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追記 CB750F

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 先日の記事をFacebookにシェアしたところ、友人から大変良かったとのコメントを貰った。滅多に感想など聞く機会がないから、反響があるのは嬉しい限りなのだけれど、あまり褒められたことがないからこそ、たまに評価されると心配になる。なにか勘違いさせてやしないだろうかとオロオロしてしまう。
 あらためて読み返してみたところ、少々思い出を美化し過ぎなのではないか、とは思った。嘘は書いていないのだけれど、説明しきれていないところもある。せっかく安く譲ってくれたのに、在庫整理ではバイク屋の主人に失礼だ。

 CB750Fが欲しかったわけではないと書いたけれど、これは別に欲しいオートバイがあったからで、決して嬉しくなかったわけではない。それどころか、話を聞くや否や飛びついた。当時は、今では信じられない程のオートバイブームであり、CB750Fはその立役者でもある漫画「バリバリ伝説」の主人公が乗るバイクだったからだ(正確に言うと、漫画に登場するのは後期型のFCで、僕のは初期型のFZ)。
 盲点だったのは、この喜び勇んで我が物にしたCB750Fが、ちっとも速くなかったところだ。運転技術が未熟だったということもあるだろうけれど、それまで乗っていたVFR400R(NC30)に比べると、遅いわ曲がらないわ重たいわで、まるでいいところがなかった。レーサーレプリカ全盛期で、僕も一端の走り屋気取りだったのだけれど、CBを乗り回すうちに速く走ることに対する情熱が薄れ、周りの小僧(走り屋のことをこう呼んだ)達とツルんで峠に通うことはなくなった。特注であつらえた(当時から太かったもんだから)レーシングスーツは、壁飾りのようにハンガーに掛けたまま埃をかぶっていた。
 ぽろりぽろりと歯が欠けるように、友人達がオートバイを降りていく中で、タンデムシートに荷物をくくりつけて、暇さえあれば一人で遠出していた。VFRに比べると、長時間に渡って乗り続けても、ケツが痛くならないところだけが素晴らしかった。ゆえに「孤独のバイク」だ。

 このマイナス要素だらけだったCBは、僕の中で徐々に唯一無二の存在へと変わっていった。意思の通わぬ鉄の塊を相棒と呼んだのは、こいつが初めてだった。それまで所有してきたオートバイは、あくまで乗り物(あるいは高価なオモチャ)であって、それ以上でも以下でもなかった。この特別な感慨は、Tiger900に跨った時に感じる連帯感と同じもので、たまに乗る自家用のプリウスやパッソに対する認識の差を通して、今でも実感できる。
 廃車にしてからの数年間は、他のどんなオートバイにも乗る気がしなかった。免許を取って以来、オートバイから遠ざかったのは、後にも先にもこの間だけだ。

 他人より少し長かったモラトリアムを終え、社会に出た矢先のことだった。おぼろげながら、ボロボロになったCBと共に一つの季節が終わったのだと感じていた。ひょっとすると、それが青春だったのかもしれない。結局は、自分も周りの友人達と同じように、オートバイから卒業したのだ。
 数年後、通勤用に購入したDjebel250XCによって、焼けぼっくいにガソリンを撒いたかのような勢いで第二の黄金期が再燃することは、まだその時点では知る由もなかった。
 

by tigersteamer | 2013-08-26 22:05 | オートバイ | Comments(0)