惜念の春

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 桜の花が咲き乱れ、すっかり暖かくなってしまった今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 さて、当ブログでは昨年末より、厳寒のもとでマックスフリッツ製ウォームパンツのレビューをしたためるべく、苛酷なダイエットに取り組んできました。最近は効果も着々と現れ始め、眩暈や嘔吐感を伴わずに履くことができる域にまで達していました。しかし、あと少しが及ばず、今後は寒の戻りにも期待できないことから、今季の実戦投入は不可能であると判断しました。ウォームパンツは来年の冬に向けて一旦お蔵入りし、思いも新たに春からの食欲シーズンに備え、胃腸のウォームアップに専念したいと思います。僕のダイエットを応援して下さった皆様には心からお詫びします。マックスフリッツが、もうワンサイズ大きなパンツを作ってくれたら良かったのですが、こればかりはどうにもなりません。

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 忸怩たる気持ちを吹っ切って、南阿蘇の「みそらやcafe」でこのブログを書いています。甘い物とコーヒーの組み合わせって本当に素晴らしいですね。
 

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# by TigerSteamer | 2015-03-24 14:00 | 雑記

Ninja H2R 〜 ウイングの秘密

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「羽をつけたら絶対目立つと思うんすよ。先輩、どっかから社外パーツが出てないっすかね」
 そう言い出したのはT君だ。チームのマスコット的なキャラクターで、ど派手なドレスアップを施したTZR250に乗っていた。僕より2つ歳下の大学1年生、県外にある大きな寺の跡取りだった。坊主の息子はお経さえ唱えられればいいという大らかな教育方針のもと、天真爛漫に育った彼の口からは、ときどき周りが対処に困るような発言が飛び出した。
「そもそも、なんでバイクには羽が付いてないんですかね」

 なにせ20年以上昔の話だ。その時なんと返答したのか、残念ながら憶えてはいない。「空を飛ばないからだろ」とかなんとか、今の僕なら答えるだろう。
「ほら、F-1マシンには付いてるじゃないですか、ダウンフォースを稼ぐために。なんでバイクにはアレがないんですかね」
 羽というのはスポイラーのことか。ようやく合点がいった。そう言われればそうだ。待てよ、ウイング付きのオートバイってなかったっけ。あったような気がする。確実なのは仮面ライダーV3のハリケーンだけれど、あれは空想の産物だし空を飛ぶための羽だったような・・・。

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 当時の愛車、VFR400Rのアッパーカウルとサイドカウルの繋ぎ目あたりから、短いウイングが真横に突き出している姿をイメージしてみた。なんと言うか、実にかっこわるい。それにコケたら確実に折れるだろう。周りのパーツまで巻き込んで派手に逝きそうだ。考えるだけで恐ろしい。修理代が幾らかかるか知れない。

 当時の僕は大学生だった。年がら年中金がなかったのは、真面目に勉学に勤しんでいる苦学生だったからではない。昼間はオートバイ、夕方からは部活動、そして夜は麻雀に精を出す不良学生だった。仕送りとアルバイト代のほとんどは、ガソリン代と修理代、麻雀の負け分の清算に消えていった。
 同じ大学のオートバイ好きを集めて、レーシングチームを結成していた。革ツナギの上に揃いのトレーナーを着て、講義はそっちのけで峠に通い、鈴鹿の4時間耐久レースに憧れ、バリマシの俺ハで赤ゼッケンを取ることが目標で、ノリックとバリバリ伝説にかぶれていた。

「アホやな、おまえ」
 それまで黙って耳を傾けていたS君が、ほとほと度しがたいといった顔つきで言った。
「なんでバイクにはウイングがついてないか、そらつけても無駄やからや。ちょっと考えたらわかることやんけ。どこのメーカーもやってないってことは、やっても意味がないってことや」
 頷けるような頷けないような。しかし確かに道理ではある。
「直線だけやったらええけど、問題はコーナーや。バイクを寝かせているときは、イン側とアウト側では全然違う風が流れてんねんで。要するに下から上へ押し戻す力と、上から下へねじ伏せる力のバランスがとれとんねん。そんなとこにウイングなんかつけてみ、気流が乱れてコーナリングが不安定になるだけやで」
 突き放すように言い切ると、どうだ参ったかと言わんばかりに小鼻をうごめかせた。

 身振り手振りを交えながら講釈を垂れる彼は、理系の大学で流体力学を学ぶ学生などではない。僕らと同じど田舎のFランク大学生だ。誰も反論できなかったのは、もっともらしい理屈に納得したからではなく、説を覆すほどの知識を持ち合わせていないせいだ。加えて、僕らのチームでは唯一の限定解除ライダーであり、彼の駆るSRX-6が近隣の峠では最速と目されていたからでもある。既に一滑一留(いちスベいちダブ)のチーム最年長で、僕に輪をかけて金がなく、看護婦フェチのAVマニアで素人童貞で、口ばかり達者な捻くれ者だったけれど、コーナーを攻めている時のキチガイじみた速さだけは誰もが認めていた。他県ナンバーのRX-7を崖の下に追い落とした逸話が、十割増しでまことしやかに囁かれていた。外の世界ではまったく通用しないけれど、少なくとも僕らの間では、オートバイを速く走らせることができる者が一番偉かったのだ。

 その場には他にNSR250RのN君と、RGV250Γのガンちゃんもいたはずだけれど、彼らがなんと言ったかは記憶にない。その後もひとしきり議論は続いて、しりつぼみ気味に途切れた。算数が苦手という理由で私立文系を選んだバカ学生達には、どんなに頭を捻ったところで納得のいく答など見つからなかった。「どこのメーカーもやっていないということは、やっても意味がないということだ」という穿った理屈だけが、なにやら金言のごとく刷り込まれた。
 ちなみにその数日後、TZR250のシングルシートカウルには、できそこないの鳥居のような形をしたリアウイングが取り付けられていた。得意満面のT君を前に、誰もが「そっちかよ」とつっこんだ。アルミで作った羽は確かに目立ったけれど、走っている最中に根元からもげて、どこかに飛んでいったっきり2度と見つからなかった。
 

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# by TigerSteamer | 2015-03-15 00:00 | オートバイ

Save the Galapagos Head Project 発動

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<前回 犬に芸を仕込む迷惑な客

 そんなわけで先日、メガネ21久留米店へ行ってきた。ちょいと間が空いてしまったのは、ここのところ満足に休めないくらい忙しかったのと、懐具合が心許なかったせいだ。
 ワン太の言うには、ぜひもう一度店に来て、僕の提案するヘルメットマウント型のメガネについて詳しく話して欲しいとのこと。こちらから申し出たことだし、本当なら勇んで向かうべきところなのだけれど、億劫に感じるところもあって、つい二の足を踏んでしまった。「作ってください」と頼んだところで、「はい、わかりました」と言うわけにはいかないことくらいわかっている。話を聞くのは建前で、既存商品のセールストークが待っているに違いない。そこでどうせなら、これを機に以前から狙っていた、Fit-Slim Z曲げというモデルを購入しようと思ったのだ。

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 Fit-Slim Z曲げは、メガネ21がフルフェイスヘルメット用メガネとして売り出す4種類のうちの1つで、ツルの形を自由に変えることができる優れものだ。ツルをまっすぐ伸ばせるので、ヘルメットを装着した状態でも帽体とこめかみの間に差し込みやすい。ただし、僕が普段使っているヘルメットは、前面を上に跳ね上げることができるシステムヘルメットと呼ばれるタイプで、頭部全体を覆うフルフェイスタイプではない。顔に当たる部分が解放されているジェットタイプとのハイブリッド的な位置付けで、フルフェイスに比べれば安全面では劣るけれど、メガネをかけたまま装着することができるという利点がある。だから厳密に言えば、差し込みやすさを主眼としたフルフェイス用のメガネは必要ないのだけれど、Z曲げだと頭の鉢の輪郭にツルを沿わせることができるので、6種類の中では一番相性が良さそうだと感じたのだ。

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 構えて行ったにも関わらず、新製品に関するセールストークはなかった。意外にも、いきなり打ち合わせから始まった。どうやら本気で、ヘルメットに取り付けるメガネを作ってくれるつもりらしい。僕は眼鏡屋という仕事をよく知らないのだけれど、普通こんなことまでしてくれるものだろうか。ひょっとするとメガネ21ならではなのかもしれない。なんだか上手くノセられているような気がする。スムーズに事が進みすぎて気色が悪い。

 久留米店の店長さんは僕のブログを読んでくれたようだけれど、おさらいのつもりで順を追って説明した。
 メガネをヘルメットに取り付けることによって、①フルフェイスヘルメット脱着時に掛け外しの手間を省くことができる。②ヒンジやツルに無理な力を加えなくて済む。これが最大のメリットだ。また、通常は耳と鼻の3点で支えるレンズを、頭部全体でキープすることにより、③走行中のズリ落ちを防止することが可能だ。顔の幅に合わせる必要がないので、④レンズの横幅を広くできる。メガネは凸レンズなので、大きなものを作ろうとすると中央の厚みが増し、その分重さが増す。ヘルメットに固定し、普段使いと共用しないことで、重量はある程度無視できるようになるわけだ。そしてレンズが大きくなれば、⑤視界全体をカバーできるようになる。オートバイの運転中は、ただでさえ左右の視界が狭まる傾向にある。つまりは視認性の向上にもつながる。

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 いいところばかりを羅列したけれど、おそらく簡単にはいかないだろう。当然ながら、ちょっと考えただけで幾つもデメリットが浮かぶし、頭の中だけで組み立てていたことなので、実際に作るとなると構造的な欠陥も出てくるに違いない。それに道路交通法も無視できない。メガネというのは頭部に装着するもので、ヘルメットに固定することが許されるかどうかについては定かでない。安全性、機能性の面では何ら問題なかったとしても、それが即ちルールをクリアしたことにはならない。こういった矛盾はずっと昔からあって、ことあるごとにライダーを悩ませてきた。ある意味、法律とはそういうものだとも言える。

 ああでもない、こうでもないと話し合いながら、気が付くと1時間以上が経過していた。とりあえず今回はここまで、日を改めフルフェイスヘルメットを持って再訪することになった。一応は前に使っていたのがあるのだけれど、長年酷使してきた物なので、ちょっとくたびれ過ぎている。後ろ髪を引かれるような気分ではあるけれど、Fit-Slim Z曲げの資金はフルフェイスの購入にあてることにした。
 最初の記事を書いたのが2年前だ。そう思うと、なにやら感慨深いものがある。今ここに、異形の頭部をもったライダーたちを救済するべく、「ガラパゴス頭を救えプロジェクト」がスタートした。鬼と出るか蛇と出るか、次回を乞うご期待だ。

関連:ヘルメット用メガネ
 

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# by TigerSteamer | 2015-03-09 00:30 | オートバイ