脱落するので、ブログのネタ以外では人前で公言したことはない。読書や映画鑑賞を挙げていたこともあったけれど、前者は生活と一体化しすぎているし、逆に後者は観たい作品がある時だけの付き合いだから、それらを趣味と言っていいものかどうか。

 3年ほど前までは、禁煙をリストに加えていた。真面目に答えているわけではない。斜に構えたジョークとしてだ。なにぶん自嘲気味なのでウケた試しがなかったけれど、趣味と言っても構わないくらい何度もチャレンジしてきたのは事実だ。朝に決意して夕方には挫ける程度の遊びから、飲み薬やパッチを用意して臨む計画的なものまで、数えきれないくらい挑戦し、そして失敗してきた。最後は3年前で、経験した禁煙の中では最長となる200日と少しを記録した。そして、それっきり趣味の欄から外した。
 3年前の今頃、Twitterのタイムライン上に気になるツイートを見つけたのがきっかけだった。思わずニヤリとした。なかなかヤニ臭いユーモアだ。

b0190505_3441491.jpg

 この竹田津敏信という人は、エイ(エイは木へんに世)出版から今も発行されている「ライダースクラブ」というオートバイ雑誌の、当時の編集長だった。当時の〜だった、という書き方をするからには、今では違うわけだ。僕はライダースクラブの読者ではないし、雑誌の編集者に興味をもったこともないので、どういう経緯でフォローするに至ったのか思い出せない。おそらくマン島TTレースに挑戦した日本人ライダーの伊丹孝裕氏を先にフォローしていて、その繋がりでだったように思う。
 僕との接点はまったくないので、人物について詳しく触れるのはやめておくけれど、ネットに散見する記事やTwitter上のやりとりから、名物編集長とでも呼ぶべき人物であることを知った。同じ業界人だけにとどまらず、友人知人に読者までをも巻き込んで、常に楽しげな人の輪の中心にいるのが容易に想像できた。ついでに、前出の伊丹氏を含めて僕と同い歳だった。その竹田津氏が禁煙をするというので、面白半分で便乗したわけだ。
 僕とは違って、本格的に禁煙するのは初めてのようだった。物書きという仕事の性質上(物書きじゃないのでわからないけれど、たぶん)、一度身につけた喫煙習慣を捨てるのは並大抵ではなかっただろう。ツイートには深刻さが窺える様子はまるでなくて、それがライバル心に火をつけた。禁断症状の苦しみを知る僕としては、やっかみが半分以上だったのは認める。

 一人でじっと我慢するより、仲間がいたほうが捗るというのは本当だった。それがたとえ縁もゆかりも無い他人だったとしても。いやむしろ、他人だったからかもしれない。ヒネ者気質の僕としては、身近なところにライバルを置かない方が良かったのかもしれない。

b0190505_3441289.jpg

 タイムライン上に表示された、このツイートを見た時は、一緒に快哉をあげたい気分だった。僕が禁煙を始めたのは数日遅れだったので、一緒にというのは正確ではないけれど、まもなく同じ日数をクリアするのは間違いなかった。もっと大騒ぎしても良さそうだけれど、禁煙200日目を告げるツイートは一言だけだった。少し肩透かしをくらったような気がした。ゴールなどないことを考えれば、それで当然なのだけれど。

 そして、それから一ヶ月も経たないうちに、竹田津氏は故人となった。新型オートバイを取材している最中の事故だったらしい。
 死を悼むという感じではなかったけれど、数日先を行く目標だったし、勝手に連帯意識を育んでいた相手だったので、いきなりの訃報はショックだった。肺癌の原因No.1であるタバコをやめてオートバイで命を落としたわけだから、皮肉めいたものを感じなかったと言えば嘘になる。ただ、僕の最後の禁煙が失敗したのは意志薄弱のせいであって、竹田津氏の死とは関係がない。どう取り繕っても嘘くさくなるけれど、本気でタバコを止める気はなかった。所詮は趣味だったのだ。

 今またタバコを止めようと思う。お金がもったいなくなったのが動機だ。なんだか今度は成功しそうな気がする。ついこないだダイエットをしくじっておきながら言うことじゃないけれど、ブログ用のネタではない証に、独りよがりになるのを承知で故人を引き合いに出してみた。どこかで見ていてくれよ。
 

[PR]
by tigersteamer | 2013-09-25 04:39 | 雑記