2014年 12月 23日
ソロツアラー 自分の説明書
先日、車の定期メンテナンスの為に、カーディーラーを訪れた時のことだ。退屈しのぎにショールームに備え付けてあるマガジンラックを漁っていたところ、こんな本を見つけた。
Jamais Jamais著『血液型別 自分の説明書』そのB型。 懐かしい、流行ったのは10年くらい前だろうか。よくある血液型占いの一種なのだけれど、読んだ者が当てはまるかどうかに一喜一憂するのではなくて、相手に読ませて自分の性格をよく知ってもらうといった趣旨の内容だった。興味がないわけではないのだけれど、皆が騒いでいた当時は見向きもしなかった。とりあえず手は出さずにポーカーフェイスを押し通し、ブームが一過したのちにコッソリ試すのが僕の性だ(憶えていればだけれど)。ひょっとしたらそれもB型の特徴なのかもしれない。
そういや、こんな本があったあった。ドキドキを押し殺し、表面上は冷静を装って、なにげなく感をアピールしながらページをめくる。誰も気にしてないのはわかっているけれど、念のためだ。血液型占いなんぞに興味がある器の小さい男だと思われるのは恥ずかしい。
しかし、徐々に目が離せなくなり、気がつくと食い入るように文字を追っていた。
◻︎ 根暗だ。
◻︎ 集団行動の中で1人だけフラフラ散歩したりする。
◻︎ 時には人生まで賭ける。
お前、ひょっとして僕の友達かなんかか・・・と疑いたくなるくらい、身につまされることが書いてあった。たしかに根暗だ。根暗じゃないとソロツアラーなんか名乗れない。フラフラ散歩することも多い。それが高じて迷子になることがある。むしろ、迷子になったふりをして単独行動をとる確信犯だ。人生まで賭けるは大袈裟だけれど、後から賭かっている物の大きさに気付くことはある・・・負けっぱなしだけれど。
◻︎ 気になると即行動。
◻︎ その時の行動力はすさまじい。
◻︎ だけど、興味ないとどーでもいい。
◻︎ 口べた。
その通り! 世渡り下手で墓穴を掘ることの多い「思い立ったが吉日男」の理解者が、こんなところにいるとは思わなかった。名前をなんと読めばいいのかわからないけど、コイツとなら旨い酒が飲めそうな気がする。
◻︎ でも1人が好き。
◻︎ でもさみしがり屋。
◻︎ 割と小心。
◻︎ 時には気分で小心をも乗り越える。
◻︎ 人に全てを明かさないことを、こっそりと楽しむ。
◻︎ 突然、何かしでかす。
◻︎ 自分論がめじろおし。
◻︎ 会話に主語がない。
◻︎ お金の使い方が、なんかどっか人と違う。
◻︎ 人の顔、名前、あんまり覚えてない。というか覚えない最初から。
◻︎ 地図なくてもおおよそ分かってれば、まぁ辿りつける。カン? 方角は「あのへん」。
◻︎ でも知らぬ土地を1人で散策してると迷子になる。「あれ? どっちから来たっけ今?」。
◻︎ だって道なんか見てないし、自分ワールド全開だから。
このへんで、ふと気がついた。B型の説明書とは書いてあるけれど、ソロツアラーの素養にも丸々当てはまるような気がする。僕がマスツーリングに馴染めなかった原因がすべて書き連ねてある。ということは、ソロ志向のツーリングライダーは全員B型なのではないだろうか。たとえば僕の憧れてやまない仙人だ。血液型を尋ねたことはないけれど、あの人なんかはまさしくB型の典型だ。間違いない。すべてのB型ツーリングライダーは、ソロツアラーになるべくしてなるのに違いない。
そう思うと、矢も楯もたまらなかった。携帯電話を取り出すと、住所録を呼び出して仙人の名前をフリックした。特に理由はないのだけれど、一刻も早く確認しなければならないと思った。
幸いにも(?)電話はすぐに繋がった。
「もしもし・・・虎くんか、なんかよう?」
「あのですね、あの、えっと」
「今忙しいんだけど」
「すぐに済みますから。血液型、何型ですか?」
「なんで?」
「いや、別になんでってこともないんですけど」
「・・・・・・」
「・・・だめ、ですか」
「ABだよ」
「やっぱり? あっ、えっ、ええええ・・・嘘でしょう?」
「ブツッ ツーッ ツーッ ツーッ」
てっきり僕の同類だと思っていたのに、なんだか信じていた人に裏切られたような気がした。僕の中の仙人に対する感情、信頼とか、尊敬とか、同情とか、憐愍とか、ありとあらゆるものが、潮が引くように薄れていくのがわかった。
ついでに、『AB型 自分の説明書』を手にとって、パラパラとめくってみた。
◻︎ つかみどころがない。つかめないよ誰にも。
◻︎ だって自分でもつかめないから。
◻︎ あえてアピールもしない。めんどーだし。
◻︎ どうせ分かってくんないモン。
そう言われれば、確かにそうかもしれない。しかし、もはやどうでもいい。しょせん彼はソロツアラーではなかったのだ。