カテゴリ:ツーリング( 57 )

くせえ、反吐のにおいだ。

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 1週間ほど前から、身の回りのどこかで、ほのかな臭いを感じることがあった。感じた一瞬の後には消えていて、陽炎のように正体がない。嫌な臭いではあるのだけれど、どこか親しみ深いものも感じていて、それでもなお鼻につく悪臭ではある。一番似ているのはオシッコだがアンモニア特有の刺激臭はなく、汗の臭いのようでもあり手垢のようでもあり、とにかく得体が知れない饐えたような臭いだ。
 その正体がやっとわかった。常日頃から愛用しているマックスフリッツ謹製ウエストバッグ、モンゴルツーリングモデルだ。思えば2014年2月に購入して以来、雨の日も風の日も遊びにも仕事にも1日と欠かさず連れ回して、たったの一度たりとも洗ったことがない。収納物は多岐にわたる。食べ物を入れたまま数週間にわたって忘れていたこともあるし、腰痛対策で常備しているバンテリンの蓋をキッチリ締めていなくて、中身が染み出したこともあった。パーキングエリアのトイレで、腰に巻いたまま用を足そうとし、誤って滴をひっかけたことがないとは言わない。色が黒なのでわからないだけで、相当汚れているに違いない。

 こびりついた汚れを落としたいのだけれど、どうなんでしょう。ネットに入れて洗濯機で回してしまっていいものでしょうか。ペットボトル入れの内張りとか、剥がれてしまわないかしら。 注意事項があれば教えていただきたく・・・
 


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by TigerSteamer | 2015-10-26 23:24 | ツーリング

日出ずる処の研究

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 スタート地点の視察に行ってきました。今年はここから走り始めます。
 長期に渡るメンテナンスを終え、エンジンオイルと消耗品を交換し、オートバイナビのマップを更新しました。千里浜で皆さんに会えるのが楽しみです。そうそう、去年1年の酷使に耐えて、鼻を突くような異臭を放ち始めていたコイツを初めて洗濯しました。もう準備は万端です。

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by TigerSteamer | 2015-04-04 22:37 | ツーリング

SSTR2015 受付開始

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 忙しさにかまけてブログの更新をサボっている間に、SSTR2015の参加受付が始まっていた。日本列島の太平洋側(及び瀬戸内海の本州側)をスタート地点とし、日の出から走り始めて、日の入りまでに石川県の千里浜を目指す。日本を股にかけた、大変にユニークなラリーだ。往復2000kmをとんぼ返りの強行軍で臨んだ前回に引き続き、今年も参加するつもりでいる。しかし、なにぶん3ヶ月先の見通しがつかないので、実際に申し込むのは締め切り寸前になるだろう。

 応募要項を読むに、少しルールブックの変更があったようだ。前回は、ゴールまでに経由した道の駅のスタンプと、神社のおみくじの数によって順位が決まっていた。今回は完走の条件に組み込まれるだけで、順位には影響しないようだ。おみくじがなくなって、パーキングエリアのスタンプが加わったのは、僕のような遠方からの参加者に配慮した結果なのだろう。
 じゃあどうやって得点を決めるのか・・・という謎は、新ルールを読み進めるうちに解けた。どうやら「順位」という要素が丸ごと削除されたようだ。前回の大会終了後に、一部の参加者からルールに関する不満が出ていたのは知っていた。公道でレースをすることに対する安全面での配慮が云々・・・とか、そんな内容だったと思う。今回はそれらの意見を受けて、レースとしてのRallyから、元々の意味である「集まってくる、集結する」に近いものへと方向修正された。

 事前にテーマを決めておくというのは前回と同じだが、今回はそれに加えて、完走後に感想文を書かなくてはいけないらしい。ラリー終了後のセレモニーから上位者の表彰式がなくなった代わりに、参加者の紹介という項目が追加されていた。面白いテーマを設定して、それに添った行程を踏んだ者は、ここで紹介されるようだ。
 なんとなく目黒の秋刀魚的な改編ではある。きっと賛否両論あるに違いない。しかし、あくまで順位はオマケであって、競うべきは他のライダーではない。競争相手が太陽だという点には変わりがない。
 その他、完走祝賀会での立食パーティーがなくなり(各々が宿泊施設で食べる)、セレモニー自体も翌日のプログラムに組み込まれている。これを惜しいと感じるかどうかだけれど、僕の場合はそれほどでもない。あのカオスっぷりを考えれば、妥当なような気がする。

 2015ではサンライズ・サンセット・ツーリング・ラリーを、本来のやり方で楽しんでみようと思っていた。前回は大会とは関係のないところ(ふぐの子糠漬けとか、納豆とか)で、ひとり盛り上がり過ぎていた。なんとか完走できたことで、アクシデント(寝過ごしとか、チケットの紛失とか)さえなければ、充分な余裕を持って間に合うことが証明された。最大の心配事はクリアしたわけだから、今度は真面目にチェックポイントを回って点数を稼いでみようと思っていたのだ。2ヶ所しか回れず、ビリ同然だった僕が言うのもおこがましいけれど、その点から言うと少し残念ではある。

 上位入賞を目指して分刻みのスケジュールを組み、食事する間も惜しんで走った人がいた。そういう層から見ると、今回のルール変更は物足りないと感じられるだろう。中には参加を見合わせる人がいるかもしれない。
 あらためてrallyを調べてみると、辞書にはこうあった。
自動詞
1a〔+前置詞+(代)名詞〕(援助などのために)〔…に; …の周りに〕寄って[集まって]くる,はせ参ずる,集結する 〔to; around,round〕
b〈散り散りになった軍勢・集団などが〉再び集まる,再び勢ぞろいする; 集合する.
2a元気を回復する.
 まだ歴史の浅いイベントだ。壊しては作り直し、何度でも練り直して、より良いものへと成長して欲しい。仮に今回は去る者がいたとしても、きっと次回は戻ってきてくれるだろう。
 

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by TigerSteamer | 2015-02-23 02:53 | ツーリング

快適な夜のために



 忙しい日が続いたりすると、オートバイを盗まれる夢を見ることがある。深層心理が脳に訴えかける、一種のサインなのだと思う。これは通勤ライダーだった頃にはなかったことだ。すこやかな眠りのために、今日はオートバイに乗ろう。寝る前に見た動画が僕の尻を蹴飛ばした。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-25 06:10 | ツーリング

あんぱん遥かなり

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 明日こそは必ずオートバイに乗ると固く決意して床に着いたにもかかわらず、目が覚めたのは昼前だった。一応、午前7時に目覚ましをかけていたのだけれど、久しぶりの休みだということもあって、つい二度寝の誘惑に屈してしまった。
 どんよりと曇った空が、さらに気を滅入らせた。午後から雨になるらしい。晴れていれば諫早方面に出かけるつもりだった。しかし、目的地を変更するのが得策だ。僕は雨の日のツーリングが苦にならないタチなのだけれど、この時期は別だ。インフルエンザも流行り始めたことだし、仕事に支障が出ない程度に自重せねばならない。

 幾つも代替プランが浮かんだけれど、思うところあって先日もブログに書いた「カフェ食堂 Nord(ノール)」へ行くことにした。iPhoneの天気予報アプリ(あまりアテにはならない)で調べたところによると、本格的に天気が崩れるのは15時以降らしい。往復で100km程度だから、時間にして2時間強。オートバイなら降り始めまでに行って帰ってくることができる。くどくどと前置きが長くなるのは、それが出かけるための言い訳だからだ。4輪で行けば雨は問題にならないのだけれど、そこはあえて選択肢に含めない。
 前回、おみやげとして「バター入りアンパン」を4つばかり購入した。ちょっとイメージしにくいかもしれない。生地にバターを多めに練りこんであるとか、名古屋名物のアンバタなどとは違う、アンコの上にバターがひとかけ乗ったパンだ。これが思った以上のヒットだった。食べる前に軽くトースターで加熱すると、溶けたバターのコクが全体に染みわたって、えもいわれぬ美味しさになる。餡好きが唸る味だ。ただし、カロリーの高さは想像するまでもない。ダイエット中の身としては躊躇もするけれど、その分は他で調節するしかない。

 なかなかの人気メニューらしく、初回の訪店時は既に売り切れていた。午後3時くらいだっただろうか。前回は開店時間に合わせたのでありつけたけれど、オープンと同時に店内を満員にした他の客のことを考えると、大量に購入するのは憚られた。考えようによっては、今日は絶好のチャンスだ。天気が悪いということは、普段に比べると客足も鈍るに違いない。買い占めると言うと大袈裟だけれど、少し多めに買っても迷惑にはならないのではないかと踏んだのだ。
 期待に胸を躍らせ、喜び勇んで出発した。行き当たりばったりではあるけれど、我ながら名案だと思った。店に着くまでは・・・。

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 むべなるかな。念には念を入れ、(それが普通なんだけど)定休日を確認しての訪店だったにもかかわらず、ノールは閉まっていた。ショックはなかった。もうこのオチには飽きた。マンネリもいいところだ。
 最近は、こちらの期待が高ければ高いほど、店が休みの日に当たる確率も上昇するような気がする。年が明けても、まったく改善の見込みはなさそうだ。

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 ノールは諦めがついても、一度燃え上がったアンパン熱は冷めきらない。いかにも惜しい。このまま素直に帰途につく気にはなれなかったので、そのまま最寄りのパン屋に寄った。前にも何度か利用したことがある店で、「CLOUD(クラウド)」という。客の評判は悪くないし、素朴な味で本来なら好ましいはずのアンパンも、タイミング悪く既に冷たくなっていたのもあって、ことさらにコレジャナイ感がつのった。

 仕方ない。雨に降られる覚悟で、もう一軒だ。福岡市西区石丸に「パン工房 Nohmi(ノーミ)」という店がある。名前が似ているのは偶然だ。Nordはフランス語で北を指す言葉で、Nohmiは店主の能見誠氏の苗字からきている。自宅からも職場からも遠い上にツーリングの目的地にするような立地でもないので、滅多なことでは口にできないのだけれど、僕はここのアンパンの大ファンなのだ。
 たしかノーミには、ノールと同じ糸島市に支店があったはずだ。近いうちに尋ねようと思いつつ、まだ行ったことがないのを思い出した。

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 雲は分厚く垂れ込め、もはや一刻の猶予もないように見えた。しかし、距離すれば15kmほどだ。やたらと幹線道路ばかりを走らせたがるGoogleナビでその距離ということは、かなり短縮の余地があるということでもある。時間的には苦しいけれど、まだ何とかなる。思い切って足を伸ばしてみることにした。

 勢いで出発してはみたものの、残念ながらノーミでもアンパンにはありつけなかった。売り切れていたのではなくて、メニューになかったのだ。
 ノーミ本店の売り場面積は狭く、品揃えもアンパンやメロンパンなど、昔ながらの菓子パンが主だった。こちらの支店は広さもそこそこで、チーズやウインナーなどをあしらった調理パンが目立った。同じ店がもう1軒というより、2店で補い合う関係なのかもしれない。アンパンは食べ損なったけれど、代わりに購入した練乳パンが美味しかったので良しとしよう。

 山もなくオチもない展開で申し訳ない。実はもう少し続きがあるのだけれど、次回へ続くことにして一旦〆る。復路で雨に降られ、濡れ鼠になったせいか、なんだか寒気がする。明日は(というか今日は)仕事なので、今夜はパブロンを飲んで寝ることにする。おやすみなさい。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-14 20:49 | ツーリング

12月28日

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 営業は27日までだったらしい。閉めるのが早すぎるとは思う。新年は7日からだそうだから、よそに比べるとだいぶ遅い。ただ、この商売気のなさは嫌いではない。自分達のペースを守って、末長く店を続けて欲しい。
 来年こそは、このめぐり合わせの悪さをなんとかしたい。厄年はとうに明けているので、万事がスロースターターな僕とはいえ、そろそろ復調してもいいはずなのだ。

 目当ての物は手に入ったので良しとする。来年はいいことがありますように。

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by TigerSteamer | 2014-12-28 11:22 | ツーリング

蛮勇の報い

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 写真なんか撮ってる場合じゃなかった。まだなんとかなりそうな気がしないではないけれど、腰痛持ちに無理は禁物だ。諦めてロードサービスを呼びます。みんなありがとう。さようなら。往路は平気だったのに、たった2〜3時間の降雪で、辺り一面が雪景色に変わってしまった。冬の三瀬は恐ろしい。
 

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by TigerSteamer | 2014-12-21 16:20 | ツーリング

三瀬峠の呼び声

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 職場で書類仕事に精を出しながら、女性職員の井戸端会議を聞くとはなしに聞いていたら、三瀬峠のことが話題に上っていた。とっ散らかりがちになる会話を纏めて要点だけを抜き出すと、こういうことらしい。屋根に花壇のある店があって、そこのパンがとても美味しい。天然酵母を使用しているらしい。他にはピザなどの軽食が揃っており、買ったものは店内で食べることができる。お店は設計からすべて手作りで、とても味がある。優しそうな奥さんとは対照的に、店主はホームレスのようで一見とっつきにくいが、実はとても親切で人好きのする人物だ。
 右に左に蛇行する話を追いかけるうちに、仕事の方はすっかりお留守になっていた。どっと疲れた。

 普段なら気にも留めないのだけれど、三瀬峠とあっては聞き流すこともできない。あそこらへん一帯はオートバイで散々走り回ったけれど、そんな店があることは露ほども知らなかった。もっとも、ここ1年ほどは御無沙汰していたから、ひょっとすると新しくできたのかもしれない。屋根の上に花壇があるというのも想像しにくい。先日亡くなった作家の赤瀬川原平氏は、自宅の屋根にニラを植えていたそうだ。うろ覚えだけれど、新聞か何かで写真を見たことがある。瓦の間にビッチリと繁殖したペンペン草をイメージしかけて、慌てて頭の中から追い払った。女どもが騒ぐからには、そんな地味な見た目ではないはずだ。色とりどりの花が咲き乱れ、チョウチョが舞い飛んでいるに違いない。
 幸いにも、次の日曜日は何も予定が入っていなかった。ここ数日の冷え込みから考えて、早晩にも道路が凍結することは目に見えていた。ツーリングがてら探しに行くなら今しかない。

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 ひと口に三瀬と言っても馬鹿にできない広さがある。屋根の上に花壇があること以外、店の名前すらわからないわけだ。てっきり難航すると思っていたのだけれど、拍子抜けするほどあっさり見つかった。名を「屋根に花壇のある店」という。そのまんまだ。佐賀市三瀬村と聞いていたけれど、正確には限りなく佐賀に近い福岡市内だった。おまけに、ここには何度か来たことがあった。なぜ記憶に残らなかったのかといえば、いつも閉まっていたからだ。土日のみの営業らしい。今年の春に配置換えがあるまで、業務の内容から日曜日に休みが貰えなかった。僕の場合、お店の印象は食べた物と直結しているから、うまくタグ付けができていなかったのだ。

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 時節柄、花壇というよりは手入れを怠った芝生のようだった。曇天とあいまって寒々しい印象を受けたものの、店内は薪ストーブが燃え盛っていて、自然志向を基調としたログハウス風の造りが、目にも体にも心地良かった。店主は山小屋の主人といった雰囲気の優しげな男性で、ホームレスに例えた同僚の無礼を心の中で詫びた。ただし、パンもピザも話どおりの美味しさだったから、店主の代わりに許してやることにした。なんにせよ、お気に入りの店が一軒増えたことだけは間違いない。

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 木造りの椅子に根を生やしてしまいそうな尻を、気合いとともに引き剥がして店を後にした。吐く息が白い。せいぜい10分かそこらの滞在時間だったから、気温は来た時と大して変わりないのだけれど、温かいピザとコーヒーが奇妙な里心を植え付けてしまい、なかなかに去り難かった。オーナー夫婦の息子になったような気持ちで、山小屋でパンを焼いて暮らす人生を夢想していた。
 ふとした折に、田舎暮らしに憧れている自分に気付いて、恥ずかしいような、後ろめたいような気分になることがある。それが現実逃避であることは、自分が一番よく知っている。都会で生まれ育った僕には、自然の中で生活する苦労がわからない。だから余計に近くて遠い異国のことのように映るのだ。

 まだ日が高かった。回れ右して帰途につくのは物足りないので、そのまま県境を越え、吉野ヶ里経由で帰ることにした。

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 福岡側から国道263号線を佐賀方面に進み、三瀬有料道路の手前で旧三瀬峠へと逸れる。昔から難所と呼ばれていた曲がりくねった山道を抜けると、左手に今にも崩れ落ちそうな荒屋がある。ここにはかつて「寺子屋 誠典寺」というお寺があった。山奥の破れ寺だから、本業の仏事だけでは経営が成り立たなかったのか、あるいは檀家を抱えていなかったのかもしれない。縁むすびという小さなおむすびと、福岡界隈では珍しい鶏ガラで出汁をとったラーメンを販売していた。誠典寺はまた、ちょっとしたツーリングスポットとしても知られていた。僕も何度か来たことがある。オートバイ好きの住職が、ライダー限定で無料のコーヒーを振舞ったり、バイク雑誌とのタイアップでイベントを催したりしていた。
 と言っても、繁盛していた様子はない。ライダー相手の商売などそんなものだろう。数年前に休業と移転の告知をして、それっきりだ。どこかで営業を再開したような噂は聞かない。

 その誠典寺が、建物はそのままアンティークショップに挿げ替わっていた。外観は大きく変わってはいないはずなのに、店構えを見た途端に通じるものがあった。ふらふらと誘われるように入り口の戸をくぐった。

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 狭い店内には小物がひしめいていた。アンティークと言うよりはガラクタだ。とても売り物にはなりそうもない、ごみ捨て場からかき集めてきたような商品の数々に胸が高鳴った。少年時代の抑圧された生活の反動なのかもしれない、僕はこのてのジャンク品を前にすると、時が経つのも忘れて見入ってしまうことがある。何に惹かれているのか、自分でもよくわからない。骨董品が好きなのではないと思うのだけれど、素養の欠片くらいはあるのかもしれない。

 入って右手の奥、ラーメンが売り物だった頃は漫画雑誌が並んでいたあたりに、シンガーの古ぼけた足踏みミシンが据えてあった。戦前に作られたものを祖母が持っていたから、それより新しいことだけは、なんとなくわかる。調度品としては使えそうもない、機能性だけの飾りげのないデザインだ。一般家庭向けではなく、縫製工場などで使われていたのかもしれない。

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 そのミシン台の上に、黒く塗られた弁当箱のような物が置いてあった。横にツマミがあるのだけれど、一見した限りでは何をする装置なのか、どこがどう連動しているのかわからない。店の主人に尋ねてみると、「これはアレよ、ほら、ドアノブの内側」と答えが返ってきた。
 ドアノブの内側! よりによってドアノブの! 思わず小躍りしてしまいそうな衝動を、ぐっと抑えた。間違いない、この店は本物だ。

 荷物を入れるスペースがないから、何も買うまいと決めていたのに、気がつくと財布から小銭を取り出していた。七宝焼の丸い球体が2つ、振るとフヨンフヨンと不思議な音がする。表面に描かれているのは象だ。ガネーシャだろうか。ドアノブの内側を売っているような店だから、たいして意味のある品ではないに違いない。しかし、単なる飾りでもないような気がする。後で調べたところによると健康器具の一種らしい。手で握ってクルクル回すのだそうだ。ますます意味がわからない。

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 月に一度、骨董品のオークションが開催されているそうだ。寺子屋がなくなったのが寂しくはあるけれど、これからは今まで以上に足繁く通ってしまうような、なんとなく嫌な予感がする。これをきっかけにズブズブとのめり込んで散財することになりませんように。
 

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by TigerSteamer | 2014-12-14 23:58 | ツーリング

ソロツーリングに雨の日が多いわけ

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ザ・川筋ライダース オーバードライブからの続き。半年以上前のことだし、長いので読まなくてもよい)

◆前回のあらすじ
 珍しく誘われてマスツーリングに参加した。声をかけてくれたのは、福岡県下でも特に荒っぽいので有名な、筑豊地区は田川市に本拠地を置くツーリングクラブ”オーバードライブ”だ。数年前まではちょくちょく参加していたのだけれど、仕事の都合で日曜日に休めなくなってからは、スケジュールがあわなくてご無沙汰になっていた。懐かしい面々に会いたかったし、ちょうど単独行に飽いてきた頃合いで、好都合だったとも言える。しかし、その一方で参加をためらう理由もあった。ダイエット中であり、食事制限を課している真っ最中だったのだ。





 その日は朝から快晴だった。
 なぜかマスツーリング当日は晴れている印象が強く、ソロツーリングは天気が崩れている思い出が多い。そんなはずはないから、きっと気のせいには違いないのだけれど、それならばなおのこと始末に悪い。マスツーの心象風景が晴天だとするならば、僕は心の奥深くで集団行動を望んでいることになるわけだ。ソロツアラーとしてのアイデンティティーに関わる問題ともとれる。
 なんにせよ、ひさかたぶりのマスツーリングは新鮮だった。柳家小三治という単車好きの噺家が、オートバイに対する思い入れを語った随筆集『バ・イ・ク』の中で、こんな言葉を書いている。「前を走るオートバイのテールランプを追いかけてはいけない」、この日は何度も心の中で呟いた。シンプルなようでいて、反芻すればするほどに深く頷ける。含蓄のある良い言葉だと思う。

 僕は普段から自由気ままなソロを上に、集団行動の制約が多いマスを下に見て、なにかと腐すことが多い。しかし、本来はそれぞれの良さがあるものであって、優劣を語るようなものではない。気心の知れた仲間がいれば、マスツーリングもまた何ものにも代えがたい楽しさを与えてくれる。
 一行はファームロードを南下して大分と熊本の県境を越え、途中の三愛レストハウスで昼食を摂ったあと、阿蘇大観峰を目指す予定だった。阿蘇ツーリングでは定番のルートだ。楽しい休日になるはずだった。
 我ながら言い訳がましいとは思うけれど、せっかくの楽しいマスツーリングをふいにした、なんとも説明のしにくい理由を噛み砕いて説明しようと思う。

 これはオーバードライブに限ったことではないけれど、僕の知る川筋の男たちは皆、なぜか食い物に拘らない。「クソになっちまえば同じ」程度にしか思っていない節がある。長崎を地図狭しと走り回った挙句、高速道路のパーキングエリアでラーメンを啜ったり、阿蘇の美味しいところをふんだんに盛り込んだルートを走破しつつ、食事は名もない食堂の取り立てて美味いわけでもないハヤシライスだったりする。そういうことが過去に何度かあった。いや、阿蘇のハヤシライスは立派なB級グルメだし、食べ物に拘らないのなら、それはそれで潔い。走りに来ているわけだから、それ以外の要素はオマケのようなものだ。だから、ここから先は僕の個人的な事情になる。
 食事制限を課している真っ最中だったことは冒頭に書いた。この日のツーリングに参加するために、数日前から食事をセーブし、当日の朝食は摂らなかった。昼はガッツリと美味しいものを食べる予定でいたからだ。当然ながら、夜も食べないつもりでいた。なにもそこまで気負わなくても、自分のペースを守ればいいじゃないかと思われる方もいるだろう。食事を抜いたら逆効果なのは知っている。しかし、ツーリング中の食事を目の前にした時の意志薄弱ぶりときたら水で濡らしたティッシュペーパー並で、あらかじめ決めたカロリー摂取量で我慢することなど不可能なのだ。思わず食べ過ぎてリバウンドの憂き目をみることだけは避けたかった。伊達に100kgオーバーを維持しているわけではない。デブにはデブになる理由があるのだ。

 加えて、三愛レストハウスという微妙なニュアンスを含んだ食事場所にも理由があった。味は悪くない。むしろ平均値を遥かに凌ぐクオリティで、建物が古いわりに清潔感もあり、値段が高すぎるなどということもない。阿蘇を目指す、すべてのツーリングライダーが一度はここで食べたことがあるだろうというくらいの、定番中の定番だ。しかし、定番ゆえに趣が欠けていることは否めない。阿蘇に慣れたライダーなら、自ずと選択肢からは外しがちになる。加えて、その日は祝日だった。店内は立錐の余地もない混雑ぶりで、ゆっくりと食事を楽しむことができる状況ではなかった。

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 魔がさした、という言葉がピッタリ当てはまる。とりあえず、店頭で売っている名物の辛子蓮根で飢えをしのいでいた僕の耳に、悪魔が囁いた。

 本当にここでいいいのか?

 お前が食いたかった物って、ここで食えるようなもんなのか?

 行けよ、行っちまえ・・・

 構うこたねえって。だってお前、ソロツアラーなんだろ? まつろわぬ魂がどうこうって、カッコいいこと言ってたじゃねえか。

 もはや、集団行動を乱すのに躊躇いはなかった。僕は人だかりの中にリーダーの姿を探すと、ゆっくりと歩み寄った。
 マスツーリングの日が晴れている理由は、雨だと中止になるからだ。相対的にソロツーリングに雨が多いように感じるのは、雨が降ろうと槍が降ろうと我慢ができずに出発してしまうからだ。僕はそういう人間なのだ。(歓喜の歌に続く
 

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by TigerSteamer | 2014-12-04 06:54 | ツーリング

死神ライダー

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<前回 隠れ家の探索を参照のこと>

 ネタブロガーとか、もうそんなレベルで済まされる問題ではなかった。リベンジの文字が頭の中から消し飛んだ。開いた口がふさがらない。ひょっとして僕は死神なのではないだろうか。映画『エンゼルハート』のミッキー・ロークばりに、土砂降りの雨の中を駆け出したい衝動にかられた。

 呆然とすることしばし・・・ふと我に帰った。
 今日の目的は「COFFEE 薄暮」だけではないのだ。前回、隠れ家探しに協力してくれたタレ目嬢のリクエストに応えるべく、もう一軒の森の中のカフェ「ゆふそら」を偵察しなくてはならない。看板料理の蕎麦とガレットを食べてレポートを提出するのだ。

 目の前の惨劇を頭の中から追いやり、気を取り直してオートバイをスタートさせた。「ゆふそら」は目と鼻の先だ。
 そしてその5分後、僕の見たものとは・・・


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<次回 行きて帰りし物語に続く>
 
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by TigerSteamer | 2014-11-18 18:38 | ツーリング