<   2014年 01月 ( 7 )   > この月の画像一覧

ガンジス川の追い剥ぎコロッケ

b0190505_21162.jpg

 昨年の5月に当ブログで紹介した『追い剥ぎコロッケ』を憶えておられるだろうか。その反響たるや凄まじく、日本全国津々浦々、果ては海外からもサーバーがパンクせんばかりのアクセスがあったなんてことはなく、むしろ読まれた回数は群を抜いて少なく、ついでに書いた本人もほとんど忘れかけていた。
 精魂込めて書いた文章ほど誰も注目してくれないというのは、このブログが始まって以来のお約束だ。最初の頃は不本意と不甲斐なさに煩悶としたものの、じきに慣れてしまった。僕自身も、基本的に思わしくない事象からは積極的に目を逸らすタイプの人間なので、なんら気に病むことなく現在に至る。ただ、これから紹介するお店と密接な関係があるので、興味がある方は一読していただきたい。なければないで、今回の記事ごと飛ばしていただいても構わない。

 さて、件の「追い剥ぎコロッケ」だ。世の中に浸透している間違った認識であるところの「ジャガイモのピカタ」を駆逐し、それに代わる名称として、僕が20年前に考案した「追い剥ぎと炭焼き職人のコロッケ」を定着させたい、というようなことを書いた。今もその思いは変わっていない。実際、ブログで記事を公開した後も、しばらくの間は草の根的な活動を続けていたのだけれど、あまり周囲の反応が芳しくなかった。「衣のないコロッケはコロッケじゃない」とか、「なんで衣なしコロッケじゃダメなの?」とか、「それだと追い剥ぎじゃなくて、追い剥がされコロッケになるんじゃない?」とか、ぐうの音も出ない程ごもっともな反論にさらされて、早々に心が折れてしまった。”伊の鉄人”坂井宏行とか辻調理師専門学校の先生あたりに、テレビでスバリと言ってもらえば効果があるに違いないけれど、僕一人の力には限界があるのだ。

 そもそも、呼び名がどうだとか、調理方法がどうだとかいう以前に、世間はこの料理自体に大して関心を抱いていないようだ。主婦の手抜き料理や、給料日前の貧乏メニューだと認識しているらしい。大筋で間違ってはいないと思う。しかし、食材とレシピがシンプルだからと言って、僕の大切な思い出までが益体もなしと取られるのは我慢がならない。たしかに「ジャガイモのピカタ」は手抜き料理の王様であり、弁解の余地すらない貧乏メニューだけれど、「追い剥ぎコロッケ」までが同一視される謂れはないのだ。
 そこで、チープでそれなりなイメージを払拭するために、今回は美味しい「追い剥ぎコロッケ」を食べさせてくれるお店を紹介したい。

b0190505_211896.jpg
b0190505_2125886.jpg

 福岡市中央区警固で、筑紫女学園付属中学・高等学校の真裏といえば、最も賑やかな界隈からは少し離れたあたりだ。住宅街と飲食街が隙間なくひしめきあっていて、そのごちゃごちゃとした中に隠れた名店が多い。名前を『バングラデシュ薬膳カレー ハイダル』という。以前にこのブログでも紹介したことがあるのだけれど、何が悪かったのか「追い剥ぎコロッケ」に次ぐアクセスの少なさで、ハイダルの関係者各位には大変申し訳なく思っていた。例によって無断掲載な上、ハイダルや薬膳カレーなどのキーワードで検索しても、このブログはヒットしないのでご存知ないとは思うけれども。

 コロッケうどんやコロッケ蕎麦を食べたことがある人なら頷けるに違いない。コロッケは意外にも汁物にあう。揚げ物には、カレーライスと相性が良いものと、汁物との相性が良いものの2種類がある。前者の代表がトンカツで、後者の代表がコロッケだ。カレーにあうのは、とろみを帯びたルーの水分が衣に染み込みにくいからで、サクサクとした食感はそのままに、具としての”トンカツのカレーソースがけ”を楽しむことができる。
 コロッケはその逆だ。小判形に丸められたジャガイモに出汁が浸透すると、えもいわれぬ美味しさになる。ただし、この場合だと衣が邪魔だ。早く食べないと、ブヨブヨにふやけて食感が悪くなる。さりとて、早すぎるとタネに染み込まない。コロッケうどんがメジャーになりきれない理由がここにある。
 ところが、ハイダルのコロッケ、つまり「追い剥ぎコロッケ」には衣がない。ルーは日本のカレーとは違い、とろみがなくてサラサラしている。つまり、ここで絶妙な組合わせが誕生するわけだ。具材としてエビを使用しているのもいい。プリプリした食感の塊が、柔らかいジャガイモの中で、ちょっとしたサプライズになっている。淡白な身を噛めば噛むほど旨味が染み出してきて、これが火傷しそうなスパイスともよくあうのだ。

 ぜひ一度、店に足を運んで、「薬膳カレーのコロッケのせ」を味わって欲しい。やみつきになること請け合いだ。ただし、ひとつだけ注意がある。間違っても、「追い剥ぎコロッケのせ」を頼まないように。その名で呼んでくれるのは大変光栄だけれども、スパゲティ・ヴェスヴィオの時と同様に、店主のハイダルさんを困らせることになるだろう。
 

[PR]
by TigerSteamer | 2014-01-30 02:00 | 食べ物一般

僕がツーリングクラブを辞めた理由

b0190505_4541112.jpg
b0190505_454962.jpg
b0190505_4541091.jpg
b0190505_454111.jpg
b0190505_4541224.jpg
b0190505_4541218.jpg
使った金額1,000円~1,999円
評価(星4つ)
 今回の記事に関しては圧倒的マイノリティとしての自信があるので、言葉には気をつけなくてはならない。さもないと総スカンをくらう恐れがある。
 なにせ、総勢50人ほどのツーリングクラブの中にあって、このテのイベントが嫌いだと公言していたのは僕だけだったのだから。"地球を人口100人の村に喩えたら"という有名な小噺(?)があるけれど、さしずめ僕はアマゾン流域に生息する小数民族以下の存在で、100人の中にはカウントされていなかった。下手をしたら類人猿並だった。声を大にして主張しても、誰も耳を貸さなかった。サル語を理解する者がいないせいだ。単に空気が読めていないだけで、内心では僕と同じ考えを持っていた者はいたのかもしれないが、それにしてもクソクラエだ。

 僕が嫌いだというのは、オートバイの撮影会イベントだ。比較的メジャーで記憶に新しいものに、阿蘇の草千里で催された「草千里09」がある。巷では、これの小規模なものが日曜日ごとに催されている。主催者は主にオートバイ雑誌で、撮った写真は漏れなく読者参加型イベントのレポート記事として、数ページ渡って巻末に掲載される。売れていない雑誌ほど扱いが大きくなる傾向はあるけれど、平均的な一人当たりのスペースは2cm×3cmで、プロフィール欄の誤字脱字が異様に多い。
 カメラマンが大勢で被写体を囲む撮影会ではなく、大勢の被写体希望者を数人のカメラマンが撮影するわけで、長い長い行列に並ばなくてはならないから、さっさと撮ってもらって美味しい物でも食べに行きましょうというわけにはいかない。僕のこれまでの人生など無駄な時間の集積所ようなものだから、いまさら数時間くらい浪費したところで何ということもないのだけれど、なぜか滑稽なくらい"時間を無駄にしている感"が募る。

 その理由を考えるに、列に並ぶのが嫌というのは確かにあるかもしれない。たとえば、いかに料理が美味しかろうと、ありつくまでに延々と並ばなくてはならない店なら敬遠しがちになる。ただし、こう見えて食べ物に対する執着心は並ならないので、どうしても食べてみたいときは、並ばないでも良い時間帯を探すか、あるいは雨天を狙う。場合によっては、気長に人気が廃れるのを待つのもありだ。
 そして何よりも、写真に撮られるのが嫌だという気持ちが強い。嫌なことを列に並んでまでするのは、さらに嫌だ。最近はますます頭頂部の白骨化が進んできているので、フラッシュが当たる角度によっては(特に夜間は)、まるで後光が差しているかのように頭皮が反応する。そもそも、写真に撮って貰いたいと思えるほど愉快な御面相でもない。オートバイにしたところで、あまり洗ってやる機会がないので汚れ放題だ。長年に渡って酷使してきたせいで、あらゆるところに塗装剥げや小傷がある。ライダー共々、被写体に向いているとは言い難い。

 ライダーは写真を撮られるのが好きだというステロタイプがあるのかもしれない。巷には、オートバイで来店した記念に写真を撮ることを、売りのひとつにしている店がある。画像をホームページに載せたりアルバムに保管したりして、ライダーを呼び込む宣伝材料にするわけだ(必ずしもビジネスライクな考えに基づいているわけではないだろうけれど)。僕はこういった店も、あまり好きではない。だったら行かなければいいだけの話なのだけれど、ツーリングの旗竿代わりに丁度良いのもあり、同好の士と交わりたい気持ちもないではなく、またそういった店で他の客のオートバイを眺めるのは結構楽しいので、ときどき利用する。
 初めて店を訪れる時は、何と言って写真撮影を断ろうか気が気ではない。すんなりと引き下がってくれる場合もあるし、やたらと食い下がってくることもある。中には、遠慮したい旨を伝えた途端、興味を失ったかのように扱いがぞんざいになる店もある。

 ただし、必ずしも嫌だというわけではない。非常にレアなケースだけれど、ごくごく稀に、撮られても構わないと思える店がある。むしろ進んで被写体になりたい。たまたま利用しただけではなくて、その店に縁があって訪れた証拠に、しっかりと印を刻んで帰りたい。結局は店の雰囲気と、そこで働く人達の人柄なのだと思うのだけれど、言葉にしようとすると、その境界線がよくわからなくなる。陳腐な形容詞しか出てこなくなる。
 この茗ヶ原茶寮は、記念撮影を快諾した数少ない店のうちの一軒だ。もし店を訪れることがあったら、僕の言う境界線を探してみてほしい。

 ただし、だからといって、写真うつりが良くなるわけではない。できあがりの写真を見ると必ず後悔する。しみじみと被写体には向いていないことが実感できて、非常に残念だ。
 
店舗情報
茗ヶ原茶寮
熊本県阿蘇市山田茗ヶ原1828-4

[PR]
by tigersteamer | 2014-01-26 11:30 | ツーリング飯

だらしなくって、かなり馬鹿

b0190505_233756.jpg

 老カモシカの6速が逝った。周囲の勧めもあって、ローが壊れたまま乗っている通勤快速セロー225。なかなか慣れなかった2速発進が、なんとか身につき始めた矢先のことだった。
 通勤にスーパーローは必要ない。幾らかかるかわからないので修理には出さない。そのまま乗る、と諦観をもって受け入れられるまでに結構な時間がかかったが、その割り切りが根底から揺らいだ。

 腰下をバラすよりは、いっそ載せ換えたほうが安くつく。そして載せ換えるんなら、なにも今ではなくても構わない。たかが通勤用にスーパーローは必要ないし、乗り潰すまで乗って、いよいよ動かなくなってからでもいい。その頃には新しいオートバイが欲しくなっているかもしれない。そもそも、通勤にかかる費用を浮かせる為のオートバイなのに、修理代に大金をつぎ込むのは本末転倒だ・・・それがマジョリティである修理反対派からの意見だった。
 ところが、ごく一部の人は逆のことを言う。
 ・・・そのセローが好きなら、できるだけ早く修理した方がいい。考えてごらんよ、その28年落ちのセローを騙し騙し、あと何年乗るつもりか知らないけれど、載せ換える時は今と同じ、セル無しキックのみデコンプレバー付きを選ばざるをえないんだろ。その時、ヤフオクあたりで出回っているエンジンに、程度の良いのがあると思うか。ないない、今だってない。今日載せ換えて、明日壊れない保証なんてどこにもない。直すんなら早いうちに割るべきだ。

 故障していることに我慢がならないというわけではない。本来の僕は、壊れた道具を壊れたまま使い続けることに、あまり抵抗を感じないたちだ。昔からそうだった。記事を2回遡ってもらえば、そこらへんについて詳しく書いてある。基本的にだらしない人間で、何かに執着することがない。モノ離れがいいと言えば聞こえはいいが、物を大切に使う資質に欠けているのかもしれない。
 その僕が、これほどに割り切れない気持ちを抱えるということは、おそらくセローは単なる道具ではないのだ。やっと気付いた。いや、気付いてはいた、最初から。

 バカだと思われるだろうか。我が事ながら、後悔しないかと問われると自信が持てない。ずいぶん先になって(たとえば給料日前とか)悔やむかもしれないし、修理代の見積もりを聞いてすぐに、やめときゃよかったと思うかもしれない。ひょっとしたら、中古のセローが1台買えるお値段かも。ただ、このセロー以外のオートバイに乗っている自分をイメージできない。

 もう決めたことだ。セローは修理に出す。それに、1と6に入れないよう意識して走るのは、ズボラでだらしない人間にとって、けっこう面倒くさいことなのだ。
 

[PR]
by TigerSteamer | 2014-01-24 00:00 | オートバイ

素敵な片思い

b0190505_1663850.jpg

 たとえば『プリティーウーマン』は、やりての実業家と娼婦の恋を描いた作品だった。王女と新聞記者の『ローマの休日』もそれにあたる。貴族の男性と娼婦の恋を描いた『娼婦ベロニカ』、良家のお嬢様と画家の卵といえば『タイタニック』もそうだ。『チャタレイ夫人の恋人』『高慢と偏見』挙げていくと数限りない。邦画なら『婦系図』『愛染かつら』、毛色は違うけれど最近では『隠し剣 鬼の爪』もそうだ。古い映画(もしくは時代背景)に佳作が多いように思えるのは、現代の日本から”身分”という概念が薄れてきている証拠だと思う。そこにリアリティが見出せない。身分よりは様々な格差を代用した方がしっくりする。『電車男』がいい例だ。

b0190505_091674.jpg

 キーワードは「身分違いの恋」だ。ハッピーエンドもあれば悲恋もあり、シリアスもあればコメディもある。共通しているのは、二人を隔てる障壁が高ければ高いほど、人の心を惹きつけるということだ。
 こんなテーマは似合わないと思われるかもしれない。そうだろう、自分でもそう思う。なぜ、あえて恋愛映画を引き合いに出すのかといえば、何度も袖にされてきた相手との関係に、新展開が訪れそうだからだ。僕と相手の間には純然たる格差が立ち塞がっていて、これまで何度もアプローチしてきたにも拘らず、たった一つの理由から思いを遂げられなかった。
 初詣で引いた御神籤は末吉だった。良いとは言えないけれど、今年は後厄だから、このくらい控えめが妥当かもしれない。ただし良縁には「叶う。好機を逃すな」と書いてあった。今がそうなのに違いない。一気にがぶり寄って押し倒すのだ。

b0190505_12422627.jpg

 と言っても、相手は人ではない。つき詰めて考えれば、その向こうにいるのは人に違いないのだけれど、残念ながらオードリー・ヘップバーンや松たか子似の美人というわけではない。そもそも女性ですらない。『アナザーカントリー』や『ブロークバックマウンテン』くらい絵面が良いと救われるけれど、実際は腹のせり出した薄らハゲが口ヒゲのおっさんに言い寄る話になってしまう。これでは一部のマニアにしか受けないだろう。

 去年、2度に渡ってマックスフリッツに関する記事を書いた。スタイリッシュな大人のライダーに絶大な人気を誇るアパレルメーカーだ。新製品のライダー向けジーンズを手に入れるために、血の滲むようなダイエットをする話で、悲恋の物語といっても過言ではない。「少し大きめのサイズまで用意しています」なんて思わせぶりな言葉に舞い上がったあげく、大きく振りかぶったラケットでラインの大外に叩きつけられた。無慈悲なホイッスルがこだまし、誰かがカーテンの向こうで「アウト!」と叫ぶのが聞こえた。試着室から出た僕の頭の中には『愛ちゃんはお嫁に』のサビがリフレインしていた。あれは庄屋の息子に恋人をとられる悲恋の歌だ。
 そんな仕打ちにあいながら、僕が『金色夜叉』の寛一ほどやさぐれなかったのは、マックスフリッツと相思相愛であった過去がないせいだ。つまりは片思いだ。相手はダイヤモンドに目が眩んだわけでもない。友達であった事実すらない。つまりは赤の他人であり、最初からすれ違わぬ運命だったわけだ。

b0190505_12411835.jpg

 その憧れの人から、耳寄りな話を聞いた。噂話や受け売りではない、本人からだ。事細かに説明されたわけではなく、文章にして一行か二行、そしてそれっきりだ。まだどこのメディアも取り上げていないはずだ。下手をすると店員ですら知らない話かもしれない。要するに「裏口の鍵を開けとくから、こっそり入ってきて」と耳打ちされたわけだ。なんだか下世話な方向へ話がシフトしたような気がするけれど、僕の頭の中では『君の名は』の頃の鈴木京香で再生されるから、美しい恋物語でないはずがない。何事もなかったかのように涼しげに笑う横顔からは、「本当はわたし、そんなに軽い女じゃありませんから」という凛とした気品が滲み出していて、つまりは「貴方だけよ」と言われたと深読みしても仕方がない。ここで奮わなかったら男じゃない。

 ブログを始めて4年、情報らしい情報を発信するのは、今回が初めてだ。今年の3月にマックスフリッツから、満を待してウエストバッグが発売される。以前ここでも触れたことのある、モンゴルツーリングモデルとみて間違いないだろう。画像からはカメラがすっぽり収納できるスペースとペットボトルホルダー、内蔵型のレインカバーが見て取れる。正確な発売日と値段はわからない。続報が入り次第、お知らせしたい。

b0190505_1663892.jpg
b0190505_1663944.jpg

 アパレルブランドと、オシャレには縁のないデブの恋物語。エンディングで悲恋に涙するか、明るい未来を思い描けるかは僕次第だ。どちらにせよ、これが最後の恋だと思っている。もし万が一、腰に巻いたベルトが届かなかったなんてことになったら目も当てられない。あと2ヶ月、正月太りでたるんでしまったウエストをなんとかするのだ。
 

[PR]
by TigerSteamer | 2014-01-21 16:05 | オートバイ

GB250クラブマン 〜 初めてのオートバイ

b0190505_18235722.jpg

 iPhoneを使い始めてから4年になる。オートバイと同じく、携帯電話も一機種を長く使い続けないたちで、とっかえひっかえを繰り返してきた。しかし、最近は新しい物好きもなりをひそめ、だいぶ落ち着いてきたように思う。変化についていき辛くなったのもある。3GSから4Sに乗り換えてちょうど2年になるけれど、特に不具合も生じていないし、機能に不満もない。当分の間は使うつもりでいた。その4Sを昨年末、ふとした拍子に壊してしまった。

 壊したと言っても、画面にヒビが入った程度だ。タッチパネルに不具合が生じたわけでなし、ただ見にくいだけで、外観を気にしなければ使い続けることは可能だった。僕も当初はそのつもりでいたのだけれど、壊れた携帯電話を修理せずに使うということは、思った以上に自分の評価を下げることに繋がるらしい。
 最初のうちは、こいつを胸ポケットに入れていたおかげで助かったんだ・・・などと、しみじみ語っては笑いをとっていたものの、さも驚いたかのように「壊れてても平気なの?」とか、呆れ果てた口ぶりで「まだ修理してないのか」とか、なにやら人間としての重大な欠落であるかのように言われ続けて、すっかりメゲてしまった。

b0190505_1821171.jpg

 ところが直すとなると、結構な額の修理代を払わなければならない。購入時に勧められた保険に入っていれば、安く済ませることもできたらしいが、もはや後の祭りだ。
 まあ、不運を嘆いていても仕方ない。2年に1度の解約月でもあるわけで、いっそ手放そうかとも思ったのだけれど、スマートフォンというのは大変に便利な代物で、今さら持たない生活には戻れそうにない。ならばということで、これを機に5Sへグレードアップしたわけだ。

 手続きはアッと言う間だったし、その場で現物が手に入ったし、手数料は翌月の電話料金に上乗せして引き落としだったしで、あれこれ考える前にやっておけばよかったと後悔するほどの手軽さだった。
 しかし、いざ持ち帰ってから思いがけず面倒くさい問題が生じた。iTunesやApp Storeで買い物をしようとすると、秘密の質問による認証を求められるのだ。今までとは違う端末からのアクセスなので、パスワード以外の本人確認が必要になるらしい。しかし、なにぶん数年前なので、答をなんと設定したものやら、さっぱり記憶にない。2年前に3GSから4Sへ変更した時にも同じ手間があったはずなのだけれど、それすら覚えがない。

b0190505_491692.jpg

 質問がシンプルなので、回答もシンプルなはずだ。上の候補は小学校のクラスメートが2人、高校の同級生が1人の3択、下はシビックで間違いなかろう。ところが3通りの組み合わせを試しても、全てエラーになる。どれだけ頭を捻っても、それ以外の解答は思いつかない。
 まてよ・・・どこにも自動車なんて書いてない。ただ単に車と言うなら自動二輪も含まれる。初めてのオートバイならクラブマンだ。先輩から譲り受けたホンダの単気筒250cc、自賠責保険とヘルメット代こみで10万円だった。走行距離は5000km、二十年以上前の当時としても破格の安さだ。

 自動二輪の免許証を取得して以来、両手に余る数のオートバイを乗り継いできた。その内の数台については、このブログでも紹介したことがある。それぞれに思い入れがあるのだけれど、最初に手に入れたクラブマンだけは、まったくと言っていいほど良い思い出がない。乗り始めて3日目あたりで、止まっている砂利トラに追突し、フロント周りを大破させてしまったからだ。自業自得のヨソ見運転だった。
 ライトは割れて明後日の方向を向き、ウインカーは根元からもげ、ハンドルはオートレーサーのように曲がり、とどめにトリプルツリーの角度が変わっていた。ブレーキをかけるとエキパイとタイヤが接触する、危険極まりないオートバイになってしまった。
 それでも、修理代を惜しんで半年程は乗っていただろうか。壊れたパーツは針金とガムテープで補修し、ライトはサランラップでグルグル巻きにして出来るだけ夜は乗らないように心がけ、ブレーキをかけない乗り方を徹底した。結局は、あまりに周囲の評判が悪いのと、いくら気をつけても転倒を避けるのは不可能だと気付いて捨ててしまった。若気の至りとはいえ、情けなくて泣けてくる。

 とまあ、モラルの欠如した若者の話は程々にしておこう。そして結局のところ、正解はクラブマンでもなかった。長いこと悩んだ果てに思い出した。前回も同じように苦心惨憺した挙句、シンプル極まりない回答に設定し直したのだった。
 正解は「いない」と「ない」だ。

 俺のバカ。ヒネくれ方が幼稚すぎる。どうにも思考回路に成長の跡が見られない。我ながら、情けなくて泣けてくる。
 

[PR]
by TigerSteamer | 2014-01-17 04:09 | オートバイ

俺たちに明日はない

b0190505_12405545.jpg

 マクドナルドの「クラシックフライ with チーズ」を食した。例によって例のごとく、あてのないソロツーリングの最中に空腹感を覚えて、何の気なしにだ。新商品だそうだから、定番の何の変哲もないカップラーメンよりは多少ましかもしれない。ハンバーガーは注文せずに、あえてポテトとホットコーヒーだけをオーダーした。おやつのつもりだったけれど思いのほか腹持ちがよくて、結局これが昨日の晩御飯になった。
 店頭の張り紙で知ったのだけれど、マクドナルドでは古き良き日のアメリカをテーマにした新メニューをスタートさせたらしい。それにしては大して話題になっていないのは何故だろう。

 ポテトの上にチーズをかけてフォークで食べる。残念ながら見た目は悪い。見本の写真はここまで酷くはなかったけれど、それは他のメニューにもいえる事だ。チーズの上から、さらにベーコン風味のフリカケを散らす。味は思ったほどには悪くない。
 クラシックとは名ばかりで、何かが変わったようには見えないポテトにフォークを突き刺しては、流れ作業のように口へと運ぶ。なんだか腑に落ちないのだけれど、フライドポテトが旧来の物なのではなくて、フォークを使って食べるスタイルがクラシックなのかもしれない。昔のフライドポテトにはチーズがつきものだったなんて話は聞かないし、容器の違いなんてこともないと思う。
 そのうちに、ハッと気付いた。これってアメリカ映画に出てくる、特に安いわけでもないのであろうレストランで、なにもそこまでと思えるくらい素っ気ないウェイトレスが運んでくる、見るからに美味しくなさそうで健康にも悪そうな料理にそっくりだ。

b0190505_22331973.jpg

 たしかシルベスター・スタローンの『コブラ』だったと思う。スタローン扮する凄腕のトラブルシューターが、山盛りのフレンチフライを注文した連れの女性を諌める場面があった。「健康に悪いから程々にしとけ」とかなんとか。そうか、これが古き良き日のアメリカなのか。そう思って改めて見ると、ファミリーレストランなどのフレンチフライとは比較にならないアメリカ臭を発している。アメリカ人になった気分だ。ハリウッド映画のキャストになったような気さえする。

 モソモソと食べ進めていると、いきなり隣のテーブルについていたカップルの男の方が椅子を蹴倒して立ち上がり、ショットガンを天井めがけてぶっ放して、金を出せと怒鳴るのだ。女の方はその横で、ギャアギャアとヒステリックに何事かまくしたてている。僕は何が起きたか理解できずに、呆然として固まっている間抜けなデブの役だ。銃口を向けられて、ようやくノロノロと手をあげる。真上にでなくてLの字に、肘を90°に曲げてゆっくり腕を動かすのがミソだ。あんぐり開けた口の端からポテトをぶら下げて、ジャケットの胸のあたりにひっくり返したチーズソースがべったりこびりついている。ひょっとしたら、構えた弾みに銃が暴発して、ストーリー第一号の犠牲者になるのかもしれない。

 一人でオートバイを走らせている時、僕が脳裏に思い浮かべているセルフイメージは、オーストラリア映画『マッドマックス』に出てきた白バイ警官、ジム・グースその人だ。




 陽気なタフガイで、職務には忠実だけれど真面目ではない。人好きのするタイプには違いないが、相手によってはやっかまれているのも事実で、とりわけ女性の評価は低そうだ。しかし本人はまったく頓着していない。その我が道を行くスタイルが逆にかっこいい。
 それがあくまで理想であることは、自分が一番よくわかっている。実際の僕はグースより格段に値の下がるショボくれたオッサンだ。昨年末からのツキのなさはコメディ映画的で、もう何年も縁のなかった青切符を2枚立て続けに貰ったり、通勤の途中でオートバイのエンジンが止まったり、シートに鳥の糞がべったりこびりついていたりと散々だった。格好良く犯罪者を取り締まるなんて無理な相談だ。行きずりのハンバーガーショップで、山盛りフレンチフライに顔を埋めて死ぬのがお似合いだ。
 この日は気晴らしのつもりで出かけたのに、無理やり現実に引き戻されたような気がした。給料日前だからといって食事代をケチるんじゃなかった。

 げんなりした気持ちで顔を上げたら、向かいのテーブルについていたカップルの男の方が、慌てて顔を背けたのがわかった。おやっと思った。あきらかに怯えが感じられたからだ。どうあがいてもスタローンにはなれない。なりたいとも思わない。ジム・グースだって言い過ぎには違いないけれど、ひょっとするとマックスやグースと敵対する暴走族のリーダーである、トゥーカッター的な威圧感を醸していたかもしれない。

b0190505_1213898.jpg

 真っ黒なオートバイに跨った黒ずくめのライダーなのだから、本人の知らぬ間にダークな空気を纏っていても不思議はない。アウトローぶるのは好きじゃないし、群れて走るのもごめんだけれど、なぜか悪い気はしなかった。撃たれて死ぬだけのチョイ役よりはずっといい。

 すっかり気を良くして出がけに化粧室へ寄った。出すものを出してから手を洗うために洗面台の鏡を覗き込んだら、そこに正視に耐えないクリーチャーがいた。ヘルメットぐせのついた髪の毛はヒジキのようにペッタリと頭皮にへばりつき、普段は隠しおおせているはずの薄くなった頭頂部が丸見えだ。地肌が脂ぎっているところに、バイザーを開け放っていたせいで目と鼻の周りだけが黒く煤けている。さらに寒さのせいで赤らんでもいるから、何色とは言いがたい爬虫類的な色合いを呈している。口の周りはポテトの油にまみれていて、まばらに生えた無精髭にはチーズソースがこびりついていた。立てたジャケットの襟にはたるんだ頬肉が乗っかっており、ムチウチ治療用のカラーを巻いているよう。おまけにズボンの前が全開だった。

 顔を背けたくなる気持ちもわかる。どうやら僕の初出演作はバイオレンスでもコメディでもなく、怪奇映画だったらしい。どう見ても沼から這い出た小太りの河童だ。口の周りについているのがケチャップでなくて、本当に良かった。

b0190505_2582320.jpg

 だからと言うわけではないけれど、もう金輪際、二度とマクドナルドのクラシックフライは食べない。決してまずくはない。でも、チーズのかかっていないポテトの方が、だんぜん美味しいからだ。
 

[PR]
by TigerSteamer | 2014-01-13 12:12 | ツーリング

今年の抱負にかえて

b0190505_1495749.jpg

 本当はもっと長い文章になるはずだった。マックスフリッツ福岡店から電話を貰ったのが11月の末、実際に店を訪れたのが12月の半ばだ。それから半月あまり練りに練って完成した文章が、あまりしっくりこなかった。なんだか親しげに書いてはいるけれど、今のところ僕がマックスフリッツの客であった事実はないわけで、このネタまみれのブログで扱うのに躊躇したのだ。それに、新年早々に去年の話題を蒸し返すのも気がひけた。

b0190505_1495819.jpg

 地道な食制限の果てに増減を繰り返しながら、なんとか数年ぶりの体重2ケタ台には漕ぎつけたが、新製品のジェノイルジーンズは、最大サイズでさえまるで入らなかった。原田駅前変態倶楽部入りの夢は儚く消えた。今年こそは、このウエスト周りをなんとかしたい。
 

[PR]
by tigersteamer | 2014-01-07 13:52 | オートバイ