カテゴリ:雑記( 23 )

キャプテンへ・・・その後

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 あれから5年。
 肺ガンでもオートバイでも命を落とさなかった僕は、こないだ心筋梗塞(タバコの影響もあるのか)で生死の境を彷徨いました。ついでに、もうすぐ電子タバコ(これを禁煙と言っていいものか・・・)に切り替えて200日が経ちます。

「キャプテンへ」
http://steamer900.exblog.jp/21140078
 
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by TigerSteamer | 2016-06-06 21:50 | 雑記

求ム同好ノ士

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 はっきりと惹かれている自分を自覚したのは最近だ。ひょっとしたら、この時点で目覚めていたのかも知れないけれど、プロモデラー荒木智氏のブログを読んだのがきっかけの1つあることは間違いない。当ブログで画像を使わせてもらう約束をとりつけた去年の時点では、まだ知る人ぞ知る人物だったのだけれど、それからテレビに新聞にと露出が増えて、あっと言う間に有名人になってしまった。なんだか少し悔しいような気もする。

 錆の浮かんだ乗り物が好きだ。かつては稼働していた機械が動きを止めると、時の流れは錆と燻みによって刻まれる。痩せて節くれだった指や深い皺の刻まれた目尻が好きだというのと、少し似ているかもしれない。ひょっとすると職業柄なのかも。人目に触れないところで、ただ静かに朽ちていく車体を無意識のうちに人になぞらえているのかと思うと、なんとなく後ろめたさを感じる。

 対象は年季物が多くなるけれど、決して古いオートバイや車が好きなわけではない。ピカピカに磨かれたビンテージマシンは、僕の興味のわかない趣味の最右翼だ。錆てさえいれば、何でもいいというわけでもない。メンテナンス不足で赤茶けたスポークホイールからは、極力目をそらせていたい。ラットカスタムなどといったものとも、やや方向性が違うように思う。あくまで自然な時の流れに沿って生じたものが好ましい。昨年の末頃に、三瀬峠で偶然に見つけたアンティークショップの話を書いた。実は今でも時々通っている。綺麗に陳列されたガラクタ達を宝の山のように感じることもあるけれど、錆を美しいと感じるのとは根っこが違うような気がする。
 国産車の薄い塗装が、手で触れる先からぺりぺりと崩れて、粉を吹いて剥がれ落ちるのが好きだ。朽ちてもなお硬く尖り続け、ナイフのように捲れ上がった分厚い塗装の感触も好きだ。かろうじて状態を留めた表面を指の腹で押すと、チリチリと軋みながら崩れていく。瘡蓋を剥がす感覚に似ているかもしれない。もちろんイメージするだけで、実際に行為には及ばない。壊れてしまったものは、二度と元の姿には戻らない。

 きちんと説明できるようになるまでブログには書くまいと思っていた。しかし、いくら考えても審美の基準が身につかない。自然な時の流れに沿ってと書いたけれど、それがうまく表現できてさえいれば造形物でも構わない。思わず見入ってしまうような自然のオブジェには滅多に巡り会えないから、むしろ人の手によるものに感銘を受けることの方が多い。

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 世の中には余人の理解が及ばないような趣向があるものだ。ただ単に愛でるだけの人なら珍しくはない。僕はもう一歩踏み込んでみたい。盆栽のように手間暇をかけながら、じっくりと時間をかけて錆を育てる趣味が、僕の知らないところで確立していればいいと思った。しかし、あれこれ調べてはみたけれど、とうとうそういったマニアには行き当たらなかった。熱帯魚ではなくて水草を育てたり、ぷかぷか浮かんでピクリとも動かないマリモを大きくすることに腐心したりする輩もいるくらいだから、錆育成マニアがいてもおかしくはないと思う。

 このブログをお読みの方の中に、目覚めたばかりのビギナーに道を示してやろうと思ったその道の熟練者がおられましたら、メールにて連絡をお待ちしています。ぜひともノウハウを御教授いただきたい。理解されることのない趣味を持つもの同士、錆談義に花を咲かせようではありませんか。
 

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by TigerSteamer | 2015-04-10 22:17 | 雑記

惜念の春

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 桜の花が咲き乱れ、すっかり暖かくなってしまった今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 さて、当ブログでは昨年末より、厳寒のもとでマックスフリッツ製ウォームパンツのレビューをしたためるべく、苛酷なダイエットに取り組んできました。最近は効果も着々と現れ始め、眩暈や嘔吐感を伴わずに履くことができる域にまで達していました。しかし、あと少しが及ばず、今後は寒の戻りにも期待できないことから、今季の実戦投入は不可能であると判断しました。ウォームパンツは来年の冬に向けて一旦お蔵入りし、思いも新たに春からの食欲シーズンに備え、胃腸のウォームアップに専念したいと思います。僕のダイエットを応援して下さった皆様には心からお詫びします。マックスフリッツが、もうワンサイズ大きなパンツを作ってくれたら良かったのですが、こればかりはどうにもなりません。

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 忸怩たる気持ちを吹っ切って、南阿蘇の「みそらやcafe」でこのブログを書いています。甘い物とコーヒーの組み合わせって本当に素晴らしいですね。
 

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by TigerSteamer | 2015-03-24 14:00 | 雑記

お客様より喜びの声(?)

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2014.1.7 ジェノイルジーンズ(size52)

参照:今年の抱負にかえて



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2014.4.1 ハーフレザーパンツ(size52)

参照:「デブでも履けるマックスフリッツ」のテブの範疇に自分が含まれなかったことについて、僕からの返事



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2015.2.3 ウォームパンツ(size52)


 なんとか入った。しかし少しでも力を入れるとハジけ飛びそうだ。あともう少し精進が必要だ。頑張れ俺。
 

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by TigerSteamer | 2015-02-03 17:17 | 雑記

意趣返し

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 カフェ・ド・パリのマスターからの厳命を帯び、書店で培倶人を探した。立ち読みではなく、必ず買うようにとの仰せだ。20代の頃はMr.バイクと、時々Goggleを購読していたけれど、いつの頃からか読まなくなった。オートバイ雑誌を買うのは数年ぶりだ。ひょっとしたら十数年ぶりかもしれない。

 この冬行きたいライダーズカフェというタイトルで特集が組んであった。ド・パリはライダーズカフェではなかったような・・・と思いつつページをめくった。
 大人の隠れリビングとは言ったものだ。意図して隠しているのだとは思えないけれど、確かに人目にはつきにくい。プロカメラマンのファインダーを通すと、見慣れた店内もどこか違って見えた。ただし、ムシリソースに限ってなら、僕の方が美味そうに撮れている自信がある。
 マスターらしい、なかなかお茶目なことが書いてあった。「本誌を見せればお代わりコーヒーを1杯サービス」してくれるんだそうだ。そもそも、コーヒーのお代わりで金を取られた覚えがない。黙っていても注いでくれる。いずれにしても、冬のツーリングライダーには、大変ありがたい気遣いだ。

 オートバイには大きな荷物を入れるスペースがない。もし、パニアケースやタンクバッグを持っていないなら、かさばる雑誌を鞄に入れて持って行く必要はない。モバイルでこのページを表示して、マスターに読ませるだけでいい。苦笑いしながら、空のカップをコーヒーで満たしてくれるだろう。
 

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by TigerSteamer | 2014-12-31 17:39 | 雑記

年老いた父

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 阿蘇山田牧場の敷地内に鎮座する1台の小柄なトラクター。マッセイハリス社製TE20は1946年イギリスに生まれた。彼はその基本的な構造をあますことなく子らへと伝え、それは今もなお全ての子孫たちに脈々と受け継がれている。言わば父親的な意味を担う名機だそうだ。
 もう動かない彼の横に佇んで、はるか遠い時代に思いを馳せると、僕の知らない昔の話が聞けたような気がした。年老いた父親はその仕事を終え、自分の働いた牧場で静かな眠りについている。
 
場所
山田牧場
熊本県阿蘇郡西原村大字小森1843

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by TigerSteamer | 2014-10-18 09:03 | 雑記

風間深志氏からの手紙

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by TigerSteamer | 2014-06-24 01:37 | 雑記

「デブでも履けるマックスフリッツ」のテブの範疇に自分が含まれなかったことについて、僕からの返事

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 半月ほど前から緩やかに制限を加え始め、ヨーグルトとフルーツのみの夕食に切り替えて今日で5日目になります。
 朝は普通に食べて(あくまで普通に)、昼はおにぎり2個と汁物、夜は脂肪ゼロのヨーグルトとフルーツだけ。今夜は摩り下ろしリンゴと混ぜてみました。一応の充足感は感じるものの、炭水化物による満たされ具合とは全然ちがいます。そもそも、僕のようなブルーカラーの食事ではありません。

 重さを欠いた夕食は一時の気休めにはなりますが、乾いた砂が水を吸うように、瞬く間に胃の腑から消えてなくなります。以降は「茶腹も一時」を撚り合せて空腹感と戦います。こんな時は早く寝るに限るのですが、夜中に目が覚めてしまうと地獄です。ひたすら目をつぶって眠ることに集中するため、ブログを更新する余裕がありません。
 その代わり、毎朝のごはんが楽しみになりました。もう、すっごく楽しみです。朝ごはんのために生きていると言っても過言ではないのです。もちろん知ってはいたけれど、玉子ごはんと味噌汁がこんなに美味かったなんて。

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 首尾よく痩せられたら、自分へのご褒美にコレを買うのです。マックスフリッツから先ごろ発売された、オーナーデザイナー佐藤義幸氏が総てのメタボリック中年へ垂れたもうた慈愛と温情と博愛精神の賜物。たとえピチピチでも膝が曲がるよう、後ろ半分はストレッチコットンでできているという、いじましくも涙なしでは語れないウエスト90cm(ちなみに僕のウエストは103cm)のハーフレザーパンツ、通称『デブでも履けるマックスフリッツ』。どうかその時まで、売れ残っていますように。
 

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by TigerSteamer | 2014-04-01 04:00 | 雑記

キャプテンへ

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 趣味は何だと問われると、オートバイツーリングと食べ歩き、と答える。ただし、この2つは僕にとって、ほとんど同じものだ。たまに第3の趣味ができるけれど、早ければ3日でリストから脱落するので、ブログのネタ以外では人前で公言したことはない。読書や映画鑑賞を挙げていたこともあったけれど、前者は生活と一体化しすぎているし、逆に後者は観たい作品がある時だけの付き合いだから、それらを趣味と言っていいものかどうか。

 3年ほど前までは、禁煙をリストに加えていた。真面目に答えているわけではない。斜に構えたジョークとしてだ。なにぶん自嘲気味なのでウケた試しがなかったけれど、趣味と言っても構わないくらい何度もチャレンジしてきたのは事実だ。朝に決意して夕方には挫ける程度の遊びから、飲み薬やパッチを用意して臨む計画的なものまで、数えきれないくらい挑戦し、そして失敗してきた。最後は3年前で、経験した禁煙の中では最長となる200日と少しを記録した。そして、それっきり趣味の欄から外した。
 3年前の今頃、Twitterのタイムライン上に気になるツイートを見つけたのがきっかけだった。思わずニヤリとした。なかなかヤニ臭いユーモアだ。

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 この竹田津敏信という人は、エイ(エイは木へんに世)出版から今も発行されている「ライダースクラブ」というオートバイ雑誌の、当時の編集長だった。当時の〜だった、という書き方をするからには、今では違うわけだ。僕はライダースクラブの読者ではないし、雑誌の編集者に興味をもったこともないので、どういう経緯でフォローするに至ったのか思い出せない。おそらくマン島TTレースに挑戦した日本人ライダーの伊丹孝裕氏を先にフォローしていて、その繋がりでだったように思う。
 僕との接点はまったくないので、人物について詳しく触れるのはやめておくけれど、ネットに散見する記事やTwitter上のやりとりから、名物編集長とでも呼ぶべき人物であることを知った。同じ業界人だけにとどまらず、友人知人に読者までをも巻き込んで、常に楽しげな人の輪の中心にいるのが容易に想像できた。ついでに、前出の伊丹氏を含めて僕と同い歳だった。その竹田津氏が禁煙をするというので、面白半分で便乗したわけだ。
 僕とは違って、本格的に禁煙するのは初めてのようだった。物書きという仕事の性質上(物書きじゃないのでわからないけれど、たぶん)、一度身につけた喫煙習慣を捨てるのは並大抵ではなかっただろう。ツイートには深刻さが窺える様子はまるでなくて、それがライバル心に火をつけた。禁断症状の苦しみを知る僕としては、やっかみが半分以上だったのは認める。

 一人でじっと我慢するより、仲間がいたほうが捗るというのは本当だった。それがたとえ縁もゆかりも無い他人だったとしても。いやむしろ、他人だったからかもしれない。ヒネ者気質の僕としては、身近なところにライバルを置かない方が良かったのかもしれない。

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 タイムライン上に表示された、このツイートを見た時は、一緒に快哉をあげたい気分だった。僕が禁煙を始めたのは数日遅れだったので、一緒にというのは正確ではないけれど、まもなく同じ日数をクリアするのは間違いなかった。もっと大騒ぎしても良さそうだけれど、禁煙200日目を告げるツイートは一言だけだった。少し肩透かしをくらったような気がした。ゴールなどないことを考えれば、それで当然なのだけれど。

 そして、それから一ヶ月も経たないうちに、竹田津氏は故人となった。新型オートバイを取材している最中の事故だったらしい。
 死を悼むという感じではなかったけれど、数日先を行く目標だったし、勝手に連帯意識を育んでいた相手だったので、いきなりの訃報はショックだった。肺癌の原因No.1であるタバコをやめてオートバイで命を落としたわけだから、皮肉めいたものを感じなかったと言えば嘘になる。ただ、僕の最後の禁煙が失敗したのは意志薄弱のせいであって、竹田津氏の死とは関係がない。どう取り繕っても嘘くさくなるけれど、本気でタバコを止める気はなかった。所詮は趣味だったのだ。

 今またタバコを止めようと思う。お金がもったいなくなったのが動機だ。なんだか今度は成功しそうな気がする。ついこないだダイエットをしくじっておきながら言うことじゃないけれど、ブログ用のネタではない証に、独りよがりになるのを承知で故人を引き合いに出してみた。どこかで見ていてくれよ。
 

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by tigersteamer | 2013-09-25 04:39 | 雑記

君も秘密結社に入らないか

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 アパレル関連の会社に勤める若い女の子と、英会話教室を経営する友人の三人で飯を食いに行った時のことだ。

 料理をあらかた平らげて、満腹感にひたりながらとりとめのない会話を交わしていた。会話の主導権を握っているのは、主に英会話教室の社長だった。大手の英会話教室が倒産した時の顛末から、会社を運営する上での苦労話まで、聞くとはなしに聞いていると、何かの拍子に突然話が変わった。ふと見ると、社長の視線は、ニコニコしながら相槌を打っている女の子の胸元に注がれていた。
 事前からギャルだギャルだと騒いでいたと思ったら、さてはこのエロオヤジ・・・いやまて、実際に見たわけじゃないから断言はできないけれど、彼女はそれほど立派なものは持っていないように感じる。ひょっとするとマニアックな趣味なのかしら、などと邪推していると、どうやら様子が違った。

「それって、※※※※?」
「はい、よくわかりますね」
「なんぼした? 100万位?」
「えーっ、そんなにしませんよ」
「いやいや、そんくらいするって。ダイヤやんかそれ。何カラットくらいあんの」
「プレゼントなんでよくわかりませんけど、でも100万もしませんよ」
「その指輪は※※※※※?」
「アハハ、よく知ってますねー」
「高かったんちゃう?」
「これもプレゼントなんで・・・」
 この男は副業でアクセサリーの行商でもしているのかと思った。そんな僕の視線に気がついたのか、真顔で「そんなん常識やで」などと言う。せやからいつまでたっても独り者やねん・・・暗にそう含められているような気がして、少し引け目を感じた。

 昔からおしゃれには疎い。特にアクセサリーの類にはまるで興味がわかない。15、6年ほど昔だろうか、京都で勤め人をしていた頃に、職場の女の子からアン・クラインの時計が欲しいとせがまれて、クリスマスまでの一月ほどを、足を棒にして探し回ったことがあった。
 アン・クラインをアンクル・ラインだと聴き間違った僕は、持ち前の思い込みの強さで、これを読んで字の如く、足首の線を美しく見せるためのアクセサリーだと信じ込んだ。足首につける腕時計、足時計とでも言おうか、およそ実用性のなさそうな物体をイメージしつつ、ファッション業界も行き着くところまで来たなと、妙に得心した気分だった。
 そういえば、何かの雑誌で見たことがあるような気がする、と、ありもしない記憶をでっち上げつつ下心で胸をいっぱいにした僕に、京都の冬はひたすら厳しかった。当時は稲垣潤一の「クリスマスキャロルが聞こえる頃には」が流行っていた。あの曲を耳にするたびに、今でも心が痛い。

 その後も暫くは、高級ブランド品の話で盛り上がった。社長は、ロレックスが欲しいなどと言う。いや、いまどき腕時計なんか要らないでしょ。携帯電話についてる時計でいいじゃない。そう口を挟もうとして、彼が愛しげに手首をさすっていることに気がついた。まるでそこにロレックスが巻かれているような仕草だった。自分にまるで関心がないからといって、他人にまでそれを押し付けるのは気がひけた。立場が逆ならば、なおのことよくわかる。誰が何と言おうと、好きなものは好きなのだ。
 夜遅くまで頑張って仕事してるんだし、なんと言っても一国一城の主だ。自分へのご褒美に買ってもいいんじゃないだろうか。それに、彼の良くいえば日本人離れした、悪くいえば東南アジアの悪徳プロモーター風の顔立ちには、ロレックスのもつある種のイメージが似合うような気がする。できれば金無垢で大粒のダイヤが埋め込んであるようなのがいい。

 自宅に帰った後も、暫く腕時計のことが頭から離れなかった。ロレックスとはいわないまでも、僕も腕時計くらい高価な奴を持っていてもいいような気がする。学生の頃に、どうしても欲しくて衝動買いした腕時計を、引き出しに放り込んだまま使わなくなって何年も経つ。NASAの最新技術を応用した絶対に狂わない時計(といいつつ1年でキッチリ5分狂う)という触れ込みで、あれはあれで結構な値段だったものの、今僕が買おうとしているのとはだいぶ違う。
 そうだ。僕も腕時計を買おう。そう思い立ってはみたものの、なんとなくしっくりこない。僕が欲しいのはロレックスのような、一種のステータスシンボルではない。なにかそれに代るようなブランド物でもない。
 頭を悩ませるうちに、子供の頃、憧れていた時計があったことを思い出した。昔はよく雑誌の広告などで見かけたのに、最近ではとんとお目にかからない。

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 秘密結社フリーメイソンの時計。僕が記憶しているのは、これよりもずっと安っぽいデザインだったけれど、間違いない。僕が手にするとしたらこれしかない。
 ところがおかしなもので、長年培った価値観というものは、容易に揺るがない。もし仮にただで手に入るなら、一生物だと思って大切にしよう。死んだら棺桶に入れてもらって、火葬場で一緒に焼いてもらおう。そこまで欲しいと思いながら、自分の金を出す気にはならない。こんなものに散財するくらいなら、他にもっと優先順位の高いものが幾らでもあるような気がする。
 そこで、誰か僕にプレゼントしてくれないだろうか。高価なものでなくて構わない。できれば同じのをお揃いで買って、一緒に秘密結社ごっこができたら楽しいに違いない。ソロモンの神殿を信奉する団体の、神秘と謎に包まれたシンボルだ。たとえどんなに遠く離れていても、この腕時計を身につけてさえいれば、なにかスピリチュアルな導きで繋がっていられるに違いない。

 考えるだけでワクワクした。思わず自分の手首をさすっていた。まるでそこにフリーメイソンの時計が巻かれているような気がした。これで今日から僕もフリーメイソンのメンバーだ。唐突な思いつきに、大人気なく高鳴る胸を押さえきれないでいる自分に気付いて、なんだか急速に醒めた。
 どうやら僕は、根本的に高級ブランド品とは縁のないタチのようだ。
 

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by tigersteamer | 2013-09-09 03:06 | 雑記