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日帰りソロツアラーのジレンマ(迷走する不惑編)

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 結果から先に言うと、カップラーメンツーリング(通称 ラーツー)の向こうを張ったフルーツグラノーラツーリング(長いのでFGTと略す)は大失敗に終わった。思い付きを実行に移したことなので、景色の良い場所を見つけるのに手間取ったし、胃の腑を針で突つくような空腹感に苛まれて、なかば投げやりに決めた場所が十年くらい前に物議を醸した、まこと大橋(通称 朧大橋)の袂というのもお粗末だった。食事をするのに手頃な東屋があると思ったら公衆便所だったり、腰を落ち着ける場所を探していて交尾中の猫と鉢合わせたり、そうこうしている間に牛乳はすっかり生温かくなってしまい、グラノーラの舌にまとわりつくような甘みが際立って不快だった。

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 数年前から一部のライダーの間で、ツーリングの密かな楽しみ方として注目され始めたラーツー。旅先で景色の良い場所を見つけ、お湯を沸かして持参したカップラーメンを食すという、極めてシンプルなプランだ。たったそれだけのことで、普段食べているカップラーメンが驚くほど美味しくなるというのは、アウトドアを趣味とする者なら頷けることかもしれない。しかし、登山や行楽の際の食事として選択するのではなく、それ自体を旅の目的に据えてしまうのが、ツーリングライダーの特殊なところだ。以前にも書いたとおり、大事なのは行き帰りの道程であって、目的地は目印の旗竿、食事は旗代りのオートバイツーリングだからこそ成立する。

 確かに面白そうだ。一度くらいは試してみようかと思いつつ、今まで実行に移せなかったのには理由がある。それが日帰りソロツアラーのジレンマだ。せっかく遠方までツーリングに行くのに、食事がカップ麺というのは侘しすぎる。コンビニの軒先で啜るラーメンでも構わないというのは、あくまで結果的にだ。出かける前からカップ麺と決まっていたのでは、さすがにモチベーションが低下する。せめて一泊する時間的な余裕があるならば、昼はカップ麺に留めておいて、夜はキャンプ地で飯盒炊爨とか、ホテルのレストランで豪華な食事とか、地元の居酒屋で土地の料理に舌鼓をうちつつビールで乾杯とか、色々な選択肢が生まれるわけだけれども。
 それに何より、僕はカップ麺が、あまり好きではない。もし今後、日本に食糧難の時代が訪れるとして、何も食べるものがなければ仕方なく口にすることがあるかもしれない。しかし、それはチャップリンよろしく革靴を煮込んで食べた後になるだろう。

 先日、午後から自由に使える時間を得た。久々のオフだ。ここのところ仕事が忙しくて、ゆっくりとオートバイに乗る時間がなかった。あったところで、照りつける夏の日差しに負けてエアコンと仲良しになるのがオチなのだけれど、その日は珍しく穏やかな日和で、ツーリングに出掛ける絶好のチャンスだった。
 朝からバタバタしていたせいで朝食をとる時間がなかった。腹が減って目が回りそうだ。しかし出発前にまとまった物を食べると、途端に汗が吹き出してエアコンのスイッチを入れたくなるに決まっている。眠気にも襲われるだろう。そしたらいつもの自堕落なパターンに嵌るのがオチだ。半日だから、そう遠くへは行けないけれど、どこか見晴らしの良い場所を見つけて、そこで弁当でも広げたらどうだろう。ナイスアイディアに胸を弾ませながら、肝心の弁当をどこから調達するか頭を巡らせていて、ふとラーツーのことを思い出した。

 大自然に囲まれて食べれば、大概の物は美味しく感じられる。ならば、ラーメンにこだわる必要はない。金はないけど時間だけはある学生さんならカップ麺が妥当かもしれないけれど、僕の場合はカップ麺自体が身近な食べ物とは言いがたい。さしずめ、毎朝食べているフルーツグラノーラだろうか。もう飽き飽きなのだけれど、調理の手間がない上に腹持ちが良く、栄養のバランスもとれているので重宝している。そこでFGTとあいなった。給料日前で懐が寂しかったせいもある。

 FGTの失敗要因を考えるに、まず天気の問題が挙がる。その日は暑くはなかったけれど、うすぼんやりとした空模様で湿度が高く、天気が良いとは言えなかった。コンビニで買った牛乳というのも安易に過ぎた。近場で済ませたのも良くない。やはり阿蘇くらいまでは行くべきだ。保冷バッグは必携で、リラックスして食べることを考えれば折り畳みの椅子くらいは持っていったほうがいいかもしれない。

 数々の反省点を踏まえると、次回の開催地はここがいい。

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 画像だけで場所がわかったら凄いぞ
 まあ、それは次回があればの話だけれど。
 

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by tigersteamer | 2013-07-30 11:26 | ツーリング

Serow225 〜 おっさんホイホイ

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 ついさっき、バイク7の駐車場にて。
 僕のポンコツセローのフェンダーあたりを覗き込んで、しきりと首を傾げている店員をみかけた。あまり浮かない顔だ。三十の坂をいくつか越えたくらいだろうか、髪を長く伸ばしている。じきに店員の数は2人に増えた。今度の人は短髪で、年の頃なら二十代の半ばだ。2人とも赤いツナギを着ているから、フロアではなくラボのスタッフなのだとわかる。

 短髪の店員は僕のセローから数歩離れたところに立って、なんとも不思議そうな顔つきで、一回りくらいは歳の違う先輩店員の背中をみつめていた。話しかけあぐねているようだ。何が言いたいのかわかる。わかるけど面白そうだから放っておく。
 そうこうしてるうちに、客が一人つかつかと歩み寄って、短い言葉と共に隣のオートバイを指差した。長髪の店員はハッとしたように視線を移して、ようやく合点がいったようだった。難しい表情を解いて笑顔を浮かべた。短髪の店員が歩み寄って、客と言葉を交わし始めた。

 あの三十代の店員にとって、セローはソッチじゃなくてコッチだったわけだ。ちょっとした勘違いだが、これもジェネレーション・ギャップと言っていいのだろうか。だとしたら、僕のセローは、立派なおっさんホイホイだ。
 

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by tigersteamer | 2013-07-28 18:37 | オートバイ

負け惜しみと言い訳と祝福と

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 世の中に蔓延している「結婚を機にオートバイから降りる」って風潮は何だ。不景気のせい? 持っときゃいいじゃない。また乗りたくなるかもよ? まだ幾らも走ってないんだろうに、ピカピカのR1がもったいないよ。

 このままだと、上の根拠の知れない通念と、僕の個人的な事情であるところの「オートバイから卒業できない」とが等記号で結ばれそうで癪に障る。言っておくけど、結婚できないからオートバイに乗り続けているわけでも、オートバイに乗るから結婚できないわけでもないんだからな。

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 とうとう、この日がきた。おやじライダースクラブのメンバーで未婚者は僕一人になった。何はともあれ、おめでとうK君。成田山の足元に住んでるだけあって、パパになる日も近いな、きっと。
 

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by tigersteamer | 2013-07-27 01:57 | オートバイ

ヒールポーション

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 くはぁ、あづい・・・。あまりに暑いので、今回は文字少なめで。
 こんな日は、涼を求めて山へ向かうに限る。福岡から阿蘇を目指すなら、最初の休憩ポイントは星野村あたりで・・・なんて考えて、あえて下道を選んだのだけれど、じりじりと照りつける太陽とエンジンの熱、おまけに先の見えない渋滞で、まさに灼熱地獄のよう。路側帯の狭い一車線道路で、すり抜けもままならない。普段なら轟々と流れて耳目を楽しませてくれるはずの川も干上がり気味ときた。早くも心が折れそうだ。

 とりあえずは休憩。まだ先は長いから、ちょいと立ち寄れる所がいい。茶園の看板が出ているところなら、何も言わないうちから冷たいお茶がでてくる。キンキンに冷えたグリーンティーの、ほのかな苦味と透き通るような甘さ。これ1杯で生き返る。ただし、飲むだけ飲んで買わずに出るのは、かなりの勇気が要る。
 
場所
株式会社星野製茶園
福岡県八女市星野村8136−1

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by tigersteamer | 2013-07-26 09:54 | ツーリング

絶滅危惧種 "おやじライダー"

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http://www.gizmodo.jp/2013/06/hmd_1.html

 不躾に、こんなことを言うのはどうかと思う。僕のヘソ曲がりをよく知る、このブログのリピーター(いるのか?)でさえ、思わずムカっときて衝動的にブラウザの×ボタンをクリックし、ついでにブックマークから当ブログを削除するかもしれない。しかし、あえてアクセス減を怖れずに言わせていただこう。
 最近の"おやじライダー"はプライドがない。方向性を見誤っている。これは、おやじライダーの大部分をリターンライダーが占めていることと、まるで無関係ではなかろうと思う。

 かつて、おやじライダーは夏の暑さにも冬の寒さにも負けない鋼の肉体と、豊富な経験の具現者であった。熟練のメカニックをしのぐ知識と技術で旅先でのマシントラブルに対応し、地図にすら載っていない抜け道を熟知し、風の向き雲の動きから天候を読み取り、本気で走れば地元の走り屋ですら尻尾を巻くテクニックを持っていた。
 彼らは生え抜きであり、周りの者が四輪に乗り換え、様々な理由でオートバイを卒業していく中で、頑なに、この不安定で不完全な乗り物から降りようとしなかった、言わば生き残りでもあった。若者たちは、おやじライダーを見るたび、「邪魔なんだよオッサン」などと嘯きながら、同時に畏敬の念を感じずにはいられなかった。自分は果たして、あの歳になるまでオートバイ乗りでいられるだろうか。

 それがどうだ。今や、おやじライダーは金にあかせて高級オートバイを乗り回し、高性能のガジェットに依存しきった無能者の代名詞である。メンテナンスはショップ任せで、パンク修理すら覚束ない。そのくせ、安全性にだけは敏感だ。アイスホッケーの選手かと見紛うばかりのプロテクターで全身を鎧い、その上ジャケットにはエアバッグが内蔵されている。グリップヒーターにシートウォーマー、果ては隈なく電熱ウエアを着込んでいたりする。行程はナビの言いなりだ。地図を開くことすら疎ましがる。そして彼らの多くは、それを誇らしく感じている。とても正気の沙汰とは思えない。
 最近の技術の進歩は目覚しい。かつてビデオがラジオスターを殺したように、故障知らずの高性能オートバイが凄腕メカニックおやじを、高性能ライディング・ウェアが全天候型大陸横断おやじを、高性能バイクナビが人間ロードマップおやじを、今まさに滅亡の淵へ追いやろうとしている。

 そして、とうとう行き着くところまできた感が漂う、HUD内蔵ヘルメットのお目見えだ。もし、白くて馬鹿でかいイカ釣り漁船そっくりのオートバイに跨ったタラバガニのような殻付きライダーが、このイイダコのオバケのようなヘルメットを被っていたとしたら・・・かつてオートバイ小僧だった僕は、きっとこう吐き捨てるだろう。

「なんだありゃ、半魚人か」

 そうだ。その感性こそ正しい。自ら転がり続ける魂は、決して本質を見誤らない。しかし、今や醜く成長した似非おやじライダーは心の中で、こう付け加える。僅かばかりの強がりを皮肉に挿げ替えて。

「それって、お高いんでしょ?」

 お幾らくらいになるもんでしょうね。耐衝撃性能はいかがでしょう。一回コケたら買い替えでは割にあわないと思うんですけど。目玉が飛び出るほど高いんじゃなければ、試してみてもよくってよ。
 かく言う僕もオートバイナビの愛用者であり、最近では地図を開くことさえ稀だ。機械いじりはショップに丸投げ。トラブルこそがオートバイの最大の魅力だと捉えていたあの頃には、もう戻れないのだ。
 

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by tigersteamer | 2013-07-18 03:21 | オートバイ

これ、なんだと思う?

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 ホームセンターが好きだという人の話をよく耳にする。日曜大工が趣味なら、木材のコーナーは宝の山に感じるだろうか。家のレイアウトに凝っているなら、家具売り場での「思わぬ拾い物」探しは、自分のセンスを試す良い機会かもしれない。中には工具マニアという理解の及ばない人種もいて、ありとあらゆる種類の工具を、使う使わないは別として買い集めていたりする。

 僕も嫌いではない。世の中には、その専門家でなければ、どう使うのかわからない道具、何のための物なのかわからない道具が結構ある。そういった物を手にとったり、用途を推理したりするのは結構、楽しい。
 これはホームセンターに限ったことではない。十年くらい前に、知人から頼まれてジンガーミシンの特殊なボビンケース(道具というよりは部品だけど)を探し回ったことがあった。結局は見つからなかったのだけれど、ミシンの専門店という今まで興味を持ったことのない物を扱う店で、あることすら知らなかった部品を探す行程は、とても楽しかった。

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 糸巻きを収納するだけの直径数センチの容器なわけだから、ただ丸くて真ん中に芯があればよさそうなものだけれど、あちこちに突起や窓や稼動部分があって、知識のない者が見てもどう機能するのかサッパリわからない。それでいて、そのちっぽけで歪なパーツが、わけのわからない機械細工の中心に、ぴったりとはまるのだから不思議だ。さらに凄いのは、その形が何十年も前から変わっていないことだ。実に男心を刺激する。裁縫をよくしない者にとっても、一見の価値がある。決して大袈裟ではなく、もし人類の叡智を一点に集約したとしたら、あんな形になるのではないかと思える。

 この一見して、わけのわからない物は、普段から関心をもって接しているジャンルにも稀に出現する。つい先日、ライディング・ウェアの専門店でみつけた。使い所としてはオートバイに乗る時に限ったものではないだろう。機能性よりも、ややオシャレが先行しているようにも感じる。尻のポケットだと壊れる原因になるからだろうか。ポケットがない上着もあるだろうし。

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 どう使うか、ご存知だろうか。


答えはコチラ
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by tigersteamer | 2013-07-14 03:50 | オートバイ

フォーといえばガー

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使った金額1,000円~1,999円
評価(星3つ)
 何をやっても長続きしなかっただけなので自慢にも何にもなりゃしないのだけれど、僕の職歴は長い。1週間もたなかったライン工とか、3日でやめた理髪店の見習いとかまで加えると、履歴書にそれ用の紙を2〜3枚添えなくてはならなくなる。中にはネズミ講紛いの会社で空気清浄機を売り歩いていた時期もあり、包み隠さず書くのは憚られるということもある。あまりに煩わしいので転職を控えているくらいだ。

 華々しいキャリアの最初を飾ったのは、何を隠そう僧侶だ。昔から人間関係の悩みを抱えがちなタチで、とりあえず僧籍につけば偉いお坊さんが教え導いてくれるかもしれないと考えたのだ。ところが人伝に紹介された師僧はシベリア帰りの凶状持ちで、最後は殴り合い寸前の大喧嘩をやらかし、その勢いで寺を飛び出した。今思い返すと何が諍いの原因だったのか、とんと思い出せない。
 次いで葬儀屋に就職した。前職のスキルを活かせると踏んだのだけれど、初めて拝命したのは会長の運転手兼付き人という、やたらと拘束時間の長い、要職なんだか閑職なんだかよくわからない業務だった。体育会仕込みの体力と根性、元僧侶という高い(であろう)精神性を買われての人事だった。なぜか次期社長の座も夢ではないような歓待のされようで、次世代のホープと囃された。たかが運転手一人に大層な期待のかけようだと訝しく感じてはいた。これは要するに、ヤクザ映画で言うところの「このオツトメを終えたら、オメエも晴れて金バッジだな」というアレなのだと気付くまで、そう時間はかからなかった。

 この会長という人は、戦後のどさくさにまぎれて商売を興し、一代で巨万の富を築いた知る人ぞ知る立志伝中の人物だった。その割に社員に人望がなかったのは、その輝かしい業績すら疑わしく感じられるほどの、大層な難物だったからだ。まず、筋金入りの人種差別主義者であり、職業差別主義者であり、拝金主義者であり、ヒヒジジイであり、つま先から頭のてっぺんまで男尊女卑でこりかたまっている上にハゲで猫嫌いでもあり、おまけにボケ始めている兆候もあった。
 フェミニストで売っていた僕は、この会長とそりが合わなかった。何度ぶん殴って辞めてやろうかと思ったか知れない。その度にぐっと我慢し続けたのは、僕が筋金入りのヒューマニストでありストイシストであると同時に、まだ若くて右も左もわからなかったから。そして三流大学出の給料にしては破格の高待遇だったからだ。

 その代わりに、太った。ストレスからくる過食症に陥り、大学時代は空手で鳴らした僕の身体は、再就職後半年を待たずして、ミシュラン坊やのように肥大した。会長は僕をブーとかブー太郎とか呼んでは、ことあるごとに扱き下ろした。見るに見かねた上司が新たな人身御供を見つけ、僕と挿げ替えてくれなかったら、僕はあのまま際限なく膨らみ続けて、家のドアから出られなくなっていただろう。悪夢のような半年間だった。
 余談ではあるが(全編余談なのだけれど)、僕の代りを仰せつかった中途採用の人柱は、その後三月程たったある日、会長を乗せた社用車で本社地下駐車場の壁に突っ込んだ。聞いた話によると、センチュリーのフロントグリルがぐちゃぐちゃだったそうだ。何があったのか、原因がなんだったのか、事故を起こした生贄氏がその後どうなったのか、下っ端社員の僕らにはようとして知れなかった。

 その頃、僕が毎晩のように食べていたのがベトナム料理だ。住んでいたワンルームマンションの一階部分にベトナム料理店があったのだ。夜はお酒を出すタイプの店だった。特にその店だけと決めて通っていたわけではなかったのだけれど、毎晩午前様に近い時間まで働いて、職場から自宅まで歩いて帰る道すがらには、開いている店がそこと牛丼の吉野家くらいしかなかった。フォーという麺料理が好きで、必ず2〜3杯は食べていた。トッピングによってバリエーションが増えるラーメンや、うどん・蕎麦の類とは違い、メニューごとに別々のスープが用意されていて、しかもその種類が尋常ではなかった。毎晩食べても飽きなかった。
 腹一杯詰め込んで、すぐに寝るという、食べ物を眠剤の代わりにする悪癖が身についたのは、この頃だ。北京ダックの気持ちがよくわかる。これで太らないわけがない。

 葬儀屋を辞めたとき、もう二度とベトナム料理を食べることはなかろうと思った。一生分のフォーを食べたつもりでいた。トラウマになりそうな苦い記憶と直結していたから、味を思い出すのも苦痛だった。
 それから二十年だ。近所にベトナム麺の店ができたので、久々に食べてみた。麺を啜っているうちに当時の記憶が蘇ってきて、なぜかすべてが懐かしく感じられた。食べ物に罪はない。僕にだってない。巡り合わせが悪かっただけで、周りの誰にも、おそらくは会長にも非はなかったのだ。今頃どうしているだろう。当時は七十代の後半だったから、ひょっとしたらまだ存命かもしれない。調べてまで知りたいとは思わないけれど、少し気にかかった。若かったあの頃は、ひたすら耐えるしかなかったけれど、今の僕なら違う対応ができるかもしれない。もちろん、身についた世間知やら処世術が、かえって邪魔をすることもあるだろうけれど。
 
店舗情報
PHOBAC
福岡県春日市春日1丁目145

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by tigersteamer | 2013-07-10 04:39 | 食べ物一般

真昼の決闘

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※ 画像はイメージです。

 昼過ぎに夜勤から帰ってきまして、自室で寛ぎながら、夜まで一眠りするかなぁと煙草の箱に手を伸ばして、仕事からの帰り道に吸ったのが最後の一本だったことに気がつきました。
 我慢ができないほどの禁断症状がでていたわけでなし、そのまま寝てしまえばよかったのですが、部屋着に着替える前だったので、そのまま買いに出ることにしたのです。財布を尻のポケットに捩じ込んで、サンダルをつっかけて玄関を出た途端・・・  

「キサン、いつ持ってくるとや」  
「だまっとったらわからんめェが」
「・・・・・・」
「大きい声で言わんや、聞こえんめェが」

 凍りつきました。
 バックには低いエンジンのアイドリング音。この音は自動車のものじゃありません。オートバイです。二気筒かな。それも一台じゃありません。他のものも混ざって聞こえますので、正確な台数はわかりません。
 おっかなびっくり、こっそり生垣の隙間から覗いてみます。
 うわ~、暴走族です。いや違うかも。どちらにしろ大した違いはありません。なんだってこんな真昼間から。すかさず泣きが入ります。こんな閑静な住宅街の中にまで入ってくるんじゃねえよ。このくされヤンキーが! 角度の加減ではっきりとはわからないのですが、どうやら数人が一人を囲んでいるようす。詰問口調です。
 流行の少年犯罪でしょうか。カツアゲかな? 三人の見るからにキレやすそうな高校生くらいの少年に囲まれて、これもまたパッと見同様に思える少年がちぢこまっています。仲間割れでしょうか。暴力は振るわれていないようですが、時間の問題かもしれません。
 可哀想だとは思いましたが、なにせ眠いし、割って入って僕が殴られるのはシャレになりませんし、電話で警察に通報するのは単純に面倒臭い。隠れて立ち去るのを待つのはさらに面倒臭い。という具合に、思いつく限りの言い訳を用意して、スルーすることにしました。

 幸い、彼らが争っているのは我が家の表通りに面した門扉の前ではなく、どちらかと言えば道一本挟んだ隣家に近い辺りなので、このまま門扉から外に出て、彼らに背を向けて逆方向に歩けば、何ら問題なくやり過ごすことができそうです。
 何食わぬ顔をしながら、且つドキドキオドオドしているのを見抜かれないように胸を張って。さらに、できることなら彼らの視界に入らないようにと心がけつつ歩き出します・・・大丈夫でした。
 近所のコンビニで煙草とオニギリ、氷菓子を購入し、雑誌数冊を立ち読みしてから自宅へ。家を出てから、かるく三十分は経ちました。二十数年来の愛読誌である週刊プレイボーイの巻頭グラビアを眺めるにあたっては、彼らのことなど殆ど忘れかけてましたが、いいかげん立ち去ったでしょう。念のため、少し遠回りして来た時と同じ道を通って帰ります。最後のホームストレートへと続く角を曲がった途端・・・

 ・・・まだいました。いいかげんしつこいな。

 進行方向上、背中を向けて歩くわけにはいきませんから、顔はしっかり前を向いて、視線は心持ち下向きに無用な刺激を避けつつ歩きます。近所の主婦が、エプロン姿で遠巻きに眺めています。いいから早く通報しろよ。
 正直なところ、家の前まで辿り着いた時はホッとしましたが、門扉をくぐってふと見やった瞬間、彼らの一人が手にしているものが目に入って足が止まりました。

 一気にアドレナリンが沸騰しました。門扉を叩きつけた音に反応して、彼らの視線がこちらに集中しました。不意をつかれたんでしょうか、剣呑な空気は消し飛んだようでしたが、なんといっても多勢を嵩に着ている状況ですから、身構える様子はなく、それがかえって僥倖でした。その場に立ち尽くしている彼らにツカツカと歩み寄り、そのうち一人が手持ち無沙汰に振り回していた物を問答無用で奪い取りました。

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 傘です。今年の初めに、庭で転んで怪我をした祖母へ、母が贈ったプレゼントです。特殊なデザインですので、間違えるはずもありません。杖代わりにも使えるようにと、頑丈なものを選んだのを知っています。

「これはなあ、てめえらが手にしていいようなものじゃねえんだよ!」

 ・・・と言えたら褒めてやってもよかったのですが、正確に言えたのは「これ」まででした。自分の声の、あまりの裏返りっぷりに驚き、おまけに少し震えてもいましたので、最後までつっかえずに言い切れるか心配になったのです。我ながら溜め息がでるようなヘタレっぷりですが、普段大声を張り上げることなど殆どありませんし、暴力とは縁遠い生活を送っていますので、いざとなるとこんなものです。

 家の中に戻って、念のためにおそるおそる傘をもう一度確認します。というのも、過去にこれと同じケースで殴り合いの喧嘩に発展した挙句、僕の勘違いだったという非常にイタい失敗をしたことがあるのです。大丈夫、間違いありません。

 祖母の部屋を覗くと、彼女はちょうど昼寝の時間帯でした。気持ちよさそうに寝息を立てています。大切な物を盗られるような場所に置いておくなと、一言注意を促そうかと思ったのですが、まあいいか、幸せそうですし。
 

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by tigersteamer | 2013-07-07 07:03 | 雑記

虎と鹿

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 我が家のガレージの片隅に鎮座ましますTiger900(トラ)とSerow225(カモシカ)。自然界の摂理に照らすならば、喰う者と喰われる者の関係に他ならないのだけれど、ウチの場合はお互いにケンカすることもなく、上手い具合に棲み分けができている。

 トラは専ら余暇活動専門だ。フルパニアにタンクバッグ、シートバッグ、積載量も豊富でロングツーリングに適している。カモシカは通勤用、たまには林道を走ったり、買い物や近場の散歩に付き合わせることもある。
 TigerのセカンドバイクにSerowという組み合わせは、決して派手さはないけれど、機能美という点で2台並べて悦に入るくらいの妙だ。実際、アドベンチャーモデルやアルプスローダー(垣根がどこにあるのか曖昧だけど)のお供に小排気量のオフ車というのは、組み合わせとして最良だと感じる。「どこまででも行けるオートバイ」と「どんなところでも走れるオートバイ」なわけだから、二つ合わせて完全無欠だ。僕の他にも賛同者はいる(いや、多分)ので、これを機に紹介しておく。いつかこの人と一緒に走ってみたい。

 さて、オートバイ界でトラと言えば、メリデン・トライアンフの時代から受け継がれる由緒ただしきペットネームであり、片やシカ(厳密に言うと、カモシカは鹿ではないらしいけれど)はSRシリーズと並んでヤマハの伝統そのものと言ってもいい。

 この虎と鹿。
 
 とある業界においては、まったく別のものを指すことを御存知だろうか。(僕もこないだ初めて知った)

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 K-POPファンの間では、東方神起のメンバー2人を指す隠語なのだそうだ。特に一部の女性ファンにとっては、虎と鹿が仲睦まじげにジャレあっているところなんかは、卒倒しそうなくらいの喜悦を含んだ光景に映るらしい。肩を寄せ合っているだけで、飯が3杯お代わりできるというから相当だ。

 いやいや、それはもう、リビドーの捌け口というのは人それぞれだし、僕だって虎と鹿を並べてウットリしてるわけだから、理解できないなんて言う資格はないんだけれど・・・

 なんとなく尻の辺りがムズムズするので、これからはガレージの隅と隅に別けて置こうかしら、なんて思ったり・・・。
 

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by tigersteamer | 2013-07-04 01:12 | オートバイ

後続車の恐怖

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 真後ろを走っていると、突然車軸がへし折れて、外れたタイヤがこっちめがけて飛んでこないか、気が気じゃないんです。
 

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by tigersteamer | 2013-07-01 02:43 | オートバイ