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犬に芸をしこむ迷惑な客

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 僕にとっては小さな一歩でも、すべての眼鏡ライダーにとっては偉大なる一歩である・・・といいなあ。

関連:ヘルメット用眼鏡
 

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by TigerSteamer | 2015-01-30 13:42 | オートバイ

ガラパゴス頭の悲劇

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関連:ヘルメット用眼鏡

 半年ほど前から、検索ワードの順位に「フルフェイス 眼鏡」や「ヘルメット用メガネ」という単語が目立ち始めた。僕がこれについて書いたのは1年以上も前のことだ。当初は何の反応もなかったのに、今になってアクセスが増えるのはおかしい。訝しく感じて調べてみたところ、メガネ21からフルフェイス型ヘルメット用眼鏡が発売されたことがわかった。検討中から発売中へ、大きくジャンプアップだ。さすがはワン太、褒美にカリカリを送ってやることにしよう。

 ここ数年で、眼鏡用スリットを備えたヘルメットが増えた。こめかみの辺りに眼鏡のツルを通す溝(もしくは柔らかい部分)を設けることで掛け外しをスムーズに、また両サイドからの圧迫を緩和する仕組みだ。かなり前から一部のジェット型ヘルメットなどには採用されていたのだけれど、スポーツモデルやフルフェイス型では稀だった。
 さっそくオートバイ用品店で試着してみたのだけれど、残念ながら溜息が溢れるだけの結果に終わった。昔から何度ボヤいたことかしれない。ヘルメットは規格外の頭には対応していないのだ。僕の身長は184cmなのだけれど、実は頭部が人並みはずれて大きいだけで、平均的な頭のサイズに挿げ替えると180cm弱になる。ヘルメットはもちろん最大サイズしか入らないけれど、メーカーによっては長時間使用すると頭が痛くなるので、購入前の入念なテストが必要になる。試着のできない通販などもってのほかだ。

 このガラパゴス頭とでも呼ぶべきメガネ綱大頭目長顔科(めがねこう、おおあたまもく、ながかおか)に属する僕が眼鏡用スリットを使うと、どうしても眼鏡が上にズレる、というか目の位置が下にズレてしまう。普通の近眼や遠視なら大した問題ではないのだけれど、乱視が入っているとそうはいかない。焦点の狂ったレンズは事故の元だ。よって帽体を削ったり、チークパッドを切ったりという加工が必要になる。
 加工の手間自体は大して苦にならない。ヘルメットを新調するたびに、サンドペーパーで帽体をゴシゴシ削って自分の頭に合わせるところから始めるのが常だからだ。

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 それはさておき、眼鏡ライダー垂涎のフルフェイスヘルメット用眼鏡だ。期待に胸を膨らませて試着しに行ったのだけれど、これまた残念ながら溜息が溢れるだけの結果に終わった。
 モノ自体は素晴らしい。ツルの短い、こめかみと鼻梁でホールドする眼鏡だ。厚みを抑えた針金状のツルが頭の側面にフイットするから、掛けているときに違和感を感じたり痛みが生ずることはない。奥まで差し込む必要がないにもかかわらず、こめかみと帽体で挟み込むので、強いショックを与えてもズレる不安感はない。横長のレンズは視界良好だし、横のヒンジやツルが視界に入り込んで邪魔などということもない。ヘルメットを被っていないときは、付属のアタッチメントを装着して、通常の長さまでツルを延長することができる、なかなかの優れものだ。

 ただし、頭が人並みの大きさだったらの話だ。僕の場合、こめかみに辛うじて届くか届かないかの深さで、帽体には完全に届かない。その上、メガネ綱大頭目長頭科の中でも希少種である鼻低属脂多種(はなひくぞく、あぶらたしゅ)に属するがゆえに、レンズの重さを鼻当てで支えられないのだ。固定するものが何もないから、常に首を上に傾けていないと、ずるずる滑って落ちてしまう。とても同じ人間のために作られた道具だとは思えない。生物学的に、まったく別の進化を遂げた動物・・・人間の靴下を象に履かせようとしているかのような徒労感に襲われた。
 わかってはいた。マイノリティーはどこまでいってもマイノリティーでしかなく、最後の最後まで救われない運命なのだ。

 恨み言はいわない。ただ一つだけ、ただ一つだけでいいから、この進化の波に取り残された哀れな生き物の願いを叶えて欲しい。ヘルメットにマウントするタイプの眼鏡を作ってくれはしまいか。ヘルメットを被っていない時用の眼鏡を持ち歩かなければならない不便はあるけれど、眼鏡ライダーの永遠のテーマである、装着時の手間からは完全に解放される。顔の幅に合わせて作らなくても良いわけで、レンズを大きく、視界の端までカバーすることが可能だ。レンズというのは、大きくなればなるほど中心部分の厚みが増す。それに伴って重さも増える。これを耳と鼻で支えなくてはならない手前、従来の眼鏡として使用する場合は大きくするにも限界があるけれど、ヘルメットに装着するなら何ら問題はない。いいことずくめの、まさにコロンブスの卵的ヘルメット用眼鏡だと思うのだ。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-28 03:00 | オートバイ

快適な夜のために



 忙しい日が続いたりすると、オートバイを盗まれる夢を見ることがある。深層心理が脳に訴えかける、一種のサインなのだと思う。これは通勤ライダーだった頃にはなかったことだ。すこやかな眠りのために、今日はオートバイに乗ろう。寝る前に見た動画が僕の尻を蹴飛ばした。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-25 06:10 | ツーリング

ノーミノールの花

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関連:あんぱん遥かなり

 ポケットの中で温め続けた石を陽の光にかざした時、思っていたよりもずっと美しくなくて唖然としてしまう事がある。素晴らしいアイディアだと思った。僕の頭の中にある時点では、ゴッホの「ひまわり」のようになるはずだった。
 花の部分が「カフェ食堂 Nord(ノール)」のバター入りあんぱんで、葉っぱに見立てたのが「パン工房 Nohmi(ノーミ)」の黒・白あんぱんだ。福岡を代表する2人の若きあんぱん職人による(勝手に)コラボレーションである。今さらながら、しみじみと実感した。昔から芸術的な才能は皆無なのだ。本当にもうしわけない気持ちでいっぱいだ。どう間違うと、あれがこうなるのか見当もつかない。ひょっとすると、テーブルが悪いのかも。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-21 13:59 | 食べ物一般

ZXR250 〜 男カワサキ

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 「男カワサキ」という言葉がある。国内のオートバイメーカー4社の中でも、骨太で我が道を行くイメージが強いカワサキのキャッチフレーズだ。かつて最速を誇ったGPZ900RやZZR1100を思い浮かべる人もいるだろうし、ゼファーやZRXなどに代表される無骨なネイキッドモデル、あるいはそこから遡ってZ1やZ750RS、マッハシリーズに想いを馳せる人もいるだろう。オートバイだけに捉われず、ライフスタイル全般にイメージを重ねることもあるかもしれない。
 「男カワサキ」は好意的に用いられるとは限らない。この言葉が大嫌いだと言う人もいる。カワサキが嫌いなのではなくて、男性的な権威主義のイメージが嫌なのだそうだ。「男」に固定のイメージがあるということは、暗に背中合わせで「女とはかくあるべし」という前時代的な思想を突き付けることでもある。また、ナルシズムの臭いを嗅ぎ取って、逆に男らしくない、女々しさの象徴だと唾棄する人もいる。

 このように、「男カワサキ」から受けるイメージは人それぞれだ。僕の場合は、真っ先にZXR250を思い浮かべる。かつて2週間だけ所有していたレーサーレプリカだ。クラブマンでオートバイに乗り始め、金がなくて手放したVT250スパーダを経て、このZXRで本格的な峠デビューを飾った。僕の無謀な運転が元で、あっという間に鉄屑になったけれども。
 クロスミッションに倒立フォーク、クラス中でも抜きん出て高い回転数、ラムエアが実装されたのもこのオートバイが最初だ。盛り込まれた最新技術の中でも、一際目立ったのがK-CAS(Kawasaki Cool Air System)と呼ばれるカワサキ独自の冷却システムだった。カウル前方から走行風を取り込み、燃料タンクを貫通したダクトを経て、エンジンのシリンダーヘッドを直接冷却する。そうすることによって、エンジンの熱ダレを防いで出力を安定させる。そういう設定だった。シンプルでわかりやすい原理を誰もが信じていたし、僕も疑っていなかった。

 スズキのファンがスズ菌感染者と呼ばれるように、カワサキには信者と呼ばれる熱烈な支持者がいる。その盲信ぶりときたら、構造的欠陥すら美点として肯定してしまう程だ。そんな彼ら、オイル漏れすら入っている証拠だと言い切るカワサキ信者達にとっても、K-CASは微妙な存在であるらしい。今そのことに触れると、ある者は虚空に視線を迷わせながら、あれは思ったほどの効果はなかったらしいね・・・などと消え入りそうな声で呟いたり、またある者は堂々とふんぞりかえって、常用域では無用の長物なだけで、機能し始めるのは200キロを超えたあたりから、などと居直ったりする。まるで、効果が感じられないのはお前がヘタレだからだと言わんばかりだけれど、250ccのオートバイにそんなスピードが出せるはずもない。

 さしたる根拠もないけれど、あえてここに断言しよう。K-CASにそんな効果はない。実感できたと言い張るそれはプラシーボ効果であり、篤い信仰の賜物だ。レーサーレプリカの開発では後発組にあたるカワサキが、他社に負けないセールスポイントをと、なにか凄そうに見えるギミックを取って付けただけの代物だ。
 僕にとって「男カワサキ」の男とは、K-CASに見るハッタリと子供だましだ。ペラペラの虚栄心でもあり、勢いだけの取るに足らない矜持でもある。その先には、博徒たちが凌ぎを削る鉄火場の光景があるかもしれない。そういう意味では、非常に男らしいと言えなくはないけれど、そこに高倉健や鶴田浩二の姿はない。
 誤解して欲しくないのは、カワサキのオートバイが嫌いではないということだ。むしろ人間味があって好ましい。4大メーカーの中で最も愛すべき存在だと思う。「男カワサキ」のネガティブなイメージもすべて引っくるめて、男なんてカワイイものなのだ。

 ちなみに僕の周りでは、◯-CAS(◯には各人の頭文字が入る)と称してズボンのチャックを全開にする遊びが流行った。実に男カワサキ的な、どうでもいいエピソードだ。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-19 16:00 | オートバイ

あんぱん遥かなり

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 明日こそは必ずオートバイに乗ると固く決意して床に着いたにもかかわらず、目が覚めたのは昼前だった。一応、午前7時に目覚ましをかけていたのだけれど、久しぶりの休みだということもあって、つい二度寝の誘惑に屈してしまった。
 どんよりと曇った空が、さらに気を滅入らせた。午後から雨になるらしい。晴れていれば諫早方面に出かけるつもりだった。しかし、目的地を変更するのが得策だ。僕は雨の日のツーリングが苦にならないタチなのだけれど、この時期は別だ。インフルエンザも流行り始めたことだし、仕事に支障が出ない程度に自重せねばならない。

 幾つも代替プランが浮かんだけれど、思うところあって先日もブログに書いた「カフェ食堂 Nord(ノール)」へ行くことにした。iPhoneの天気予報アプリ(あまりアテにはならない)で調べたところによると、本格的に天気が崩れるのは15時以降らしい。往復で100km程度だから、時間にして2時間強。オートバイなら降り始めまでに行って帰ってくることができる。くどくどと前置きが長くなるのは、それが出かけるための言い訳だからだ。4輪で行けば雨は問題にならないのだけれど、そこはあえて選択肢に含めない。
 前回、おみやげとして「バター入りアンパン」を4つばかり購入した。ちょっとイメージしにくいかもしれない。生地にバターを多めに練りこんであるとか、名古屋名物のアンバタなどとは違う、アンコの上にバターがひとかけ乗ったパンだ。これが思った以上のヒットだった。食べる前に軽くトースターで加熱すると、溶けたバターのコクが全体に染みわたって、えもいわれぬ美味しさになる。餡好きが唸る味だ。ただし、カロリーの高さは想像するまでもない。ダイエット中の身としては躊躇もするけれど、その分は他で調節するしかない。

 なかなかの人気メニューらしく、初回の訪店時は既に売り切れていた。午後3時くらいだっただろうか。前回は開店時間に合わせたのでありつけたけれど、オープンと同時に店内を満員にした他の客のことを考えると、大量に購入するのは憚られた。考えようによっては、今日は絶好のチャンスだ。天気が悪いということは、普段に比べると客足も鈍るに違いない。買い占めると言うと大袈裟だけれど、少し多めに買っても迷惑にはならないのではないかと踏んだのだ。
 期待に胸を躍らせ、喜び勇んで出発した。行き当たりばったりではあるけれど、我ながら名案だと思った。店に着くまでは・・・。

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 むべなるかな。念には念を入れ、(それが普通なんだけど)定休日を確認しての訪店だったにもかかわらず、ノールは閉まっていた。ショックはなかった。もうこのオチには飽きた。マンネリもいいところだ。
 最近は、こちらの期待が高ければ高いほど、店が休みの日に当たる確率も上昇するような気がする。年が明けても、まったく改善の見込みはなさそうだ。

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 ノールは諦めがついても、一度燃え上がったアンパン熱は冷めきらない。いかにも惜しい。このまま素直に帰途につく気にはなれなかったので、そのまま最寄りのパン屋に寄った。前にも何度か利用したことがある店で、「CLOUD(クラウド)」という。客の評判は悪くないし、素朴な味で本来なら好ましいはずのアンパンも、タイミング悪く既に冷たくなっていたのもあって、ことさらにコレジャナイ感がつのった。

 仕方ない。雨に降られる覚悟で、もう一軒だ。福岡市西区石丸に「パン工房 Nohmi(ノーミ)」という店がある。名前が似ているのは偶然だ。Nordはフランス語で北を指す言葉で、Nohmiは店主の能見誠氏の苗字からきている。自宅からも職場からも遠い上にツーリングの目的地にするような立地でもないので、滅多なことでは口にできないのだけれど、僕はここのアンパンの大ファンなのだ。
 たしかノーミには、ノールと同じ糸島市に支店があったはずだ。近いうちに尋ねようと思いつつ、まだ行ったことがないのを思い出した。

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 雲は分厚く垂れ込め、もはや一刻の猶予もないように見えた。しかし、距離すれば15kmほどだ。やたらと幹線道路ばかりを走らせたがるGoogleナビでその距離ということは、かなり短縮の余地があるということでもある。時間的には苦しいけれど、まだ何とかなる。思い切って足を伸ばしてみることにした。

 勢いで出発してはみたものの、残念ながらノーミでもアンパンにはありつけなかった。売り切れていたのではなくて、メニューになかったのだ。
 ノーミ本店の売り場面積は狭く、品揃えもアンパンやメロンパンなど、昔ながらの菓子パンが主だった。こちらの支店は広さもそこそこで、チーズやウインナーなどをあしらった調理パンが目立った。同じ店がもう1軒というより、2店で補い合う関係なのかもしれない。アンパンは食べ損なったけれど、代わりに購入した練乳パンが美味しかったので良しとしよう。

 山もなくオチもない展開で申し訳ない。実はもう少し続きがあるのだけれど、次回へ続くことにして一旦〆る。復路で雨に降られ、濡れ鼠になったせいか、なんだか寒気がする。明日は(というか今日は)仕事なので、今夜はパブロンを飲んで寝ることにする。おやすみなさい。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-14 20:49 | ツーリング

幻のオレンジペコー

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 オレンジペコーとは、茶葉の等級を指す言葉であって、別にオレンジの果汁やピールがはいっているわけではない。新芽の部分を多く含んでいて、それがオレンジ色をしていることからその名がついたらしい。鯛焼きに鯛がはいっていないようなものだろうか。

 今を去ること20年程前、低価格が売りのファミリーレストラン「ガスト」で、僕は初めてその名を知った。ホットドリンクバーだった。ダージリン、セイロンティーやアップルティー、烏龍茶、緑茶など、飲み放題のティーバッグのコーナーに、オレンジペコーも含まれていた。
 当時、学生だった僕は、ガストに行く度にドリンクバーを注文し、両手では掴みきれないくらいのティーバッグをこっそり持ち帰っては、自宅でそれを楽しんでいた。あまり褒められたことではないけれど、お茶っ葉にも事欠くほど金がなかった。 おそらく店員にはバレていただろう。裏で不名誉なアダ名をつけられていても文句は言えないくらいの常習犯だった。
 ティーバッグのほとんどは1回こっきりの使用にしか耐えず、2度目からは色も味もつかない代物だった。その中でも、オレンジペコーは特に薄かった。2つ3つまとめてポットに入れて、長時間煮だしても薄い色しかつかず、紅茶の味もしない。そしてなにより、妙に酸味が強くて、柑橘系の濃い香りがしたのだ。匂いつき消しゴムのような毒々しさを感じた。まさしく人工的なオレンジの味と香りだった。それでも、これはそういうものなのだと信じて疑わなかった。
 オレンジペコーにオレンジは入っていないと知ったのは、それから随分経ってからのことだ。

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 夜勤の帰りに、ガストへ立ち寄って、ランチメニューとドリンクバーを注文した。しかし、そこにオレンジペコーはなかった。あれは一体なんだったのか、僕の回りに当時を知る者はいない。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-13 12:30 | 食べ物一般

オートバイ事故

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 記憶が曖昧な部分は、適当に補いながら書くことにする。
 もう何年も昔のことだ。古い知人に電話で呼び出されて、とあるカフェを訪れたことがあった。きっとお前なら気に入ると太鼓判を押されたにもかかわらず、普段なら絶対に足を踏み入れないタイプの店だった。調度品や建物全体の雰囲気から、何か既存の文化を模しているような気がするのだけれど、その何かが浮かんでこない。全体的に西洋風で、ごくごく近代の、ある意味クラシカルな造りだ。オシャレなカフェと言われれば、その通りと答える他にない。しかし、現代的なスマートさはなく、むしろゴチャゴチャしていて猥雑な印象を受けた。今ひとつ的を射た表現が浮かばないのは、そういった流行り廃りに、てんから興味がないせいだ。

 知人は長いこと疎遠になっていた人物で、もともとそれほど仲が良かったわけでもないから、僕の好みを知っているはずはない。その1週間ほど前に、当時通っていたスポーツジムで何年かぶりに顔をあわせて、ちょっとだけ世間話を交わしただけの殆ど他人だ。それなのに妙に自信たっぷりで、含みのある口ぶりが気になった。たしかラーメンの話をした。このあと暇かと尋ねられて、ラーメン屋に寄って帰るつもりだと答えたからだ。どこそこのが旨いけど知ってるかとか、あそこの店は味が落ちたとか、相手もそれなりに通を気取った口ぶりだった。別れ際に携帯電話の番号を聞かれて、特に抵抗も感じずに教えた。社交辞令の一種であって、実際にかかってくるとは思いもしなかった。その一連の流れから考えると、その日の呼び出しは、彼のお勧めのラーメン屋を紹介してくれる為としか思えなかった。
 駐車場にオートバイを停めて、入り口のドアをくぐった。知人はまだ来ていなかった。窓際のテーブル席に座り、メニューにざっと目を通した。食事は軽食のみで、当たり前だけれどラーメンのラの字もなかった。ひょっとしたら、ここから別の店に向かうつもりなのかもしれない。腹は減っていたけれど、それはラーメンを食べると想定してのことだ。ただ待つというのもなんなので、茶腹も一時でアイスコーヒーを注文した。

 店内を見回して、それを見つけた時、彼の自信の正体に気付いた。決して広くはないフロアの奥、トイレへ続く短い廊下の入り口に、1台の古いオートバイが置いてあった。くすんだアルミ製のタンクに、見慣れたものとは少し違うメーカーのロゴ、メリデン・トライアンフだ。インテリアとして飾っているのだろう。低い位置に取り付けられたセパレートハンドルから、カフェレーサーと呼ばれるスタイルの改造が施されているのがわかった。
 休みの日は何をしてる? と聞かれて、バイクに乗ってフラフラしていることが多いと答えたのを思い出した。
「へえ、何に乗ってるの」
「トライアンフのタイガー。マイナーだから知らないと思うよ」
「マジかよ、俺も昔はSRに乗ってたんだぜ」
 今というならまだしも、昔乗っていたからなんだと言うのか。ヤマハのSRを持ち出すあたり、トライアンフのタイガーを誤解してることは明らかだけれど、面倒なので訂正はしなかった。なるほど、それでこの店なわけだ。

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 もともと、ゆっくりと寛げる雰囲気の店内ではないところにきて、あらぬ誤解から、さらに居心地が悪くなった。店主と思しき男性は僕と同年輩に見えた。ロッカーズでもモッズでもなく(そのどちらかだったところで、オシャレに疎い僕には見分けがつかないのだけれど)ごく普通のウエイターの恰好をしていた。おそらく彼が、あの古いトライアンフの持ち主なのだろう。

 自意識過剰と言われれば弁解のしようもないけれど、ここでライダーの駆け引きが始まるのは仕方のないことだ。窓の外に視線を移せば、目と鼻の先に僕のタイガーが見える。当然ながら先方も気付いているだろう。店の前の駐車場がガラガラだったので4輪用のスペースに乗り入れたけれど、もっと端っこの目立たないところに停めるべきだった。しかし、後悔しても後の祭りだ。
 時代の隔たりこそあれ同じトライアンフ乗りなわけだから、挨拶くらいは交わしておくのが礼儀かもしれない。ここで面倒なことが一つ。仮に僕の愛車がスクランブラーやスクラクトンなどのモダンクラシック路線なら、普通に話しかけても何ら差し支えない。古き良きものを愛する方向性は同じだから、きっと話は盛り上がるだろう。もしくは僕がトライアンフではなくBMWのK100かなにかで、店に飾ってあるのが大昔のBMWだったとしても問題はない。BMWは基本的に地続きだから、若干の齟齬はあるかも知れないけれど、同じビーマーとしての連帯感を共有できるだろう。ドゥカティであれモトグッツィであれ、そこに大差はないはずだ。

 僕のタイガーは1995年製だから、決して新しくはない。日本車を基準にするなら、そろそろ旧車のカテゴリーに分類してもいい頃だ。ただし、長い歴史を持つヨーロッパのオートバイメーカーの中では、生まれて間もないヒヨッコの部類に含まれる。特にトライアンフの場合はややこしい。1980年代の半ばに一度は倒産しているからだ。現在のオーナーが商標を買い取って工場をヒンクレーに移し、新会社としてスタートして以降は別物と考える向きがある。つまりマニアの好むトライアンフは、倒産するより前、メリデンに工場があった頃のトライアンフであって、僕のタイガーは単にボロいだけのオートバイなのだ。
 どのジャンルに於いても同じだけれど、エンスーなどと呼ばれるコアなマニアの中には、排他的で偏狭な輩が少なくない。ぶっちゃけた話、相手は僕を同じトライアンフ乗りだとも思っていない可能性がある。これは無理もないことだ。僕にしたところで、タイガーを由緒正しいブリティッシュ・モーターサイクルの末裔だなどと思ったことはない。少々サビやすいこと、ゴムパーツが劣化しやすいことを除けば、品質的にも日本車とさして変わりはない。
 よって、同じトライアンフというだけで、親しげに話しかけることは憚られた。

 仮にも客なわけだから、僕の心配がピントはずれであることはわかっている。話したくなければ黙っていればいいことだし、愛想話を振るとしたら相手の方からだ。歯牙にもかけて貰えないなんてこともないだろう。しかしこの時、ただでさえ人見知りが激しい僕の精神状態は、すでに常軌を逸し始めていた。
 何度目かの逡巡の末に、清水の舞台から飛び降りる覚悟で声をかけることにした。いちど意識し始めたが最後、もうこれ以上の沈黙には耐えられそうになかった。僕のタイガーの存在は捨て置くとして、こういう時は相手の愛車を絶賛するに限る。ライダー同士のコミュニケーションは、お互いに相手のオートバイを褒め合うところから始まるものだ。
「かっこいいですね。あれはワンテンですか」
 考えに考えた末に編み出した口上だ。淀みなく言い終えることができれば、それだけで礼は尽くしたことになる。伝えたいことだけを畳み掛けるように繋げた。
「何年式ですか。あのコンディションを維持するのは大変でしょう。僕も最近のトライアンフに乗ってるんですけど、やはりメリデン時代のものは味がありますね。憧れます」
 店主とおぼしき男性は、急に声をかけられて驚いたようだった。キョトンとした顔つきで僕を見つめている。かなりの早口だったし、あまり滑舌が良い方ではないから、聞き取りにくかったかもしれない。今の問いかけを冒頭から繰り返すことを考えて、暗澹たる気分になりかけた。
 彼はやや間を空けたのちに、ようやく言葉の意味を理解したようだった。古いトライアンフをチラリと見て、視線を僕に戻し、少し遠慮がちにはにかんで、キッパリと言い切った。
「すいません、知らないんです」
 知らないんです? 思わず鸚鵡返しをしそうになって、あわてて口をつぐんだ。
 予想外の返事だった。雇われの身ということだろうか。店主、つまりオートバイの持ち主は別にいると。
「知り合いが持ってきたので飾ってるんですが、興味がないので詳しいことはわかりません。たまに聞かれるんですけど、なにも答えられなくて・・・」
 店主は申し訳なさそうな表情を浮かべつつ、逆に尋ねてきた。
「これって貴重な物なんですか」
 青信号に変わったことを確認した上で、右を見て左を見て、もういちど右を見て、さらに念のため青信号が点滅していないか確認してから横断歩道を渡ったはずなのに、なぜか猛スピードのダンプカーに跳ねられたような心境だった。これをオートバイ事故と言わずになんと呼ぼう。
 無残な礫死体となって横たわる僕を見下ろし、加害者はなおも続けた。
「正直、オートバイを室内に飾る発想がなくて・・・雨ざらしにするのも忍びないので店の中に置いてますけど、邪魔なので対処に困ってます」

 なぜこんな昔話を蒸し返すのかというと、昨年末にこれと同じようなやりとりを交わしたからだ。違うところといえば、オートバイがトライアンフではなくてハーレーだったこと、飲食店ではなくて理髪店だったことだ。あらかじめ地雷臭は嗅ぎ分けていたし、学習の成果もあって足の小指を轢かれた程度で済んだ。しかし、釈然としないのは確かだ。オートバイ用品店ならわかる。アパレル関連の店でもわかる。飲食店も、まあわかる。しかし、理髪店にオートバイを飾る意味がどこにあるだろう。これはおそらく、オートバイの持ち主にも非があるのではないだろうか。要するに彼らは、TPOをわきまえず、誰でもいいから見せびらかしたいだけなのだ。

 ちなみに、知人の要件はマルチビジネスの誘いだった。跳ねられたところを後続車のタイヤで圧し伸ばされて、道路のシミになった気分だった。肩透かしを食らった上の空きっ腹は耐えがたく、相手がトイレに立った隙を狙って、黙って店を後にした。しばらくしてアイスコーヒーの代金を払っていないことに気づいたけれど、大して気は咎めなかった。
 またもや敵を増やしてしまうのは覚悟の上で、ひとことだけ言っておきたい。僕はよく知りもしないオートバイをインテリアにする店と、見せびらかしたいだけの鼻持ちならないオーナー、それからマルチビジネスの勧誘が大嫌いだ。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-08 22:46 | オートバイ

2台のラビット

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 ツーリングの帰りにカフェ・ド・パリへ寄ったら、店の前にピカピカのラビットジュニアが置いてあった。思わず唸った。聞けば、お客さんからの預かり物を、店の看板として使わせてもらっているとのこと。機外極上で、普段使いに耐える実働車らしい。エンジンの音を聞かせてもらったけれど、確かにコンディションは良さそうだ。2ストローク特有の破裂音から、こころなしか角がとれて丸くなっているような気がした。

 歳をとるごとに、誰にも共感してもらえない自分ルールが増えていく僕にも、このラビットなら許せると思えるところがある。マスターは年季の入ったモトグッツィのマニアなのだけれど、愛車のV11スポルトを店表に出すことはない。オートバイ乗りが集まるお店ではあるけれど、ライダーズカフェではないからだ。そこであえてラビットを看板として提供した客のセンスが素晴らしい。古ければ良いというものではないし、お洒落なら良いというものでもない。

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 糸島市二丈深江の、海にほど近いなだらかな丘の上に『カフェ食堂 ノール』はある。木造りのシンプルな建物で、海を望む一角に大きな窓がこしらえてある。北欧情緒の漂う海辺のレストラン・・・というよりは、漁師小屋のような佇まいだ。凍てつく潮風に凍えながら屋内に足を踏み入れると、そこでは漁閑期の漁師たちがストーブを囲んで談笑している、そんな光景が思い浮かぶ。
 古い建物ではないので塗装は青々としているけれど、ところどころ日に焼けて色褪せた外壁が風情を滲ませている。ここで長いこと店を構えていると、さらに味わい深くなるのではないか。十年後、二十年後も、この店に通う自分を想像して、なぜだか逆に懐かしい気持ちになった。

 僕の勝手なイメージの中では、使い置かれて錆のまわった漁具が立てかけてあるあたりに、1台の錆びついたラビットマイナーが置いてあった。カフェ・ド・パリの物よりも、さらに年式が古い。いかにも、いつの日からか使われなくなって風化した様相だけれど、店の名前で検索した画像には違うスクーターが写っていたから、こだわった末に収まったアンティーク品だということがわかる。
 この朽ち果てたラビットがまた、細やかで綿々とした人の営みを感じさせる役割を担っている。身を切るような外気と、温もりの篭った室中との対比を際立たせているようにも感じる。もしこれがラビットではなく、小粋なイタリアンスクーターの類だったとしたら、今とは違う感慨を抱いたに違いない。

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 オーナーはカワサキのW3乗りなのだけれど、店内にあってオートバイを匂わせる要素は抑え気味に、客がライダーであれば気付く程度に留めていた。料理はもちろん美味しかった。品数は多くないけれど、その分ひと品に丹精がこもっている。もてなす側の人柄が表れているようだ。

 冬場はオフシーズンだと思われがちだけれど、こういった店と数多く知り合うと、寒くてもオートバイで出かけてみようかなという気分になる。暖をもとめて走るうちに、いつしか冬こそが絶好のオートバイシーズンになる。

カフェ食堂 ノール(http://www.nord2013.jp/menu.htm
 

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by TigerSteamer | 2015-01-03 03:43 | ツーリング飯