カテゴリ:オートバイ( 74 )

夢は枯野を駆けめぐる!

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 ひさびさにオートバイを盗まれる夢を見た。仕事が忙しかったりして長いこと乗れずにいると、潜在意識なんだろうか、時々警報を鳴らしてくれる。夢診断には興味がないので、どんな意味があるのかはわからない。ストレスがたまっているのだと考えるのが一般的だろうけれど、タイガーは20年以上前に作られたオートバイだから、ひょっとすると、乗らない→エンジンの調子が悪くなる→修理代がかかる、の現実的な(何度も経験した)危機感からなのかもしれない。
 ただ、夢の中のオートバイが現実と同じものであることは稀で、その時によってまちまちであはるけれど、イタリア製の真っ赤なレーサーだったり楕円ピストンのアレだったり、冷蔵庫のような箱がゴテゴテついた巨大なクルーザーだったり、実際にはあまり関心のない(あったとしても手が届きそうにもない)高級車であることが多い。これはつまり、切迫性が値段になって表れているのか、それとも心とは裏腹に、心のどこかでは高価なオートバイに憧れているのか・・・。

 先生、オートバイに乗りたいです。タイガーを押し回す体力は最早ないし、今後回復するかどうかもわからないので、さしあたってセローの後釜に買ったきり、まともに乗ってやれてないグラストラッカーに。手に入れておいてよかった。これが思し召ってやつなのかも。
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by TigerSteamer | 2016-03-05 08:31 | オートバイ

おかえりなさい

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 ずいぶん惨たらしい事故だったと聞いていたから、また戻ってくるとは思わなかった。おかえりなさい。安全に気をつけて、これからも良い旅を。
 

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by TigerSteamer | 2015-08-02 16:18 | オートバイ

Ninja H2R 〜 カワサキの遣り口

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 2014年9月、カワサキ Ninja H2Rのニュースは世界中のオートバイファンを驚愕せしめた。スーパチャージャー搭載、鋼管トレリスフレームに抱えられた998ccの直列4気筒エンジンは、オートバイ史初の300馬力を捻り出す。

 カワサキが時として、そういうことをやりたがるメーカーであることは知っている。ただ、走り屋気取りだった若かりし頃ならいざしらず、太鼓腹を抱えた中年となった現在の僕にとって、最高出力300馬力や最高時速320kmといった要素は韓流アイドルや最新のコスメ情報と同列だ。乾いた感想しかもたらさない。視力、筋力、反射神経の衰えが著しく、さらに腰痛持ちでもあり、長時間にわたる前傾姿勢に耐えられないからだ。
 とはいえ、逆の意味で関心がないわけではない。ツッコミたくてしかたがないのは、あの人型決戦兵器を彷彿とさせる凶悪な面構えと、鬼のツノのように突き出た2枚のウイングだ。実にハッタリが効いている。オートバイにウイングをつけてダウンフォースを得ようという試みは、効果は別として昔からあった。しかし、H2Rのそれはどう見てもデザインの一部であって、まともに機能するとは思えないのだ。

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 僕がそこまで懐疑的になるのは、20年以上前に2週間だけ所有していたレーサーレプリカ、ZXR250についていたアレを否応なく思い出させるからだ。具体的な数値は提示せず、「強力なダウンフォースを生み出す」と文言だけで効果があるかのように思わせる手管もそっくりだ。
 数年前には、フラッグシップモデルであるレーサーZX-10Rとエヴァンゲリオンのコラボレーションが話題になっている。今にしてみれば、H2Rの特異な形状を違和感なく溶け込ませる為の布石と考えられなくもない。ひょっとして、オートバイ離れの進んだ若者にウケそうなデザインを、ロボットアニメ的なギミックとして盛り込んだだけなのではないか。そういえば、かつて僕のハートを鷲掴みにしたアレは、アンチカワサキ派によって名付けられた「掃除機のホース」などという蔑みの他に、ガンダムに登場する敵役のモビルスーツ、ザクの口元についているダクトに喩えられることがあった。決して皮肉ではなく、男カワサキはこういった男の子心を刺激する遣り口が得意なのだ。

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by TigerSteamer | 2015-03-29 17:46 | オートバイ

Ninja H2R 〜 ウイングの秘密

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「羽をつけたら絶対目立つと思うんすよ。先輩、どっかから社外パーツが出てないっすかね」
 そう言い出したのはT君だ。チームのマスコット的なキャラクターで、ど派手なドレスアップを施したTZR250に乗っていた。僕より2つ歳下の大学1年生、県外にある大きな寺の跡取りだった。坊主の息子はお経さえ唱えられればいいという大らかな教育方針のもと、天真爛漫に育った彼の口からは、ときどき周りが対処に困るような発言が飛び出した。
「そもそも、なんでバイクには羽が付いてないんですかね」

 なにせ20年以上昔の話だ。その時なんと返答したのか、残念ながら憶えてはいない。「空を飛ばないからだろ」とかなんとか、今の僕なら答えるだろう。
「ほら、F-1マシンには付いてるじゃないですか、ダウンフォースを稼ぐために。なんでバイクにはアレがないんですかね」
 羽というのはスポイラーのことか。ようやく合点がいった。そう言われればそうだ。待てよ、ウイング付きのオートバイってなかったっけ。あったような気がする。確実なのは仮面ライダーV3のハリケーンだけれど、あれは空想の産物だし空を飛ぶための羽だったような・・・。

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 当時の愛車、VFR400Rのアッパーカウルとサイドカウルの繋ぎ目あたりから、短いウイングが真横に突き出している姿をイメージしてみた。なんと言うか、実にかっこわるい。それにコケたら確実に折れるだろう。周りのパーツまで巻き込んで派手に逝きそうだ。考えるだけで恐ろしい。修理代が幾らかかるか知れない。

 当時の僕は大学生だった。年がら年中金がなかったのは、真面目に勉学に勤しんでいる苦学生だったからではない。昼間はオートバイ、夕方からは部活動、そして夜は麻雀に精を出す不良学生だった。仕送りとアルバイト代のほとんどは、ガソリン代と修理代、麻雀の負け分の清算に消えていった。
 同じ大学のオートバイ好きを集めて、レーシングチームを結成していた。革ツナギの上に揃いのトレーナーを着て、講義はそっちのけで峠に通い、鈴鹿の4時間耐久レースに憧れ、バリマシの俺ハで赤ゼッケンを取ることが目標で、ノリックとバリバリ伝説にかぶれていた。

「アホやな、おまえ」
 それまで黙って耳を傾けていたS君が、ほとほと度しがたいといった顔つきで言った。
「なんでバイクにはウイングがついてないか、そらつけても無駄やからや。ちょっと考えたらわかることやんけ。どこのメーカーもやってないってことは、やっても意味がないってことや」
 頷けるような頷けないような。しかし確かに道理ではある。
「直線だけやったらええけど、問題はコーナーや。バイクを寝かせているときは、イン側とアウト側では全然違う風が流れてんねんで。要するに下から上へ押し戻す力と、上から下へねじ伏せる力のバランスがとれとんねん。そんなとこにウイングなんかつけてみ、気流が乱れてコーナリングが不安定になるだけやで」
 突き放すように言い切ると、どうだ参ったかと言わんばかりに小鼻をうごめかせた。

 身振り手振りを交えながら講釈を垂れる彼は、理系の大学で流体力学を学ぶ学生などではない。僕らと同じど田舎のFランク大学生だ。誰も反論できなかったのは、もっともらしい理屈に納得したからではなく、説を覆すほどの知識を持ち合わせていないせいだ。加えて、僕らのチームでは唯一の限定解除ライダーであり、彼の駆るSRX-6が近隣の峠では最速と目されていたからでもある。既に一滑一留(いちスベいちダブ)のチーム最年長で、僕に輪をかけて金がなく、看護婦フェチのAVマニアで素人童貞で、口ばかり達者な捻くれ者だったけれど、コーナーを攻めている時のキチガイじみた速さだけは誰もが認めていた。他県ナンバーのRX-7を崖の下に追い落とした逸話が、十割増しでまことしやかに囁かれていた。外の世界ではまったく通用しないけれど、少なくとも僕らの間では、オートバイを速く走らせることができる者が一番偉かったのだ。

 その場には他にNSR250RのN君と、RGV250Γのガンちゃんもいたはずだけれど、彼らがなんと言ったかは記憶にない。その後もひとしきり議論は続いて、しりつぼみ気味に途切れた。算数が苦手という理由で私立文系を選んだバカ学生達には、どんなに頭を捻ったところで納得のいく答など見つからなかった。「どこのメーカーもやっていないということは、やっても意味がないということだ」という穿った理屈だけが、なにやら金言のごとく刷り込まれた。
 ちなみにその数日後、TZR250のシングルシートカウルには、できそこないの鳥居のような形をしたリアウイングが取り付けられていた。得意満面のT君を前に、誰もが「そっちかよ」とつっこんだ。アルミで作った羽は確かに目立ったけれど、走っている最中に根元からもげて、どこかに飛んでいったっきり2度と見つからなかった。
 

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by TigerSteamer | 2015-03-15 00:00 | オートバイ

Save the Galapagos Head Project 発動

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<前回 犬に芸を仕込む迷惑な客

 そんなわけで先日、メガネ21久留米店へ行ってきた。ちょいと間が空いてしまったのは、ここのところ満足に休めないくらい忙しかったのと、懐具合が心許なかったせいだ。
 ワン太の言うには、ぜひもう一度店に来て、僕の提案するヘルメットマウント型のメガネについて詳しく話して欲しいとのこと。こちらから申し出たことだし、本当なら勇んで向かうべきところなのだけれど、億劫に感じるところもあって、つい二の足を踏んでしまった。「作ってください」と頼んだところで、「はい、わかりました」と言うわけにはいかないことくらいわかっている。話を聞くのは建前で、既存商品のセールストークが待っているに違いない。そこでどうせなら、これを機に以前から狙っていた、Fit-Slim Z曲げというモデルを購入しようと思ったのだ。

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 Fit-Slim Z曲げは、メガネ21がフルフェイスヘルメット用メガネとして売り出す4種類のうちの1つで、ツルの形を自由に変えることができる優れものだ。ツルをまっすぐ伸ばせるので、ヘルメットを装着した状態でも帽体とこめかみの間に差し込みやすい。ただし、僕が普段使っているヘルメットは、前面を上に跳ね上げることができるシステムヘルメットと呼ばれるタイプで、頭部全体を覆うフルフェイスタイプではない。顔に当たる部分が解放されているジェットタイプとのハイブリッド的な位置付けで、フルフェイスに比べれば安全面では劣るけれど、メガネをかけたまま装着することができるという利点がある。だから厳密に言えば、差し込みやすさを主眼としたフルフェイス用のメガネは必要ないのだけれど、Z曲げだと頭の鉢の輪郭にツルを沿わせることができるので、6種類の中では一番相性が良さそうだと感じたのだ。

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 構えて行ったにも関わらず、新製品に関するセールストークはなかった。意外にも、いきなり打ち合わせから始まった。どうやら本気で、ヘルメットに取り付けるメガネを作ってくれるつもりらしい。僕は眼鏡屋という仕事をよく知らないのだけれど、普通こんなことまでしてくれるものだろうか。ひょっとするとメガネ21ならではなのかもしれない。なんだか上手くノセられているような気がする。スムーズに事が進みすぎて気色が悪い。

 久留米店の店長さんは僕のブログを読んでくれたようだけれど、おさらいのつもりで順を追って説明した。
 メガネをヘルメットに取り付けることによって、①フルフェイスヘルメット脱着時に掛け外しの手間を省くことができる。②ヒンジやツルに無理な力を加えなくて済む。これが最大のメリットだ。また、通常は耳と鼻の3点で支えるレンズを、頭部全体でキープすることにより、③走行中のズリ落ちを防止することが可能だ。顔の幅に合わせる必要がないので、④レンズの横幅を広くできる。メガネは凸レンズなので、大きなものを作ろうとすると中央の厚みが増し、その分重さが増す。ヘルメットに固定し、普段使いと共用しないことで、重量はある程度無視できるようになるわけだ。そしてレンズが大きくなれば、⑤視界全体をカバーできるようになる。オートバイの運転中は、ただでさえ左右の視界が狭まる傾向にある。つまりは視認性の向上にもつながる。

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 いいところばかりを羅列したけれど、おそらく簡単にはいかないだろう。当然ながら、ちょっと考えただけで幾つもデメリットが浮かぶし、頭の中だけで組み立てていたことなので、実際に作るとなると構造的な欠陥も出てくるに違いない。それに道路交通法も無視できない。メガネというのは頭部に装着するもので、ヘルメットに固定することが許されるかどうかについては定かでない。安全性、機能性の面では何ら問題なかったとしても、それが即ちルールをクリアしたことにはならない。こういった矛盾はずっと昔からあって、ことあるごとにライダーを悩ませてきた。ある意味、法律とはそういうものだとも言える。

 ああでもない、こうでもないと話し合いながら、気が付くと1時間以上が経過していた。とりあえず今回はここまで、日を改めフルフェイスヘルメットを持って再訪することになった。一応は前に使っていたのがあるのだけれど、長年酷使してきた物なので、ちょっとくたびれ過ぎている。後ろ髪を引かれるような気分ではあるけれど、Fit-Slim Z曲げの資金はフルフェイスの購入にあてることにした。
 最初の記事を書いたのが2年前だ。そう思うと、なにやら感慨深いものがある。今ここに、異形の頭部をもったライダーたちを救済するべく、「ガラパゴス頭を救えプロジェクト」がスタートした。鬼と出るか蛇と出るか、次回を乞うご期待だ。

関連:ヘルメット用メガネ
 

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by TigerSteamer | 2015-03-09 00:30 | オートバイ

TIGER800 〜 息子さんは反抗期

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 駐車場に仲よく並んだ新旧タイガー。年の差は20歳ほどか、兄弟というよりは親子のようだ。形も大きさも違う2台の前で、じっと耳を澄ませると・・・

「800、なんだその態度は」
「・・・・・・」
「人と話をするときは相手の目を見ろ」
「・・・・・・」
「おい、聞いてるのか」
「・・・うるせーよ、ジジイ」
「おまえ、親に向かって何て事を・・・」
「産んでくれなんて言ってねえだろ。勝手に作っといて、保護者ヅラすんじゃねえよ」

 そんな微笑ましい会話が聞こえてきそう。
 

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by TigerSteamer | 2015-02-09 23:19 | オートバイ

犬に芸をしこむ迷惑な客

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 僕にとっては小さな一歩でも、すべての眼鏡ライダーにとっては偉大なる一歩である・・・といいなあ。

関連:ヘルメット用眼鏡
 

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by TigerSteamer | 2015-01-30 13:42 | オートバイ

ガラパゴス頭の悲劇

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関連:ヘルメット用眼鏡

 半年ほど前から、検索ワードの順位に「フルフェイス 眼鏡」や「ヘルメット用メガネ」という単語が目立ち始めた。僕がこれについて書いたのは1年以上も前のことだ。当初は何の反応もなかったのに、今になってアクセスが増えるのはおかしい。訝しく感じて調べてみたところ、メガネ21からフルフェイス型ヘルメット用眼鏡が発売されたことがわかった。検討中から発売中へ、大きくジャンプアップだ。さすがはワン太、褒美にカリカリを送ってやることにしよう。

 ここ数年で、眼鏡用スリットを備えたヘルメットが増えた。こめかみの辺りに眼鏡のツルを通す溝(もしくは柔らかい部分)を設けることで掛け外しをスムーズに、また両サイドからの圧迫を緩和する仕組みだ。かなり前から一部のジェット型ヘルメットなどには採用されていたのだけれど、スポーツモデルやフルフェイス型では稀だった。
 さっそくオートバイ用品店で試着してみたのだけれど、残念ながら溜息が溢れるだけの結果に終わった。昔から何度ボヤいたことかしれない。ヘルメットは規格外の頭には対応していないのだ。僕の身長は184cmなのだけれど、実は頭部が人並みはずれて大きいだけで、平均的な頭のサイズに挿げ替えると180cm弱になる。ヘルメットはもちろん最大サイズしか入らないけれど、メーカーによっては長時間使用すると頭が痛くなるので、購入前の入念なテストが必要になる。試着のできない通販などもってのほかだ。

 このガラパゴス頭とでも呼ぶべきメガネ綱大頭目長顔科(めがねこう、おおあたまもく、ながかおか)に属する僕が眼鏡用スリットを使うと、どうしても眼鏡が上にズレる、というか目の位置が下にズレてしまう。普通の近眼や遠視なら大した問題ではないのだけれど、乱視が入っているとそうはいかない。焦点の狂ったレンズは事故の元だ。よって帽体を削ったり、チークパッドを切ったりという加工が必要になる。
 加工の手間自体は大して苦にならない。ヘルメットを新調するたびに、サンドペーパーで帽体をゴシゴシ削って自分の頭に合わせるところから始めるのが常だからだ。

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 それはさておき、眼鏡ライダー垂涎のフルフェイスヘルメット用眼鏡だ。期待に胸を膨らませて試着しに行ったのだけれど、これまた残念ながら溜息が溢れるだけの結果に終わった。
 モノ自体は素晴らしい。ツルの短い、こめかみと鼻梁でホールドする眼鏡だ。厚みを抑えた針金状のツルが頭の側面にフイットするから、掛けているときに違和感を感じたり痛みが生ずることはない。奥まで差し込む必要がないにもかかわらず、こめかみと帽体で挟み込むので、強いショックを与えてもズレる不安感はない。横長のレンズは視界良好だし、横のヒンジやツルが視界に入り込んで邪魔などということもない。ヘルメットを被っていないときは、付属のアタッチメントを装着して、通常の長さまでツルを延長することができる、なかなかの優れものだ。

 ただし、頭が人並みの大きさだったらの話だ。僕の場合、こめかみに辛うじて届くか届かないかの深さで、帽体には完全に届かない。その上、メガネ綱大頭目長頭科の中でも希少種である鼻低属脂多種(はなひくぞく、あぶらたしゅ)に属するがゆえに、レンズの重さを鼻当てで支えられないのだ。固定するものが何もないから、常に首を上に傾けていないと、ずるずる滑って落ちてしまう。とても同じ人間のために作られた道具だとは思えない。生物学的に、まったく別の進化を遂げた動物・・・人間の靴下を象に履かせようとしているかのような徒労感に襲われた。
 わかってはいた。マイノリティーはどこまでいってもマイノリティーでしかなく、最後の最後まで救われない運命なのだ。

 恨み言はいわない。ただ一つだけ、ただ一つだけでいいから、この進化の波に取り残された哀れな生き物の願いを叶えて欲しい。ヘルメットにマウントするタイプの眼鏡を作ってくれはしまいか。ヘルメットを被っていない時用の眼鏡を持ち歩かなければならない不便はあるけれど、眼鏡ライダーの永遠のテーマである、装着時の手間からは完全に解放される。顔の幅に合わせて作らなくても良いわけで、レンズを大きく、視界の端までカバーすることが可能だ。レンズというのは、大きくなればなるほど中心部分の厚みが増す。それに伴って重さも増える。これを耳と鼻で支えなくてはならない手前、従来の眼鏡として使用する場合は大きくするにも限界があるけれど、ヘルメットに装着するなら何ら問題はない。いいことずくめの、まさにコロンブスの卵的ヘルメット用眼鏡だと思うのだ。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-28 03:00 | オートバイ

ZXR250 〜 男カワサキ

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 「男カワサキ」という言葉がある。国内のオートバイメーカー4社の中でも、骨太で我が道を行くイメージが強いカワサキのキャッチフレーズだ。かつて最速を誇ったGPZ900RやZZR1100を思い浮かべる人もいるだろうし、ゼファーやZRXなどに代表される無骨なネイキッドモデル、あるいはそこから遡ってZ1やZ750RS、マッハシリーズに想いを馳せる人もいるだろう。オートバイだけに捉われず、ライフスタイル全般にイメージを重ねることもあるかもしれない。
 「男カワサキ」は好意的に用いられるとは限らない。この言葉が大嫌いだと言う人もいる。カワサキが嫌いなのではなくて、男性的な権威主義のイメージが嫌なのだそうだ。「男」に固定のイメージがあるということは、暗に背中合わせで「女とはかくあるべし」という前時代的な思想を突き付けることでもある。また、ナルシズムの臭いを嗅ぎ取って、逆に男らしくない、女々しさの象徴だと唾棄する人もいる。

 このように、「男カワサキ」から受けるイメージは人それぞれだ。僕の場合は、真っ先にZXR250を思い浮かべる。かつて2週間だけ所有していたレーサーレプリカだ。クラブマンでオートバイに乗り始め、金がなくて手放したVT250スパーダを経て、このZXRで本格的な峠デビューを飾った。僕の無謀な運転が元で、あっという間に鉄屑になったけれども。
 クロスミッションに倒立フォーク、クラス中でも抜きん出て高い回転数、ラムエアが実装されたのもこのオートバイが最初だ。盛り込まれた最新技術の中でも、一際目立ったのがK-CAS(Kawasaki Cool Air System)と呼ばれるカワサキ独自の冷却システムだった。カウル前方から走行風を取り込み、燃料タンクを貫通したダクトを経て、エンジンのシリンダーヘッドを直接冷却する。そうすることによって、エンジンの熱ダレを防いで出力を安定させる。そういう設定だった。シンプルでわかりやすい原理を誰もが信じていたし、僕も疑っていなかった。

 スズキのファンがスズ菌感染者と呼ばれるように、カワサキには信者と呼ばれる熱烈な支持者がいる。その盲信ぶりときたら、構造的欠陥すら美点として肯定してしまう程だ。そんな彼ら、オイル漏れすら入っている証拠だと言い切るカワサキ信者達にとっても、K-CASは微妙な存在であるらしい。今そのことに触れると、ある者は虚空に視線を迷わせながら、あれは思ったほどの効果はなかったらしいね・・・などと消え入りそうな声で呟いたり、またある者は堂々とふんぞりかえって、常用域では無用の長物なだけで、機能し始めるのは200キロを超えたあたりから、などと居直ったりする。まるで、効果が感じられないのはお前がヘタレだからだと言わんばかりだけれど、250ccのオートバイにそんなスピードが出せるはずもない。

 さしたる根拠もないけれど、あえてここに断言しよう。K-CASにそんな効果はない。実感できたと言い張るそれはプラシーボ効果であり、篤い信仰の賜物だ。レーサーレプリカの開発では後発組にあたるカワサキが、他社に負けないセールスポイントをと、なにか凄そうに見えるギミックを取って付けただけの代物だ。
 僕にとって「男カワサキ」の男とは、K-CASに見るハッタリと子供だましだ。ペラペラの虚栄心でもあり、勢いだけの取るに足らない矜持でもある。その先には、博徒たちが凌ぎを削る鉄火場の光景があるかもしれない。そういう意味では、非常に男らしいと言えなくはないけれど、そこに高倉健や鶴田浩二の姿はない。
 誤解して欲しくないのは、カワサキのオートバイが嫌いではないということだ。むしろ人間味があって好ましい。4大メーカーの中で最も愛すべき存在だと思う。「男カワサキ」のネガティブなイメージもすべて引っくるめて、男なんてカワイイものなのだ。

 ちなみに僕の周りでは、◯-CAS(◯には各人の頭文字が入る)と称してズボンのチャックを全開にする遊びが流行った。実に男カワサキ的な、どうでもいいエピソードだ。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-19 16:00 | オートバイ

オートバイ事故

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 記憶が曖昧な部分は、適当に補いながら書くことにする。
 もう何年も昔のことだ。古い知人に電話で呼び出されて、とあるカフェを訪れたことがあった。きっとお前なら気に入ると太鼓判を押されたにもかかわらず、普段なら絶対に足を踏み入れないタイプの店だった。調度品や建物全体の雰囲気から、何か既存の文化を模しているような気がするのだけれど、その何かが浮かんでこない。全体的に西洋風で、ごくごく近代の、ある意味クラシカルな造りだ。オシャレなカフェと言われれば、その通りと答える他にない。しかし、現代的なスマートさはなく、むしろゴチャゴチャしていて猥雑な印象を受けた。今ひとつ的を射た表現が浮かばないのは、そういった流行り廃りに、てんから興味がないせいだ。

 知人は長いこと疎遠になっていた人物で、もともとそれほど仲が良かったわけでもないから、僕の好みを知っているはずはない。その1週間ほど前に、当時通っていたスポーツジムで何年かぶりに顔をあわせて、ちょっとだけ世間話を交わしただけの殆ど他人だ。それなのに妙に自信たっぷりで、含みのある口ぶりが気になった。たしかラーメンの話をした。このあと暇かと尋ねられて、ラーメン屋に寄って帰るつもりだと答えたからだ。どこそこのが旨いけど知ってるかとか、あそこの店は味が落ちたとか、相手もそれなりに通を気取った口ぶりだった。別れ際に携帯電話の番号を聞かれて、特に抵抗も感じずに教えた。社交辞令の一種であって、実際にかかってくるとは思いもしなかった。その一連の流れから考えると、その日の呼び出しは、彼のお勧めのラーメン屋を紹介してくれる為としか思えなかった。
 駐車場にオートバイを停めて、入り口のドアをくぐった。知人はまだ来ていなかった。窓際のテーブル席に座り、メニューにざっと目を通した。食事は軽食のみで、当たり前だけれどラーメンのラの字もなかった。ひょっとしたら、ここから別の店に向かうつもりなのかもしれない。腹は減っていたけれど、それはラーメンを食べると想定してのことだ。ただ待つというのもなんなので、茶腹も一時でアイスコーヒーを注文した。

 店内を見回して、それを見つけた時、彼の自信の正体に気付いた。決して広くはないフロアの奥、トイレへ続く短い廊下の入り口に、1台の古いオートバイが置いてあった。くすんだアルミ製のタンクに、見慣れたものとは少し違うメーカーのロゴ、メリデン・トライアンフだ。インテリアとして飾っているのだろう。低い位置に取り付けられたセパレートハンドルから、カフェレーサーと呼ばれるスタイルの改造が施されているのがわかった。
 休みの日は何をしてる? と聞かれて、バイクに乗ってフラフラしていることが多いと答えたのを思い出した。
「へえ、何に乗ってるの」
「トライアンフのタイガー。マイナーだから知らないと思うよ」
「マジかよ、俺も昔はSRに乗ってたんだぜ」
 今というならまだしも、昔乗っていたからなんだと言うのか。ヤマハのSRを持ち出すあたり、トライアンフのタイガーを誤解してることは明らかだけれど、面倒なので訂正はしなかった。なるほど、それでこの店なわけだ。

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 もともと、ゆっくりと寛げる雰囲気の店内ではないところにきて、あらぬ誤解から、さらに居心地が悪くなった。店主と思しき男性は僕と同年輩に見えた。ロッカーズでもモッズでもなく(そのどちらかだったところで、オシャレに疎い僕には見分けがつかないのだけれど)ごく普通のウエイターの恰好をしていた。おそらく彼が、あの古いトライアンフの持ち主なのだろう。

 自意識過剰と言われれば弁解のしようもないけれど、ここでライダーの駆け引きが始まるのは仕方のないことだ。窓の外に視線を移せば、目と鼻の先に僕のタイガーが見える。当然ながら先方も気付いているだろう。店の前の駐車場がガラガラだったので4輪用のスペースに乗り入れたけれど、もっと端っこの目立たないところに停めるべきだった。しかし、後悔しても後の祭りだ。
 時代の隔たりこそあれ同じトライアンフ乗りなわけだから、挨拶くらいは交わしておくのが礼儀かもしれない。ここで面倒なことが一つ。仮に僕の愛車がスクランブラーやスクラクトンなどのモダンクラシック路線なら、普通に話しかけても何ら差し支えない。古き良きものを愛する方向性は同じだから、きっと話は盛り上がるだろう。もしくは僕がトライアンフではなくBMWのK100かなにかで、店に飾ってあるのが大昔のBMWだったとしても問題はない。BMWは基本的に地続きだから、若干の齟齬はあるかも知れないけれど、同じビーマーとしての連帯感を共有できるだろう。ドゥカティであれモトグッツィであれ、そこに大差はないはずだ。

 僕のタイガーは1995年製だから、決して新しくはない。日本車を基準にするなら、そろそろ旧車のカテゴリーに分類してもいい頃だ。ただし、長い歴史を持つヨーロッパのオートバイメーカーの中では、生まれて間もないヒヨッコの部類に含まれる。特にトライアンフの場合はややこしい。1980年代の半ばに一度は倒産しているからだ。現在のオーナーが商標を買い取って工場をヒンクレーに移し、新会社としてスタートして以降は別物と考える向きがある。つまりマニアの好むトライアンフは、倒産するより前、メリデンに工場があった頃のトライアンフであって、僕のタイガーは単にボロいだけのオートバイなのだ。
 どのジャンルに於いても同じだけれど、エンスーなどと呼ばれるコアなマニアの中には、排他的で偏狭な輩が少なくない。ぶっちゃけた話、相手は僕を同じトライアンフ乗りだとも思っていない可能性がある。これは無理もないことだ。僕にしたところで、タイガーを由緒正しいブリティッシュ・モーターサイクルの末裔だなどと思ったことはない。少々サビやすいこと、ゴムパーツが劣化しやすいことを除けば、品質的にも日本車とさして変わりはない。
 よって、同じトライアンフというだけで、親しげに話しかけることは憚られた。

 仮にも客なわけだから、僕の心配がピントはずれであることはわかっている。話したくなければ黙っていればいいことだし、愛想話を振るとしたら相手の方からだ。歯牙にもかけて貰えないなんてこともないだろう。しかしこの時、ただでさえ人見知りが激しい僕の精神状態は、すでに常軌を逸し始めていた。
 何度目かの逡巡の末に、清水の舞台から飛び降りる覚悟で声をかけることにした。いちど意識し始めたが最後、もうこれ以上の沈黙には耐えられそうになかった。僕のタイガーの存在は捨て置くとして、こういう時は相手の愛車を絶賛するに限る。ライダー同士のコミュニケーションは、お互いに相手のオートバイを褒め合うところから始まるものだ。
「かっこいいですね。あれはワンテンですか」
 考えに考えた末に編み出した口上だ。淀みなく言い終えることができれば、それだけで礼は尽くしたことになる。伝えたいことだけを畳み掛けるように繋げた。
「何年式ですか。あのコンディションを維持するのは大変でしょう。僕も最近のトライアンフに乗ってるんですけど、やはりメリデン時代のものは味がありますね。憧れます」
 店主とおぼしき男性は、急に声をかけられて驚いたようだった。キョトンとした顔つきで僕を見つめている。かなりの早口だったし、あまり滑舌が良い方ではないから、聞き取りにくかったかもしれない。今の問いかけを冒頭から繰り返すことを考えて、暗澹たる気分になりかけた。
 彼はやや間を空けたのちに、ようやく言葉の意味を理解したようだった。古いトライアンフをチラリと見て、視線を僕に戻し、少し遠慮がちにはにかんで、キッパリと言い切った。
「すいません、知らないんです」
 知らないんです? 思わず鸚鵡返しをしそうになって、あわてて口をつぐんだ。
 予想外の返事だった。雇われの身ということだろうか。店主、つまりオートバイの持ち主は別にいると。
「知り合いが持ってきたので飾ってるんですが、興味がないので詳しいことはわかりません。たまに聞かれるんですけど、なにも答えられなくて・・・」
 店主は申し訳なさそうな表情を浮かべつつ、逆に尋ねてきた。
「これって貴重な物なんですか」
 青信号に変わったことを確認した上で、右を見て左を見て、もういちど右を見て、さらに念のため青信号が点滅していないか確認してから横断歩道を渡ったはずなのに、なぜか猛スピードのダンプカーに跳ねられたような心境だった。これをオートバイ事故と言わずになんと呼ぼう。
 無残な礫死体となって横たわる僕を見下ろし、加害者はなおも続けた。
「正直、オートバイを室内に飾る発想がなくて・・・雨ざらしにするのも忍びないので店の中に置いてますけど、邪魔なので対処に困ってます」

 なぜこんな昔話を蒸し返すのかというと、昨年末にこれと同じようなやりとりを交わしたからだ。違うところといえば、オートバイがトライアンフではなくてハーレーだったこと、飲食店ではなくて理髪店だったことだ。あらかじめ地雷臭は嗅ぎ分けていたし、学習の成果もあって足の小指を轢かれた程度で済んだ。しかし、釈然としないのは確かだ。オートバイ用品店ならわかる。アパレル関連の店でもわかる。飲食店も、まあわかる。しかし、理髪店にオートバイを飾る意味がどこにあるだろう。これはおそらく、オートバイの持ち主にも非があるのではないだろうか。要するに彼らは、TPOをわきまえず、誰でもいいから見せびらかしたいだけなのだ。

 ちなみに、知人の要件はマルチビジネスの誘いだった。跳ねられたところを後続車のタイヤで圧し伸ばされて、道路のシミになった気分だった。肩透かしを食らった上の空きっ腹は耐えがたく、相手がトイレに立った隙を狙って、黙って店を後にした。しばらくしてアイスコーヒーの代金を払っていないことに気づいたけれど、大して気は咎めなかった。
 またもや敵を増やしてしまうのは覚悟の上で、ひとことだけ言っておきたい。僕はよく知りもしないオートバイをインテリアにする店と、見せびらかしたいだけの鼻持ちならないオーナー、それからマルチビジネスの勧誘が大嫌いだ。
 

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by TigerSteamer | 2015-01-08 22:46 | オートバイ